仮想通貨ビットコインの弱点を克服し、高速な取引処理や少額決済を実用化する技術として「ライトニングネットワーク(Lightning Network)」が注目を集めています。この技術の登場でビットコインの利便性が飛躍的に高まることが期待されており、すでにスマホ用ウォレットなどのアプリも登場しています。そこで今回は、ライトニングネットワークについて解説します。

ライトニングネットワークでブロックチェーンの取引履歴を簡略化

ライトニングネットワークとは、ブロックチェーンの外側に設けたネットワークシステムの中で取引履歴をまとめて効率化・簡略化した上で、その簡略化された情報だけをブロックチェーン上に送って記録させることで、インスタントペイメント(instant payment=即時決済)やマイクロペイメント(micropayment=少額決済)を可能にする技術です。

たとえば、AがBに、BがCに、CがDに、それぞれ1BTCを送金する取引があったとしましょう。この場合、今まではブロックチェーンには「A→B」「B→C」「C→D」の三つの取引がすべて記録され、計3回の取引承認が行われていました。

しかし、ライトニングネットワークを使えば、ブロックチェーン上には「A→D」の取引として記録されることになり、取引承認も1回で済みます。

こうした簡略化処理を、分散化技術を使って第三者を介さず高速で多数回行うことにより、ビットコインの取引承認が瞬時にできるようになります。また、ブロックチェーンへの記録が簡略化されるので、取引手数料も安く抑えられます。

従来、ビットコインの取引承認には10分間もかかっていました。しかも、ここ数年での値上がりや取引の混雑状況に応じて取引手数料も上昇しています。このため、既存の金融機関を使った送金サービスに比べてまだ使い勝手が悪く、国際決済を除けばビットコインを決済に使うメリットはほとんど感じられませんでした。そのことがビットコインの普及を遅らせる原因にもなっていました。

ライトニングネットワークは、こうしたビットコインの欠点を克服するために生まれた技術です。さらにモナコインやライトコインなど他の仮想通貨への応用も期待されています。

Segwit搭載でライトニングネットワークが実現可能に

ビットコインには当初、こうしたライトニングネットワークを実現するための基本的な機能が搭載されていませんでした。転機となったのは、2017年8月にビットコインに実装された「Segwit」という技術です。

ビットコインにはもともと、第三者や悪意ある受取人に取引データを改ざんされ、「二重取引」を起こされる恐れのある「マリアビリティー問題」と呼ばれる脆弱性と、取引データを格納できるブロックが1MBしかないため、利用者が増加していけば取引データが格納できなくなってしまう「スケーラビリティー問題」という、二つの課題がありました。

Segwitは、この取引データの改ざんへの対策と、1ブロックに格納できるデータ量の増加を、同時に実現する技術です。Segwitの導入によって、ライトニングネットワークを使ってビットコインで高速取引を実現することも可能となったのです。

ライトニングネットワークを使ったモバイルウォレットも登場

こうしたライトニングネットワークを使ったアプリなども登場し始めています。

2018年4月にはスマートフォン用モバイルウォレットアプリ「エクレアウォレット(Eclair Wallet)」がACINQ社から公開されました。通常のビットコインウォレットとして使える上、ライトニングネットワーク経由で瞬時に格安手数料で決済することもできます。アンドロイドOS用がGoogle Playからダウンロードできます。

iOS用としては、まだテスト段階のベータ版ですが「コインクリップ(CoinClip) 」がApp storeで公開されています。

このほか、Vaultoro Limited 社はライトニングネットワークを使って金とビットコインの取引ができるサービスを始めています。今後は動画コンテンツ視聴料といった少額決済の分野を中心に利用が広がりそうです。

マイニングのインセンティブ低下をどう解決するか

ビットコインの弱点を克服できる技術として期待されているライトニングネットワークですが、課題もあります。

まず、ライトニングネットワークを使うとブロックチェーンに記録される取引承認の数が減るため、取引手数料もその分だけ減ってしまうこと。これはもちろんユーザー側にとっては良いことですが、取引手数料はマイニングの成功報酬としてマイナーに支払われるもので、ブロックチェーンのシステムを維持するための重要なインセンティブとなっています。ライトニングネットワークの実現によってマイナーの利益が減少すれば、今後ビットコインの根幹が揺らぐことにもなりかねません。

また、ライトニングネットワークではブロックチェーンの外で瞬時に多数の取引処理を行うため、常にネットに接続されている必要があります。このためハッキングの被害を受ける危険性もそれだけ高くなり、セキュリティー対策も課題となりそうです。

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