スマートフォン用ソフトを開発している株式会社アクロディア(本社・東京都新宿区、堤純也社長)は2018年7月17日、長野県佐久市に仮想通貨のマイニングファーム(採掘工場)を設営し、同年秋からマイニング事業に乗り出すと発表しました。7月25日には、堤社長(写真左)が、佐久市を表敬訪問し、栁田市長(写真右)と対談。佐久市とエストニア・サク市の友好都市関係を足がかりとした欧州進出も視野に入れています。

スマホ用アプリから仮想通貨マイニングへ

アクロディア社はこれまで、サンリオのキャラクターを使った脱力系ゲーム「ぐでたま 世界なんてどーでもいいわー」や、野球の投球の球種や球速、回転数などをスマホで解析できる「i・Ball Technical PITCH」などのスマホ用アプリを主に開発してきました。仮想通貨関連事業に乗り出すのは、今回が初の試みとなります。

同社は事業領域拡大と成長に向けた中長期的な戦略として、ブロックチェーン技術や人工知能(AI)などの先端技術を使ったソリューション開発や、仮想通貨関連事業への参入を計画していました。今回発表されたマイニング事業の開始は、こうした戦略に基づく第一歩となります。

アクロディア社はマイニングファーム設営のために、佐久市臼田地区の北川工業団地内にある約1700万平方メートルの工場跡地と2階建ての建物を取得。ここに「仮想通貨のマイニングデータセンター」を設営し、マイニングマシンと呼ばれる専用の高性能コンピューター60台を同年9月に導入した上で、仮想通貨のマイニングを始める予定です。マイニングマシンの台数は最終的には1000台規模となる見通しです。

今回のマイニング事業については自己資金の運用を目的とし、第三者の資産管理は行わない方針です。マイニングの報酬として獲得した仮想通貨は、同社の事業展開へ再投資される予定です。ただし同社は、今後の展開としては、第三者の資産運用としてのマイニング事業も検討していくとしています。

長野県佐久市は、マイニングに向いた冷涼な気候

堤社長は、マイニングファームの立地に佐久市を選んだ理由のひとつに、工場設営に適した地勢と気候を挙げています。

佐久市は群馬県との県境、佐久平の中央に位置する高原都市です。このため夏でも朝晩は比較的涼しく、内陸性気候のため年間を通して湿度も低いのが特徴で、気象庁が統計を取り始めた1979年以降、1日も熱帯夜がないとのことです。

他のマイニングファームの多くも寒冷地に設営されていますが、こうした佐久市の気候は、大量の高性能コンピューターを稼働させるため熱対策が課題となるマイニングの実施には適しているといえます。

しかも佐久市では活断層の存在が確認されていないため、地震による被害のリスクも少ないとみられています。

エストニア進出への布石に

堤社長が佐久市進出のもう一つの理由として挙げるのは、佐久市が北欧のエストニアのサク市と友好都市の関係を結んでいる点です。「エストニアは仮想通貨への理解が進んでいる」ことから、佐久市への進出を足がかりにエストニアでの事業展開を計画していることも明かしています。

日本とエストニアの間で友好都市関係を結んでいるのは、佐久市とサク市の間だけ。佐久市の栁田清二市長も「アクロディア社と佐久市、エストニア共和国大使館による三者連携をしていくことも考えられる」と述べ、同社のエストニア進出を支援していく考えを示しています。

エストニア政府が計画する仮想通貨「エストコイン」

アクロディアの堤社長が言及した通り、エストニアは仮想通貨に積極的な国の一つで、同国で計画されている「エストコイン」は、国家が発行する初の仮想通貨になると言われています。

バルト海に面した北欧のエストニアは、2014年から「e-レジデンシー」という世界初の電子国民制度を構築しています。

「e-レジデンシー」には世界中から誰でも電子国民として登録できます。電子国民になるメリットとして、どこからでも銀行取引や納税、暗号化した文書のやりとりなどがオンラインで簡単にできるなどの点もありますが、何と言っても最大の売りは、エストニアが欧州連合(EU)加盟国であることから、電子国民になればEU内で事業展開できる会社を簡単に設立できる点です。

このような「e-レジデンシー」制度を発足させた目的には、国外から投資を呼び込むことだけでなく、小国であるエストニアが世界中から電子国民を集めることで、強大な隣国ロシアに対する抑止力を高める狙いもあるとみられています。既に「e-レジデンシー」には、エストニア国外から3万5000人以上が登録しています。

仮想通貨「エストコイン」計画は縮小か

この電子国家内で通用する仮想通貨として計画されているのが「エストコイン」です。エストニア政府は当初、エストコインをEUの共通通貨ユーロと連動させる方針とみられていました。

しかし、2017年9月に欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が、エストニアで通用する通貨はユーロ以外にはあり得ないと発言し、これに待ったをかけました

ECB総裁発言を受け、エストニア政府はエストコインとユーロの連動は断念したものの、エストコインの発行計画自体はまだ存続しているようです。同国政府のIT戦略担当者は2018年6月、米通信社ブルームバーグの取材に対し、「われわれは新しい通貨を作ろうとはしていない」としつつも、「政治家たちとエストコインについて協議し、『e-レジデンシー』のコミュニティー内での取引手段とする方針で一致した」と述べています。

まとめ

このようにエストニアは、電子国家や仮想通貨について世界最先端の政策を進めているだけでなく、巨大な欧州市場への入り口ともなっており、日本の仮想通貨関連産業にとって目が離せない国の一つとなっています。アクロディア社のようにエストニア進出を目指す企業も今後増えていきそうです。

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