ブロックチェーンの弱点を克服し、スマートコントラクトの実用性を高めるという触れ込みの新技術「エキデン(Ekiden)」が2018年7月に発表され、注目を集めています。開発の中心となったのは、コンピューターサイエンスの天才と呼ばれる米国の女性科学者。2019年に始動予定の「エキデン」について解説します。

「エキデン(Ekiden)」がスマートコントラクトの実用性を高める

「エキデン(Ekiden)」は、ブロックチェーンをTEE(Trusted Execution Environments)と呼ばれるアプリケーションの安全な実行環境を実現する技術と組み合わせることによって、秘密保持性に優れ、信頼性が高く、効率的なスマートコントラクトを実行できるプラットフォームとされています。2019年に公開される予定です。

開発の中心となったのは天才科学者ドーン・ソン教授

「エキデン」を開発したのは、カリフォルニア大学バークレー校電気工学・コンピューター科学部のドーン・ソン教授ら。ソン教授は、コンピューターをハッキングから防御する技術の開発者として、マッカーサー・フェローシップやグッゲンハイム・フェローシップなど数多くの奨学金や賞を授与された女性科学者です。中でもマッカーサー・フェローは、分野を問わず「人並み外れた独創性、創造性探求への献身、顕著な自己実現能力」を発揮する米国民または米国居住者に授与される奨学金で、「天才賞」とも呼ばれています。

プロジェクトのためにオアシス研究所(Oasis Labs)創業

ソン教授らはこの「エキデン」プロジェクトを立ち上げるため、「オアシス研究所(Oasis Labs)」を創業しました。オアシス研究所は2018年7月、著名な仮想通貨投資家やシリコンバレーのベンチャーキャピタルを対象としたトークンのプライベート・プレセールで、4500万ドルの事業資金を調達したと発表しています。

「エキデン」プロジェクトはこのほか、米カリフォルニア州のベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツ社の新たな仮想通貨専門ファンドから3億ドルの出資を受けることになっています。

「エキデン(Ekiden)」の仕組み

7月6日に公表されたソン教授らのホワイトペーパーによると、「エキデン」は、ブロックチェーンをTEE技術と組み合わせることで、その致命的な欠陥を克服するものだということです。TEEとは、ソフトウエアだけでなくハードウエアも使ってアプリケーションの安全な実行環境を実現するための技術仕様のことです。

従来のスマートコントラクトの欠点

ソン教授らは、イーサリアムなどのブロックチェーン上で実行されるスマートコントラクトは、ブロックチェーンの持つ有用性や安全性だけでなく、その秘密保持性の欠如と貧弱な性能といった欠点も受け継いでおり、そのせいで実用性に欠けていたと指摘しています。

ソン教授らの指摘するイーサリアムなどのスマートコントラクトの問題点は以下の2点です。

 

◎スマートコントラクトの問題点(1)

ネットワークの規則上、通常はノード(ブロックチェーンの参加者)全員にすべてのスマートコントラクトの実行が要求されており、この方法でネットワークでの合意が形成されるため、ノードが10万人いても1人の時と処理能力は変わらず、ネットワークのパフォーマンスは著しい制約を受けてしまう。

 

◎スマートコントラクトの問題点(2)

ブロックチェーンが透明性を保つように設計されているため、秘密性の高いデータの保護が保証されていない。そのため、たとえば、医療機関がブロックチェーンを使って患者の医療情報をもっと簡単に共有し、解析できるシステムを作りたいと思ったとしても、プライバシー漏えいの懸念からなかなか踏み切れないなど、スマートコントラクトを応用したアプリケーションがなかなか実用化されない。

 

「エキデン」はスマートコントラクト実行と合意形成を分離

これらの課題を解決するため、「エキデン(Ekiden)」ではブロックチェーンとTEEの技術を組み合わせることによって、パフォーマンスの向上を図っています。また、スマートコントラクトの実行をブロックチェーンの合意形成システムと分離することで、秘密保持性も実現しています。

「エキデン」では、スマートコントラクトは「安全な飛び地(secure enclave)」と呼ばれるハードウエアの隔離された区画で実行されます。「飛び地」はブラックボックスのように機能し、コンピューターの他のアプリケーションや基本ソフト(OS)、コンピューターの所有者などにスマートコントラクトの内容がもれないように保護します。「飛び地」はプログラムが正しく実行されたという証明も生成し、その証明はブロックチェーン上に提示されます。

このように、スマートコントラクトの実行を合意形成システムから分離することによって、たとえばプライバシー情報である個人の健康データの秘密保持を確保しつつ、そのデータを機械学習(人間が行っている学習と同じ機能をコンピューターで実現する技術)に取り入れるなどして活用することも可能となります。

まとめ

このように、「エキデン」はスマートコントラクトの実用性や秘密保持性を高める新技術です。2019年に公開されれば、ビッグデータの活用などの用途に適したプラットフォームとして、利用が広がる可能性があります。

それにしても、なぜ「エキデン」なのか、命名の由来はホワイトペーパーには触れられていませんが、日本人としては気になるところです。

あわせて読みたい

スマートコントラクトとは? 事例でその仕組みがわかる!
ビットコインの弱点を克服「ライトニングネットワーク」とは?

友だち追加