電通国際情報サービスのオープンイノベーションラボが、有機農産物の生産から最終消費までの過程をブロックチェーンを使って保証する実証実験をスタートさせました。これにより「エシカル消費」の真正性が保証、可視化されるようになります。

ブロックチェーン技術で食の情報を開示

野菜や果物は、生産者から直接食卓へ提供されるわけではありません。様々な業者を間に介し、市場を流通し、販売され、初めて食卓へ届けられます。もしもこの流通のプロセスのどこかに瑕疵があると、食品の質が損なわれる危険があります。

食品偽装が社会問題化している昨今、いくら企業が、この食品は安全だと宣言したからといって、その言葉を丸まる信じることができないというのが、消費者の本音でしょう。なにしろ企業が嘘をついてしまえば、白でも黒になってしまうからです。

そこで、「この食品は一体どこで生産され、どのようなプロセスを経てここに至ったのか」、消費者ならば誰でも気になる品質と安全性を、第三者には改竄が不可能なブロックチェーンの技術で保証し、消費者に食に関する正しい情報を届けようというわけです。

流通するすべての野菜の工程を人力で追うことはできなくても、ブロックチェーンの技術がそれを可能にし、食の安全を確保することができるのです。

不正が介入される余地のないブロックチェーン技術を導入することで、産地偽装問題などを未然に防ぎつつ、常に安全な食を消費者へ提供できるようになるでしょう。

実験の背景と今回狙う3つの検証

電通国際サービスのオープンイノベーションラボ(イノラボ)は、研究プロジェクト「IoVB(Internet of Value by Blockchain)」の一環として、5月19日から有機農産物の生産から最終消費までの過程をブロックチェーン技術を使って保証する実証実験をスタートさせました。IoVBでは、これまでも有機農業発祥の町として知られる宮崎県綾町と連携し、安全性や品質の高さをブロックチェーンで保証することで、消費者にアピールする仕組みの構築に取り組んできました。

ブロックチェーンによる品質と安全性の保証により、「エシカル消費」の喚起・促進につながるのではないかという仮説のもと、今回の実験が目指す検証は次の3つ。

  1. すでに実証済みの生産過程だけでなく、流通や最終消費までを含めた農産物のサプライチェーン全体にわたるトレーサビリティを、ブロックチェーンで保証する仕組みを構築できるのか?
  2. 消費者の注文行動に影響を及ぼすのは、ブロックチェーンに記録された情報を、どのようなUX(ユーザー体験)を通して消費者に届けたときなのか?
  3. 農産物のトレーサビリティが、前述2点の実証により担保・可視化されることで、当該サプライチェーンに関わる個々人や、その周囲(SNSでのつながりを含む)の人々のエシカルな行動が喚起・促進されるか?

実験は、宮崎県綾町のほか、シビラ株式会社およびパナソニック株式会社が参画するほか、東京・神保町のイタリアンレストラン「レアルタ」が実験用エシカルメニューの提供、UPR株式会社が輸送用IoTセンサーの提供で協力して行われます。

品質や安全性の保証、どのように実験?

では、具体的にどのように実験が行われるのでしょうか?

実施概要
期間:2018年5月19日(土)~5月末(予定)
場所:
生産地/宮崎県綾町の協力農家
最終消費地/レストラン「REALTA(レアルタ)」(東京都千代田区)
*流通経路は一般の宅配サービス(複数)を利用

実験の流れ

1. 綾町では、生産者および管理者(役場の検査官)が、町独自で定める自然生態系の保護評価指標に基づいて、生産履歴や土壌品質検査の結果をブロックチェーンに記録します。

2. 出荷用ダンボール一つ一つに、照度、加速度、温度を検知できるIoTセンサーを同梱して出荷。これにより、輸送中に箱が開閉されていないか、適切な温度・場所で保管されていたか、過度な衝撃が加わっていないかなどがモニタリングでき、逐次ブロックチェーンに自動記録されます。

3. レストランでは、綾町野菜を用いた実験用エシカルメニューを提供。来店客が店内でストレスなくエシカルメニューを認知・選択できるよう、専用UXデザインによるメニューを用意するほか、スマートフォンに差し込むだけで綾町野菜の動画を閲覧できる機器(バッテリーレス型イヤホンジャックドングル)を提供します。

4. エシカルメニューの注文客だけに別途渡されるドングルをスマートフォンに差し込むと、消費履歴がブロックチェーンに記録されます。この記録はSNSアカウントと連携可能なため、注文客をインフルエンサーとする能動的な情報拡散が行われたか、そこにどのような共感や評価が集まり、フォロワーの行動が誘発されたかという履歴がブロックチェーン上に蓄積され、生産者やレストランへのフィードバックとなるという仕組みです。

まとめ

目の前にある食品は、果たして本当に良い食品なのか、それを素人目で判断することはできません。もしも企業が虚偽の情報で食品を販売したら、消費者はそれを見抜くことができないでしょう。

しかし、ブロックチェーン技術を用いることで、食品の生産から加工、流通、そして販売に至るまでのすべてを完璧に管理し、掌握できるようになると、不正が入り込む余地を完璧になくすことができます。

実証実験が成功すれば、今後はより安全な食品を、正しい情報を基に食すことができるでしょう。ブロックチェーンは仮想通貨のみならず、人体や環境にも配慮したエシカル消費にも貢献する技術なのです。

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