世界の著名企業が結集してビジネス用ブロックチェーンの統一仕様構築を目指す「イーサリアム企業連合(EEA)」が2018年7月、初の地域支部を日本に開設しました。アジア地域での活動を活発化させ、幅広い参加を促すのが狙いです。2018年5月には技術仕様の最初のバージョンが公開されており、同年中には実証実験も始まる見通しです。そこで今回は「イーサリアム企業連合」について解説します。

イーサリアム企業連合(EEA)」とは

イーサリアム企業連合(Enterprise Ethereum Alliance、EEA)」は、イーサリアム・ブロックチェーンを企業向けに改良した世界統一仕様の構築を目指す非営利組織です。2017年3月に設立され、本部は米マサチューセッツ州ウェークフィールドにあります。

EEAには500を超える企業・団体が参加しており、その中には石油メジャーのBPやクレディ・スイス、J・P・モルガン、マイクロソフト、インテル、日本のトヨタ自動車など、名だたる世界の大企業のほか、スタートアップ企業や研究機関なども加わっています。

最近では2018年7月10日に、海外ブロックチェーンの日本向けPR・マーケティング・コミュニティマネジメントを提供しているBaseLayer株式会社(本社・東京都渋谷区、競仁志社長)がEEAに加入しています。

2018年1月には、初代の常任理事にロン・レズニック氏が任命されました。レズニック氏は、移動体通信の世界共通規格の一つであるWiMAXの推進に携わったことのある人物です。

「企業イーサリアム」プロジェクトを推進

EEAが取り組んでいる「企業イーサリアム(Enterprise Etherium、EE)」プロジェクトは、今までのイーサリアムのネットワークとは別に、ビジネス用に特化した新しいイーサリアムの規格を作ろうというものです。

なぜ、既存のイーサリアムのプラットフォームをそのまま使おうとしないのでしょうか。

イーサリアムは、契約を正確・迅速に処理できるスマートコントラクト機能を実装していることなどからビジネスに活用しやすく、開発言語「ソリディティ」を使ったプログラミングも容易な点などから、ブロックチェーンの中でも最も企業に使われているプラットフォームです。

しかし、「企業イーサリアム」の提唱者でEEA創設メンバーのジェレミー・ミラー氏は、イーサリアムをビジネスに使うに当たっては、下記のような不都合な点があると指摘しています。

イーサリアムをビジネスに使う際の不都合な点

(1)取引承認のアルゴリズムとして現状ではProof of Work(POW)を使っているため、取引処理が遅く、非効率
(2)公開型ブロックチェーンであるため、すべてのノード(ネットワーク参加者)に情報が公開され、企業のセキュリティやデータの秘密保持の要求に十分応えられない
(3)システムの改良や仕様変更に当たってもネットワークの合意が必要になる

そこで、「企業イーサリアム」プロジェクトでは、イーサリアムを秘密保持やセキュリティーなどの面でビジネス用に進化させた新しい世界標準仕様を作ろうとしているのです。

イーサリアム企業連合(EEA)の最初の支部は日本に開設

EEAは2018年7月、初の地域支部となる日本支部を開設し、支部代表にソフトウエア開発会社クーガー(本社・東京都渋谷区)のリードブロックチェーンエンジニア、石黒一明氏を任命しました。

日本支部代表はクーガーのブロックチェーンエンジニア 石黒一明氏

EEAの最高責任者であるレズニック常任理事は、「企業イーサリアム」プロジェクトの普及促進のため、今後、世界各地に支部を開設していく方針を明らかにした上、日本支部の石黒代表について、「ブロックチェーンの専門家であり、われわれのブロックチェーンのイニシアティブの日本での拡大を促進するとともに、会員企業・団体のニーズに対応するのに、ふさわしいリーダーだ」と評価しています。

石黒氏は、米国でのDJなどの経験を経て、EEAの会員企業であるクーガー社で次世代ブロックチェーン対応オートメーション技術の開発に携わっている人物です。今後はEEAの日本支部代表として会員企業・団体をサポートするとともに、ハッカソンやワークショップ、会議への出席などを通じて、日本やアジア地域の産業界に「企業イーサリアム」を広めていく「エバンジェリスト」の役目も負うことになります。

EEA 日本支部代表 石黒一明氏

出典:Enterprise Ethereum Alliance Expands Presence in Asia; Appoints Blockchain Expert Kazuaki Ishiguro to Lead Japanese Office(EEA)

EEA、2018年5月に仕様書を公開

EEAは2017年3月の設立以来、しばらくはこれといった動きがなく、やはり公開型プラットフォームであるイーサリアムをビジネス向けに改良するのは難しいのではないかとの観測さえ流れていました。

しかし、2018年5月になって、EEAはついに「EEA企業イーサリアム・クライアント仕様書 1.0版」を公開。これにより「企業イーサリアム」の全体像が分かってきました。

「企業イーサリアム」は5つの階層で構成され、下から上へ順番に
(1)ネットワーク
(2)コア・ブロックチェーン
(3)プライバシー・スケーリング
(4)ツーリング
(5)アプリケーション
となっています。

この5段階構造の中に、プライベート(非公開)コンセンサスシステムなど、オリジナルのイーサリアムにはないさまざまな機能を組み込んでいます。

EEAは2018年中にはテストネットを使った実証試験を始める見通しで、「企業イーサリアム」の実現に向けた動きは、いよいよ本格化しています。

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