ブロックチェーン技術を使って電気の発電元を特定できるシステムが、日本で初めて実用化されました。ファッションビル事業などを展開する丸井グループは2018年9月からこのシステムを導入し、風力発電などの再生可能エネルギー発電(再エネ発電)で作られた電気を店舗で使っていくと発表。2030年までには同社の事業に使うすべての電力を再エネ発電でまかなう方針です。

このシステムにより、いずれは企業だけでなく一般の消費者でも、原子力発電で作られた電気だけは使わないといった選択ができるようになるかもしれません。

ブロックチェーンで供給元を特定できる「ENECTION 2.0」

ファッションビルの丸井やクレジットのエポスカードなどを傘下に持つ丸井グループ(本社・東京都中野区、青井浩社長)は2018年7月10日、ブロックチェーン技術を使って電力の供給元を特定できるシステム「ENECTION 2.0」を導入すると発表しました。同社はこれにより、風力発電などの再生可能エネルギーで発電した電力(再エネ電力)の導入を進めていく方針です。

「ENECTION 2.0」は、ベンチャー企業の「みんな電力」(本社・東京都世田谷区、大石英司社長)が開発したブロックチェーン P2P 電力取引プラットフォームです。再生エネルギー発電所から送られてくる電力を、需要と30分単位でマッチングさせることにより、発電源が特定された再エネ電力の供給を可能にするものです。

今回の丸井グループによる導入は、「ENECTION 2.0」にとって初の導入事例となります。このシステムにより、2018年9月以降、青森県にある3カ所の風力発電所(合計2000kW)などからの再エネ電力が丸井グループの一部店舗施設に供給される予定です。

丸井グループはまた、事業活動での消費電力を遅くとも2050年までに再生可能エネルギーで調達することを目標にする国際的イニシアチブ「RE100」に加盟したことも明らかにしています。同社は「RE100」の設定目標よりも早い2030年までに、事業活動に使う電力をすべて再生可能エネルギーで発電されたものにする計画です。

「ENECTION 2.0」電力に「地球に優しい」ブランド力を付加

ブロックチェーン技術を使って生産から最終消費までの流通経路全体のトレーサビリティー(追跡可能性)を実現するシステムは、農産物については既に日本で実証実験が行われています。今回開発された「ENECTION 2.0」は、その電力版といえます。

野菜の場合でも、生産者が特定できて、農薬を使っていないことや遺伝子組み換え作物でないことが証明されたものであれば、たとえ割高でも購入する消費者はいます。これと同様に、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再エネ発電について「地球に優しい発電方法で生まれた電力」というブランド価値が証明できれば、それを選んで購入する人も一定程度いると思われます。

2011年3月の東京電力福島第一原発事故の後、一時は国内のすべての原発が休止していましたが、今後再稼働する原発が増えていく見通しです。しかし、原発に拒否反応を示す人は今もたくさんいます。

一方、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やして発電する火力発電は、発電効率は良いものの、温室効果ガスである二酸化炭素を排出するため、地球温暖化につながるとの懸念も一部にあります。

このため、再エネ発電の電力を選んで購入できるようになれば、「エシカル消費」(社会倫理や環境への負荷を重視して商品やサービスを購入すること)の一環として、再エネ発電の電気を選んで購入する人が出てくる可能性があります。

ブロックチェーンで再エネの「2019年問題」を打開できるか

「ENECTION 2.0」が開発された背景には、全国の再生可能エネルギー発電の施設が直面する「2019年問題」と呼ばれる課題がありました。

太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電の難点は、火力など他の発電方法に比べて発電コストが高いことです。そのため日本ではなかなか導入が進みませんでした。

そこで、国は再エネ発電を行う事業者を増やして普及を促進するため、2012年7月、電力会社に対して再エネで発電された電気を国が決めた価格で買い取るよう義務づける「固定価格買取制度(FIT)」を創設しました。これにより、全国各地でたくさんの事業者が再エネ発電に参入しました。

しかし、2019年以降、これらの事業者は順次FITの適用期限を迎えるのです。今のままでは採算がとれずに存亡の危機に直面するところも多くあります。

「ENECTION 2.0」という、ブロックチェーンで発電元を特定、証明できる技術が実用化されたことは、こうした再エネ発電の事業者にとって朗報となりそうです。いずれは丸井グループのような企業だけでなく、一般の消費者が発電元を選んで電気を購入できるようになる可能性もあります。そうなれば、「エシカル消費」によって再エネ電力を選ぶ人も一定割合出てくると考えられ、再エネの普及が進みそうです。

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