米証券取引委員会(SEC)は2018年8月22日(日本時間23日)、3社から出されていた9件のビットコインETF(上場投資信託)の上場申請について、すべて非承認と決定し、各社に通知しました。しかし翌23日になって、SECはこれらの申請について再審査すると発表、最終判断は先送りされた形となりました。

詐欺や市場操作への対策不備を理由に非承認

SECが8月22日(日本時間23日)に出した非承認決定は、プロシェアズ(Proshares)、ディレクシオン(Direxion)、グラナイトシェアズ(GraniteShares)の3社から出されていたビットコインETFの上場申請に対するものです。プロシェアズは2件、ディレクシオンは5件、グラナイトシェアズは2件の申請を行っていました。

いずれの決定通知でも、非承認の理由については同じ文言で、「連邦取引所法で要求されている、詐欺行為や市場操作行為を阻止するための対策が示されていないため」とされています。

仮想通貨自体の否定でない点を強調

ただし、SECは3社に対する決定通知の中で、「この非承認は、ビットコインやブロックチェーン技術がイノベーションまたは投資としての有用性または価値を持っているかどうかについての評価に基づくものではない」と述べており、仮想通貨やブロックチェーン自体を否定するものではない点を強調しています。

今回の非承認決定には、SECがウィンクルボス兄弟からのビットコインETFの上場申請に対して7月26日に出した非承認決定とほぼ同じ理由が記載されています。ただ、8月22日にSECに拒否された3社の上場申請は、それらがビットコイン先物を使った金融商品であるという点で、ウィンクルボス兄弟の申請したETFとは別種のものでした。

取引所が投資家保護に役立つ可能性は認める

他方で注目されるのは、SECが今回の非承認決定通知の中で、取引所を通じてビットコイン金融商品の取引が行われることは、投資家にとって有益となる可能性があると認めたことです。SECはプロシェアズ社に対する決定通知書の中で、「規制のないビットコインのスポット市場での取引に比べて、連邦証券取引法に基づいて行われるビットコインによるETP(上場取引型金融商品)の取引であれば、投資家に対する一層の保護をもたらす可能性がある」としています。

翌日に再審査を決定

ところが、この非承認決定の翌日の8月23日になって、SECは9件の上場申請のいずれについても再審査を行うと決定し、申請していた各社に通知しました。これにより、9件の申請に対する最終判断は先送りされることとなりました。

SECは通知書で、「(日本時間)8月22日の(非承認の)決定は、証券取引委員会がそれと異なった決定を出すまでは維持される」としています。このため非承認決定自体は暫定的に有効ということになります。SECは再審査の期限については明らかにしていません。

「仮想通貨の母」ヘスター・ピアース氏が主導か

この再審査決定をいち早く伝えたのは、SEC委員の一人であるヘスター・ピアース(Hester Peirce)氏でした。

ピアース委員はツイッターで、「証券取引委員会(委員長および委員)は、そのスタッフにいくつかの職務を委任している。こうした場合において、スタッフは委員会の代理として行動する。その場合のスタッフの行動について委員会は再検討することがあり、今ここで起ころうとしているのも、そうしたことだ」と解説しています。

ピアース氏はトランプ大統領に任命されて2018年1月に就任したSECの女性委員で、7月26日(日本時間27日)にSECがウィンクルボス兄弟のビットコインETF上場申請に対して非承認決定を出した際には、委員の一人としてこれに反対を表明しています。

その中でピアース委員は「今回のSECのアプローチが、ビットコイン市場のより大きな制度化を妨げることになり、それが投資家保護の面で害をなすことを懸念している」とした上、「非承認決定の背後にある証券取引委員会のビットコイン市場への懸念の多くは(ビットコイン金融商品を)制度の中に参加させていくことで、和らぐだろう」とする一方、「法令の基準についての今回の証券取引委員会の解釈と適用は、市場に対して、イノベーションは歓迎されないという強いシグナルを送ることになる。このシグナルは、ビットコインETPの運命をはるかに超えた影響を及ぼしかねない」と憂慮を示していました。

ピアース委員はこのような発言から、仮想通貨コミュニティーの一部では「仮想通貨の母(Crypto Mom)」と呼ばれています。今回、SECが9件のビットコインETF上場申請を非承認とした翌日に、一転して再審査を表明したことについても、ピアース委員の主導によるものではないかとの観測が出ています。

あわせて読みたい

ビットコイン、6500ドルに回復、他の仮想通貨も軒並み反発
米BitPay社幹部「ビットコインは数年中に代表的な決済手段に」
あのウィンクルボス兄弟が経営! 仮想通貨取引所Gemini(ジェミニ)とは?

友だち追加