仮想通貨マイニングの世界最大手企業である中国のビットメイン社(Bitmain Technologies Ltd.)が、日本のソフトバンクなどから計10億ドルの資金を調達したことが分かりました。資金調達後の資産評価額は150億ドル(約1兆6000億円)。巨大資本でありながら株式を公開していない世界屈指の「ユニコーン企業」となっていますが、同社は近く香港証券取引所に株式を上場する見通しです。

日本のソフトバンクと中国のテンセントから調達

ビットメイン(Bitmain Technologies Ltd.)が資金調達を受けたのは、日本のソフトバンクと中国のテンセントの両社から。調達額は計10億ドルです。これにより、ビットメインの資産評価額は150億ドル(約1兆6000億円)となります。

ちなみにテンセント社は、ゲーム開発のほか、中国で広く使われているメッセンジャーアプリ「QQ」「WeChat」の運営元としても知られる企業です。

仮想通貨マイニングの世界最大手「ビットメイン」とは

ビットメインは2013年に設立された中国の企業で、同社製の「Antminer」シリーズは、仮想通貨の採掘に最適化されたマイニング専用マシンとして世界で7割以上のシェアを誇っています。同社はまた、マイニングマシンの核となる特定用途向け集積回路(ASIC)の製造・開発でも知られています。

それだけでなく、ビットメイン社は傘下のアントプール(Antpool)、BTC.comの両社を通じてマイニングプール事業も展開しており、両社を合わせるとビットコインのマイニング能力は世界全体の4割を占めています

同社を率いる32歳のウー・ジハン最高経営責任者(CEO)は、ビットコインキャッシュの推進派として知られています。2017年8月にビットコイン(BTC)が分裂してビットコインキャッシュ(BCH)が誕生したのも、ビットメイン社を中心とする中国系マイニングプールの主導によるものでした。

大きな影響力を持つゆえのビットメインの懸念と対応

仮想通貨のコミュニティーでは、このようにビットメイン社が強大な支配力を持っていることへの懸念も強まっています。一企業が仮想通貨に対して強い影響力を持ちすぎることは、中央管理者のいない分散型システムとして生まれたビットコインなどの仮想通貨の理想に反するからです。同社が十分な情報を公開していないという批判も出ていました。

そんな中、ビットメイン社をめぐる幾つかの疑惑が浮上してきました。

一つは、同社製のマイニングマシン「Antminer」に搭載されている「ASIC Boost」と呼ばれる技術をめぐる問題です。これは通常のマイニングに比べて計算量を2〜3割減らすことができるという技術で、ブロックチェーンシステムの欠陥を利用したものと言われており、不正なマイニングと言えるかどうかは意見の分かれるところです。ビットメイン側はAntminerにASIC Boostが搭載されていることは認めつつも、マイニングには使っていないと主張しています。

2017年4月には、Antminerを外部からネット経由で遠隔操作できるバックドアが仕込まれていることが分かりました。これを使えば各ユーザーのAntminerを自由に停止させたり、それぞれのマシンに記録された情報を見たりすることも可能です。ビットメイン側は、これはユーザー自身が遠隔操作でAntminerの動作を終了させるための機能だと説明しましたが、こうした機能を公にしていなかった点が疑惑を呼びました。

さらに、ビットメインが新開発の技術を使った製品を発売する前に、自社でその技術を独占してセルフマイニングを行っているという「シークレットマイニング」疑惑もささやかれています。

ビットメインが「透明性に関する方針」を発表

こうした疑惑に答える形で、ビットメイン社は2018年7月25日、「製品出荷およびマイニングの実施についての私たちの透明性に関する方針」と題する文書を発表。シークレットマイニング疑惑を「不当な非難」と否定した上で、「ビットメインは透明性と公正な競争を重視する」として、今後もシークレットマイニングは一切行わないと宣言しています。

また、自社所有のマイニングマシンで行っているセルフマイニングのデータを30日ごとに公開する方針を表明。マイニングマシンの新製品を発売した際には、受注情報も公表するとしています。

ビットメイン、香港でのIPOを準備

ビットメインは現在、香港証券取引所(HKEX)での新規株式公開(IPO)の準備を進めており、中国国際金融(CICC)を主幹事として2018年中には正式に上場する見通しと伝えられています。株式が上場されれば、株主に必要な企業情報が公開されるため、仮想通貨コミュニティーでのビットメインに対する懸念や疑惑が和らぐ可能性もあります。

ビットメインが株式上場の先に見据えているのは新事業への進出です。ウーCEOはかねてから人工知能(AI)の開発に乗り出す考えを示しています。AIは同社がこれまで培ってきたASICと近接した技術である上、中国政府は国策としてAI開発を推進しているため、マイニング事業と違って国家の全面的なバックアップも期待できるからです。

仮想通貨のマイニング業界で圧倒的な支配力を持つビットメインですが、AI分野をはじめとする新事業への進出で経営を多角化しようとしているのです。資金調達や株式上場による経営基盤の強化も、そのための布石と言えるでしょう。

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