米金融大手ゴールドマン・サックス・グループが、仮想通貨ファンドを対象としたカストディ(管理)業務の開始を検討中と報じられています。日本の野村ホールディングスなども同サービスの研究を進めており、信頼性の高い大手金融機関の相次ぐ参入が仮想通貨への大口投資の追い風になることが期待されます。

仮想通貨ファンド対象のカストディ・サービス 具体的な開始時期は未定

カストディ・サービスとは、投資家に代わって現金や有価証券、宝石、貴金属などの資産の保管・管理を行うサービスのことで、銀行や証券会社などがこうした業務を手がけています。

ヘッジファンドや年金基金などの機関投資家を中心に利用されているほか、投資家が国外の有価証券に投資した際、現地のカストディ・サービス会社(カストディアン)に証券を預けて管理を任せるとといった用途にもよく使われています。ゴールドマン・サックスも、仮想通貨以外の資産についてはすでにカストディ・サービスを実施しています。

米通信社ブルームバーグの報道によると、ゴールドマン・サックスのスポークスマンは「さまざまなデジタル商品への顧客の関心に対応して、当社はこの分野で顧客に奉仕できる最良の方策を開拓しようとしているところだ」と述べつつ、仮想通貨ファンド向けのカストディ・サービスの開始については現在検討が続けられているが、まだ具体的な開始時期などは決まっていないと話しています。

投資家から資金を集めてさまざまな仮想通貨を運用する「仮想通貨ファンド」は、2017年に175もの商品が誕生して一気に急増し、2018年8月時点では251商品が稼働しています。これらの仮想通貨ファンドに投資している機関投資家を中心に、カストディ・サービスを待ち望む声が強まっていました。

野村ホールディングスなども参入を検討

こうした声に応えて、仮想通貨向けのカストディ・サービス開始を準備または検討する金融機関が相次いでいます

2018年5月には、日本の野村ホールディングスが、フランスのデジタル資産セキュリティー管理会社レッジャー(Ledger)、英領ジャージー島の投資顧問会社グローバル・アドバイザーズ(Global Advisors Holdings Limited)との3社合同で新たなベンチャー「コマイヌ(Komainu)」を設立し、共同研究を始めると発表しています。

レッジャー社は仮想通貨のハードウォレット開発のリーディングカンパニー。グローバル・アドバイザーズ社は世界初のビットコインファンドを立ち上げた企業として知られています。

野村ホールディングスは「デジタルアセット市場の急激な成長を背景に、機関投資家をはじめ多くの投資家がデジタルアセットへの投資を検討しています。しかし、安全かつ法規制に準拠したカストディ・サービスが不足していることが、その参入を妨げる大きな要因になっています」と指摘。「コマイヌ」プロジェクトでの共同研究を通じて「機関投資家に、デジタルアセット投資の際の業界標準となるカストディ・サービスを提供することを目指します」としています。

また、米国で有価証券などのカストディ・サービスを行っているバンク・オブ・ニューヨーク・メロン、JPモルガン・チェース、ノーサン・トラストの各社も、仮想通貨関連のカストディ・サービス開始を準備しているか、あるいは検討していると伝えられています。

仮想通貨取引所などもカストディ・サービス参入準備

仮想通貨業界からも、カストディ・サービスに乗り出そうとするる企業が続々と現れています。

米大手仮想通貨取引所コインベース(Coinbase)は、米国の基準に基づくカストディアンとしてまもなく認証を受けられる見通しだと発表しています。さらに、米仮想通貨取引所ポロニエックス(Poloniex)を傘下に持つサークル社(Circle)や仮想通貨セキュリティー会社のビットゴー社(BitGo)もカストディ・サービス開始に向け当局と協議を行っています。

これらの仮想通貨関連のカストディ・サービスは、2018年末から2019年にかけて登場する見通しです。こうしたサービスが始まればデジタル資産をより安全に保管できるようになるため、大口の機関投資家が仮想通貨投資に続々と参入することも期待されています。

ハッカーからデジタル資産をどう守るか

仮想通貨向けカストディ・サービス登場はファンドマネージャーにとっても朗報

また、仮想通貨向けカストディ・サービスの登場は、仮想通貨ファンドの運用を行っているファンドマネジャーたちにとっても安心材料となります。米証券取引委員会(SEC)は投資ファンドに対して顧客の資産をカストディアンに管理させるよう要求しており、現在251ある仮想通貨ファンドはこれに従っていないことで摘発を受ける恐れがあったからです。仮想通貨ファンド向けカストディ・サービスが開始されれば、約200億ドルの資産が同サービスに流入すると見込まれています

課題はセキュリティ体制の構築

仮想通貨ファンドのカストディ・サービスを始めるに当たっての課題は、デジタル資産をハッカーの脅威からいかにして防衛するかという点です。いったんハッキングで資産が不正流出してしまうと追跡が難しく、取り戻すことは困難と考えられるからです。このため参入を検討している各金融機関は、従来のカストディ業務で培った経験とデジタル技術を融合させた新しいセキュリティ体制の構築に取り組んでいます。野村ホールディングスなどの「コマイヌ」計画では、ヘッジファンドなどの機関投資家の協力を得て、2018年夏中に実証実験を行う予定です。

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