2018年7月、仮想通貨取引のあり方を討議する二つの議員連盟が発足しました。ともに自民党の国会議員有志によるもので、一方は金融商品取引法の適用や投資家保護策、もう一方は業者への規制強化について議論し、法改正を図るのが目的です。

「新型通貨の適正利用を考える議員連盟」は仮想通貨への金融商品取引法適用目指す

仮想通貨をめぐる議員連盟の一つは、「新型通貨の適正利用を考える議員連盟」。

2018年7月17日に設立総会が開かれ、会長に竹本直一衆院議員が就任しました。仮想通貨交換業者を金融商品取引法(金商法)の対象とする法改正を目指すのが主な目的です。

仮想通貨への金融商品取引法適用の目的と影響

取り扱いできる対象

仮想通貨取引は現在は改正資金決済法の適用対象となっており、仮想通貨交換業務を営むことができるのは、金融庁に登録した仮想通貨交換業者だけです。

これに対し、適用法令が金商法に変更となった場合、仮想通貨は金融商品の一種となり、そうなれば銀行や証券会社などの既存の金融機関も仮想通貨を取り扱うことができるようになり、これらの金融機関から、投資のプロに仮想通貨の運用を委託する上場投資信託(ETF)のような新しい金融派生商品が発売される可能性もあります。

税制面の変化

税制面でも、現在は仮想通貨取引による利益は「雑所得」として一定額以上では確定申告が必要で、最大で45%の所得税が課せられていますが、金融商品となれば分離課税となり、源泉徴収されるので申告が不要となる可能性があります。税率も金融商品なら一律20%です。このため、仮想通貨取引が金融商品として金商法の扱いとなれば、サラリーマンなどが気軽に投資しやすくなるほか、「クジラ」と呼ばれる大口投資家の参入が一気に増えて仮想通貨市場が拡大することも期待できます。

投資家保護の観点

同議連が仮想通貨への金商法適用を目指すのには、投資家への保護を強化したいという狙いもあります。

金商法が適用されれば、仮想通貨交換業者には証券会社並みの基準が要求されることになります。すでに改正資金決済法のもとで、金融庁はたびたび仮想通貨交換業者やみなし仮想通貨交換業者に立ち入り検査を行い、そのたびに、マネーロンダリング対策が不十分だったり、顧客の資産と会社の資産を分けていなかったりと管理体制のずさんさが明らかになっています。

金融庁はこうした検査の結果、多数の業者に業務改善命令や業務停止命令の行政処分を行っていますが、仮想通貨が金商法の対象となれは、業者にとっては事業継続のハードルがいっそう高くなり、しかも銀行や証券会社といった強大なライバルの参入も見込まれることから、脱落していく業者も出てくると思われます。

他方で、金商法の適用で仮想通貨交換業者に高い基準が設けられれば、投資家にとってはそれが安心材料となり、仮想通貨取引がより広がっていくことも期待できます。

このように、仮想通貨への金商法の適用は投資家にとっては歓迎すべきことですが、仮想通貨交換業者側にしてみれば、必ずしもそうとばかりは言い切れません。

損失補償の制度化も検討

「新型通貨の適正利用を考える議員連盟」ではまた、仮想通貨交換業者による顧客の資産流用などで投資家に損失が発生した場合の補償のあり方についても議論していく方針です。

現行の改正資金決済法には、投資家に損失が発生した場合の規定が存在せず、この点が仮想通貨投資に当たってのリスク要因の一つとなっていました。同議連では仮想通貨取引での投資家保護の観点から、こうした損失補償をめぐる法改正も検討していくとしています。

規制強化目指す「仮想通貨適正化議員連盟」

もう一つの議員連盟は「仮想通貨適正化議員連盟」です。

浜田靖一元防衛相、木原誠二衆院議員、高木毅衆院議員が呼びかけ人となって2018年7月12日に初会合を開き、会長には財務官僚出身の木原議員が就任しました。

こちらは仮想通貨交換業者にセキュリティー対策や内部管理の整備などを求める厳格な規制を行っていくのが目的です。2018年1月に日本の仮想通貨交換業者コインチェックから約580億円相当の仮想通貨が不正流出した問題を受け、取引ルールの見直しや規制の強化を目指しています。

まとめ

このように、与党での二つの議員連盟の発足により、仮想通貨関連の法整備や規制強化の動きが一気に加速してきました。

仮想通貨と政界の関わりをめぐっては、野田聖子総務相の事務所関係者が、無登録で仮想通貨交換業務を行った疑いで金融庁の調査対象となっていた業者を同席させた上で金融庁に事情説明をさせていたことが7月19日に報じられ、現役閣僚による行政調査への圧力として批判されています。

野田総務相側は大筋で事実関係を認めつつも、圧力ではないと主張していますが、こうした出来事を通じ、仮想通貨をめぐって有力政治家に陳情が行われている実態を垣間見ることができます。

仮想通貨業界の今後を大きく左右しかねない与党議連の発足に、業界関係者も気が気でないことでしょう。今後はロビー活動など政界への働きかけも強まっていきそうです。

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