米国では仮想通貨関連の創業ブームに伴ってブロックチェーン技術者の需要が急激に高まり、高額の報酬による引き抜き合戦が過熱しています。人材難に伴うプロジェクトの遅れなどの影響も出ており、技術者探しは米国外にまで及びつつあります。こうした技術者不足の問題はすでに日本にも及んできています。

ブロックチェーン技術者に100万ドルでの引き抜きオファーも

米国で、仮想通貨関連の企業創業のブームが過熱し、プロジェクト開始に伴う費用も高騰しています。これらの企業の多くは、新たなソフトウエアの開発と同時に技術者チームの構築も進めようとしていますが、必要なブロックチェーンの技術者がなかなか集まらない状況です。

米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版によると、仮想通貨発行・運営会社リップル社の暗号技術主任デービッド・シュワルツ氏は、自分の仮想通貨開発チームの技術者に対し、別の企業から100万ドルの契約時ボーナスを提示する引き抜きの話が2件あったと話したとのこと。

うち1件のオファーは創業する仮想通貨会社から、もう1件はブロックチェーン技術の大手企業からだったようです。シュワルツ氏は、こうした仮想通貨関連技術者への莫大な報酬による引き抜き合戦について「正気の沙汰ではない」と話しています。

ブロックチェーン技術を使った事業にアマゾンやフェイスブックも参入

米国ではこれまで、こうした仮想通貨関連の分野に、ICOやベンチャーキャピタルを通じて何十億ドルもの資金が注ぎ込まれてきました。

Amazon.comやFacebook、IBMといった巨大IT企業も、ブロックチェーン技術を使った事業に力を入れ始めており、ブロックチェーン技術者の争奪戦を過熱させる結果となっています。

求人会社リンクドイン社に登録された求人では、2018年の年初から5月中旬までに、「ブロックチェーン」「ビットコイン」「仮想通貨」のいずれかの単語を含む求人は約4500件に上りました。これは2017年通年の件数から151%増となっています。2016年には同じ条件の求人は645件にとどまっていました。こうした求人件数の急増は、仮想通貨やブロックチェーン関連の技術者がいかに不足しているかを如実に示しています。

デジタルマーケティング関連企業に務めるある技術者は、リンクドイン社に登録している自分の職務経歴書に「ブロックチェーン」の語を加えた途端、求人の告知が殺到し始めたといいます。

ブロックチェーン技術者の採用難でアプリ開発停滞も

米国での仮想通貨企業創業のブームは、ブロックチェーン技術者を雇用する費用の高騰につながっており、技術者の雇用は極めて困難になっています。こうした事態は、ブロックチェーン技術を使ったアプリケーションの新規開発を妨げる結果ともなっています。

ブロックチェーン技術者を集めるために、各企業は高額な報酬だけでなく、在宅作業ができる環境なども用意するなど、さまざまな方法を駆使しています。このため、ブロックチェーン技術者の求人は米国内にとどまらず、世界的規模に広がりつつあります。

ある求人会社によると、ブロックチェーン技術者の報酬の相場は、経験年数3〜5年の人で50万ドル、経験のほとんどない技術者でも12万ドルを超すといいます。

新たに創業する仮想通貨関連企業の中には、技術者の雇用にこだわるのではなく、オープンソース型でソフトウエアを開発し、これに貢献してくれるフリーのブロックチェーン技術者に報酬を支払おうとする試みも出ています。こうした中には、ソフトウエア開発に貢献してくれた技術者に10万ドルの報奨金を設けている企業もあります。

高額報酬だけでは優秀者ブロックチェーン技術者は雇えない

もっとも、米国の仮想通貨業界では、高額な報酬を提示したからといって、技術者の求人に大きな効果が期待できるわけではありません。「経験の長いブロックチェーン技術者の多くは、既にビットコインやイーサリウムの取引で莫大な資産を得ている。そのため、彼らをお金にはあまり関心を持っていない」と、関係者は指摘しています。

加えて、ICOで資金調達が容易になったことから、ブロックチェーン技術者の中には、既存の仮想通貨プロジェクトに参加するのではなく、自分で創業しようとする人たちもいます。

求人難を打開するため、各企業は、ブロックチェーン技術を持っていない社内のプログラマーに対するトレーニングも進めています。しかし、こうした技術者不足は、新しいソフトウエアが市場に出回るのを当初予定よりも数カ月程度遅らせる原因にもなっています。

WSJ紙によると、リップル社のシュワルツ氏は「各企業は競合他社より高い報酬を提示するよりも、興味深い技術的問題を提示したり、最高水準の技術者たちがメンバーになりたいと思えるようなチームを作ったり、開発中の製品の有益性を示したりするほうが有効だ」と指摘しています。

今後、ブロックチェーン技術者の獲得はますます加熱しそうですが、同時に、ブロックチェーン技術者の育成、情報共有による業界全体での知識の底上げなども、ますます重要になっていきそうです。

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