スタートアップ企業やプロジェクトの事業資金調達に仮想通貨を使う「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」は、ここ数年急速に広まってきましたが、ICOの質にばらつきがあり、各国で規制の動きも強まっています。そんな中、仮想通貨取引所が事業者と投資家の間に入ってICOを取り仕切る「IEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)」が注目を集めています。

仮想通貨取引所が資金調達を仲介するIEO

IEOとは、スタートアップ企業やプロジェクトが新たに発行する仮想通貨やトークンの販売を仮想通貨取引所に委託して行う資金調達方法のことで、ICOの一種の発展系と言えます。取引の健全性や安全性を確保するために仮想通貨取引所が大きな役割を果たすのが特徴です。

仮想通貨取引所は事業者のプロジェクト内容を事前に審査した上、合格した案件についてのみ、事業者の発行する仮想通貨を預かり、販売リストに掲載します。

投資家は取引所を通じてそれらの仮想通貨を購入します。このため、投資家がIEOに参加するには取引所に登録する必要があります。

Cosplay TokenはIEOで資金調達

一例を挙げると、日本の仮想通貨交換業者QUOINEの子会社が海外で運営する仮想通貨取引所「QRYPTOS」で、仮想通貨によるコスプレ経済圏の構築を目指す「Cosplay Token」プロジェクトのクラウドセールが、2018年7月29日から海外居住者向けに実施スタートしました。

このIEOに際し、「Cosplay Token」プロジェクトはQRYPTOSの事前審査を受け、これに合格しています。一方、参加できる投資家はQRYPTOSの登録ユーザーに限られており、ユーザー登録にはKYC(身元確認)およびAML(マネーロンダリング対策)のチェックが必要とされています。

つまり、QRYPTOSで行われるIEOでは、事業者側も投資家側も、ともに取引所の審査をパスする必要があるのです。

IEOが生まれた背景

これまでのICOは、事業者が個人の投資家と直接やりとりする形が主流でした。このため、証券取引所を通じた新規株式公開(IPO)やベンチャーキャピタルを介した資金調達などと違って事前審査や仲介手数料もなく、ネットを使って世界中から簡単かつ迅速に投資を集められる事業資金調達方法として、ここ数年で急速に広まってきました。

しかし、ICOが活発になるにつれ、2つの大きな問題点が浮かび上がってきました。

ICOの問題点:プロジェクト失敗や詐欺事件の多発

ICOの問題としてまず第一に挙げられるのが、投資家にとってのリスクの高さです。

従来の株式投資やベンチャーキャピタルを通じた事業資金調達の場合には、仲介会社が投資先について調査し、一定のリスク選別をした上で投資家に投資商品を紹介していました。

これに対し、ICOではこうしたチェックが働かないため、投資家自らが投資先の情報収集を行いプロジェクトの実現性を見極める必要があります。

きちんとしたICOがある反面、簡単に資金調達できることから、プロジェクトの実現性が低いICOも多く乱立し、失敗例や詐欺事例が多発しているのです。

仮想通貨情報サイトTokenDataの情報を元に作成されたリポートでは、2017年に実施された902件のICOのうち、資金調達自体に失敗したものが142件、詐欺と判明したり事業者が消息を絶ったりしたものが276件に上るなど、全体の6割近い531件が失敗だったとされています。

トラブルが多発していることから、中国や韓国ではICOによる資金調達を全面禁止。米国では証券取引委員会(SEC)がICOで発行された仮想通貨を有価証券と見なして規制する方針を示すなど、各国で規制の動きが強まっています。

ICOの問題点:投資機会の不平等性

第二の問題点は、ICOがごく一部の富裕層の投資家を一般投資家より優遇する不平等な仕組みとなりつつある点です。

ICOでは事業者が投資家と直接やりとりできるため、最近では事業者側が投資家を選別する傾向が強まっており、一般投資家向けのクラウドセールを行う前に、プライベートセールを行う例が増えています。

プライベートセールとは一部の投資家のみを対象にしたもので、「クジラ」と呼ばれる豊富な資金を持った投資家が招待されることが多く、仮想通貨やトークンの発行価格も一般向けのクラウドセールより安くなっています。デパートがバーゲンを行う前に、お得意様限定招待の特別セールを行うようなものです。

2018年に入ってこうした傾向はさらに強まっており、ICOによる仮想通貨発行額の8割以上はプライベートセールで発行されているとのデータもあります。一般投資家が参加できるクラウドセールの段階では、もうクジラが食い荒らした後のわずかなコインしか残っておらず、しかもそれを高値でつかまされるというわけです。

IEOは解決策となるか

仮想通貨取引所が取り仕切るIEOでは、実施前にプロジェクトの事前審査が行われるのでリスクの心配は減りますし、投資家は取引所に口座を持っていれば誰でも参加できます。こうした点で、IEOは従来のICOの問題点を克服する新たな仕組みとなっています。

ただ、事業者側にとっては、取引所に支払う仲介手数料などのコストが発生しますし、事前審査の手続きがあるため、今までのICOより資金調達に時間もかかるようになるでしょう。投資家にとっても、自分が参加したいIEOが実施される取引所にユーザー登録しておく必要があり、その分の手間はかかります

それでも、ICOをめぐるトラブルが多発している中、投資家保護と取引健全化に力点を置いたIEOは、今後の仮想通貨による資金調達方法の主流となる可能性もあります。

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