中国の投資家に買収されたシンガポール企業が日本の銀行と連携して、日本円建てのステーブルコイン(価値の安定した仮想通貨)の発行を計画していることが分かりました。法定通貨と連動するステーブルコインとしては、米ドル建てのテザー(USDT)などが知られていますが、円と連動する仮想通貨は初めてとなります。

2018年末から2019年初めにテザーでICOを予定

2018年9月18日付の香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストの報道によると、この円建てステーブルコインの発行を計画しているのは、シンガポールに本拠を置き、香港証券取引所に上場しているグランドショアズ・テクノロジー・グループ(Grandshores Technology Group)。同社はこのプロジェクトで1億香港ドル(1270万米ドル)のイニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)を行う計画を発表しました。発行する仮想通貨の名称はまだ決まっていません。

グランドショアズ社はもともとは住宅・オフィス関連の事業を展開していた会社ですが、2018年5月に現会長のヤオ・ヨンジー氏に買収され、同8月に旧社名のSHISから社名変更するとともに、ブロックチェーン関連の事業に進出することになりました。

ヤオ会長は、同社が中国国外の適格な投資家たちから仮想通貨テザーで資金を集めてICOを実施した上、新しい円建てステーブルコインを仮想通貨取引所に上場する方針を表明。発行時期については、2018年末から2019年初めごろになるとの見通しを示しています。

日本の中堅銀行も計画に参加

ヤオ会長は、このプロジェクトに日本の中堅クラスの銀行が加わっていることも明かしていますが、具体的な銀行名は公表していません。

同会長は中国・杭州市政府が出資する杭州グランドショアズ・ファンド(Hangzhou Grandshores Fund)の共同創設者でもありますが、今回のプロジェクトには同ファンドも参加しているとのことです。なお、同ファンドには、ビットコインの世界で強大な影響力を持つと言われる中国の大物投資家、李笑来氏も出資しています。

現在は同ファンドの創設パートナーたちと日本の銀行との間で、新たなコイン創設に向けて共同で作業しているところだとされています。

香港ドルや豪ドルと連動した仮想通貨も計画

同会長は、円建てステーブルコインには需要が見込まれると述べた上、このコインの発行の次には、香港ドルやオーストラリアドルと連動したステーブルコインの発行も計画していることを明かし、「私たちは、仮想通貨のトレーダーや各仮想通貨取引所が、これらのステーブルコインを取り扱っていくことになると確信している」と述べています。

ステーブルコインとは

法定通貨と連動したステーブルコインとしては、米ドル建てのテザー(USDT)などが知られています。テザーは2015年2月から発行されており、価格が米国の法定通貨ドルと連動したペッグ通貨であることが最大の特徴で、常に1USDT=1ドルの価格をほぼ維持しています。このため、テザーは仮想通貨の便利さと法定通貨同様の安定した価値という両方の長所を併せ持つ安定コインとして、資産保全の手段にも使われています。

テザーの発行元であるテザー社は、いつでもテザーの引き出しに応じられるように、1USDTにつき1ドルの準備金を保有していると表明しています。この準備金が本当に存在するかについては疑惑も指摘されているものの、準備金がテザーの価値の裏付けとなっています。
今回グランドショアズ社が計画している円建てステーブルコインは、このテザーと引き替えに発行されるもののようです。

ヤオ会長「ブロックチェーンは3~5年で主流技術に」

中国・杭州市にある浙江大学の非常勤講師も務めているヤオ会長は「ブロックチェーンは今後3年から5年の間に主流の技術となる」との見通しを明らかにした上、「私たちはブロックチェーンの進化の次の段階に入ろうとしており、それは、コンピューターの基本ソフト(OS)がMS-DOSからウィンドウズに移行していった時と似ている」と指摘しています。

同会長は、グランドショアズ社を通じて世界のスタートアップ企業や仮想通貨プロジェクトに出資していく方針を示した上、ブロックチェーン業界の幾つかの有望な新興企業が伝統的な金融システムを破壊し、現在のような巨大IT企業による独占状態を打ち破ることを確信していると述べています。

ヤオ会長は、中国のビットコイン用マイニングマシン製造大手であるカナーン・クリエイティブ(Canaan Creative)にも出資しています。同社は10億ドルの資金調達を目指して香港証券取引所で新規株式公開(IPO)を行う予定です。

現在、杭州グランドショアズ・ファンドは中国国外のブロックチェーンおよび仮想通貨のプロジェクトへの投資を行っています。投資先の中には、仮想通貨ジーキャッシュ(Zcash)や、ブロックチェーンのスタートアップ企業GX Chain、ブロックチェーンを使った交流サイトONOなども含まれています。

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