仮想通貨証拠金取引のリスクを抑えるため、証拠金倍率を4倍以内に制限する自主ルールを、業界団体の日本仮想通貨交換業協会が検討しているもようです。2018年7月中にも正式決定する見通しで、こうしたルール策定は同協会が自主規制団体として認定を受けるための第一歩となります。

2018年7月中にも「証拠金の4倍以内」自主ルール決定か

日本経済新聞や時事通信などの報道によると、仮想通貨交換業者16社で構成する日本仮想通貨交換業協会は2018年7月24日、投資家が担保として業者に預けた証拠金の数倍から数十倍の金額で取引ができる「証拠金取引(レバレッジ取引)」について、取引可能な金額を証拠金の4倍以内とする自主ルールを定める方向で調整に入りました。加盟各社の同意を得た上で、7月中にも正式決定する方針です。

仮想通貨価格の激しい値動きで投資家が多額の損失を被るのを防ぐのが目的です。

ただ、証拠金倍率をすぐに4倍以内に制限してしまうと顧客離れも懸念されるため、それぞれの仮想通貨交換業者が倍率を独自に設定できる経過措置も講じる予定です。証拠金倍率を独自に設定した交換業者は、顧客が担保として預けた証拠金の金額を上回る損失が生じた場合、協会に報告することも義務付けられる見通しです。

経過措置の期限は自主ルール策定の1年後までとし、以後は上限4倍に一本化する方向で検討しています。

同協会の自主ルールではこのほか、システムの安全対策や広告、インサイダー取引などに関するルールも策定される予定です

証拠金取引(レバレッジ取引)とは

証拠金取引とは、業者に預け入れた証拠金の数倍〜数十倍の金額まで注文できる仕組みのことです。

仮想通貨ビットコインの証拠金取引であれば、上限が10倍だったとすると、業者に預けている証拠金の残高が10万円だった場合、100万円相当までのビットコインを注文できることになります。

証拠金取引では、まだ決済されずに保有している契約のことを「建玉(たてぎょく)」または「ポジション」と呼びます。仮想通貨証拠金取引で新規注文が約定することを、「建玉(ポジション)を持つ」と言います。買い注文が約定した場合を「買い建玉」または「ロングポジション」、売り注文が約定した場合を「売り建玉」または「ショートポジション」と呼びます。

証拠金取引では、仮想通貨を持っていなくても、その仮想通貨の売り注文を出すことができます。このため、ビットコインが今後値下がりするのを見込んで、あらかじめ高いレートでショートポジションを建てて、相場が下がった際に安いレートで買い戻して利益を得る「空売りの買い戻し」という手法も使えます。

各業者ごとに5倍、10倍など上限にばらつき

証拠品取引といえば、ドルやユーロなどの外国通貨を売買するFX取引(外国為替証拠金取引)が、ハイリスク・ハイリターンの金融商品としてよく知られています。

FX取引の場合は、証拠金倍率の上限は25倍と定められています。つまり、預けた証拠金の25倍の金額まで取引ができるということです。ちなみに、「FX」とは外国為替(Foreign Exchange)の略語なので、仮想通貨証拠金取引のことを「仮想通貨FX」と呼ぶのは間違いです。

金融庁はFX取引については証拠金倍率の上限を10倍に変更する規制強化を検討していましたが、業界の強い反対に遭って2018年6月に断念した経緯があります。

FXの場合と違って、仮想通貨証拠金取引の証拠金倍率の上限については、これまで規制がありませんでした。このため、上限は各仮想通貨交換業者によってばらばらで、現在はビットフライヤーで15倍、GMOコインではビットコインが10倍、他の仮想通貨が5倍、DMM Bitcoinでは5倍などとなっています。

しかし、値動きの激しい仮想通貨の証拠金取引は、FX取引よりもさらにリスクが高いものとなっています。このため、業界の自主規制団体を目指す日本仮想通貨交換業協会が、自主規制ルールの策定に乗り出したわけです。

日本仮想通貨交換業協会、自主規制団体認定への布石に

日本仮想通貨交換業協会は、金融庁の登録業者である仮想通貨交換業者16社により2018年4月に設立され、改正資金決済法に基づき認定される自主規制団体を目指し、業界の自主ルール策定に向けて作業を進めていました。

しかし、発足から間もない同年6月に、加盟業者であるビットフライヤー、QUOINE、ビットバンク、BTCボックス、ビットポイントジャパン、テックビューロの6社が、金融庁から業務改善命令を受けました。

中でも自主ルール策定の旗振り役だった最大手業者のビットフライヤーは、
(1)取引量拡大に伴う人員やシステムの増強が不十分
(2)取締役会が創業者である加納裕三社長の知人らで占められ、社長へのけん制機能を果たしていない(3)口座開設時の本人確認で、一部ユーザーの住所が郵便局の私書箱になっており、マネーロンダリング対策が不十分
(4)登録審査時に、利用者が反社会勢力と関わりがないかをチェックする体制につき事実と異なる説明を行った
などと散々な言われようでした。

この結果、ビットフライヤー社長の加納氏が、ビットバンク社長の廣末紀之氏とともに協会の副会長を辞任する事態に。業界の自主規制を目指す同協会は出直しを迫られることとなりました。

こうした状況下での自主ルール策定は、協会が信頼を取り戻し、改めて自主規制団体の認定を目指すための重要な一歩と言えます。

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