博報堂(本社・東京都港区、水島正幸社長)が、ブロックチェーン技術を活用して社外のパートナー企業とともにビジネス開発を推進するイニシアティブをスタートさせると発表しました。大手広告代理店のこの分野への本格参入で、日本でのブロックチェーン技術の幅広い分野への活用に弾みが付きそうです。

トークンエコノミーの登場に着目

博報堂が設立したのは、「HAKUHODO Blockchain Initiative(博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ、HBI)」。ブロックチェーン技術の活用やトークンコミュニティーの形成に関連したビジネスやサービス、ソリューションの開発を支援し、推進していくことを目的としています。

同社はHBIを発足させた背景として、近年、ブロックチェーン技術の発展により、生活者が発信する情報の信頼性を担保できるようになった結果、ブロックチェーン技術で実装されたトークンを使って、共通の価値観を持った不特定多数の生活者が活発に価値交換を行う「トークンコミュニティー」が登場していることに注目。「生活者一人ひとりがこれまで以上に発信・行動する主体となり、社会に価値を作り出す『生活者主導社会』になっていくことが予想される」と指摘しています。

HBIは、以下のような活動を通じ、ブロックチェーンの活用による新たなビジネス開発を推進していくとしています。

  1. ブロックチェーン技術の活用やトークンコミュニティーの形成に関わる企業のビジネス開発、サービス開発の支援
  2. マーケティング領域におけるブロックチェーン技術の活用によるソリューション開発
  3. ブロックチェーンやトークンICO(イニシャル・コイン・オファリング=仮想通貨による事業資金調達)に関連したサービス、プロダクトのマーケティングノウハウの蓄積
  4. 本領域における調査・研究活動、および対外情報発信

また今後、これらの活動をより強固に推進していくため、HBIは社外のパートナーとして、ブロックチェーンの技術企業、システム・サービス開発企業、トークン設計コンサルティング企業、法律専門家や各種関連業界団体と連携を図っていく方針です。さらに、技術活用や実証実験、研究活動にとどまらず、社会に新しい価値を届けられるよう、ブロックチェーン技術の活用やトークンコミュニティーの形成を通じ、生活者主導社会における新たなビジネスの開発を目指すとしています。

マーケティング活用で研究プロジェクトも発足

博報堂はまた、9月20日には、デジタルマーケティングやコンテンツ事業を展開するユナイテッド株式会社(本社・東京都渋谷区、早川与規代表取締役会長CEO)と共同で、ブロックチェーン技術のマーケティング領域への活用について研究開発活動を行う共同プロジェクト「ブロックチェーン・イノベーション・ラボ(BI Lab)」を発足させると発表しています。

BI Labでは、ブロックチェーン技術により実現されるトークンコミュニティーの形成が、多様な価値観を持った不特定多数の生活者の行動に今後大きな影響を及ぼす可能性に着目し、「トークンコミュニティーがデジタルマーケティングをどう変えるか」をテーマに研究開発活動を行っていくとしています。

具体的な研究開発内容としては、以下のものを挙げています。

  1. ブロックチェーン技術を活用した分散型アプリケーションの国内外における事例研究と、デジタルマーケティング領域への当該技術の活用可能性の研究
  2. 上記(1)の研究で得られたアイディアを基にした、新たなマーケティング・ビジネスの企画・設計・プロトタイピング等

仮想通貨を使った地方創生プロジェクトにも参加

博報堂は日本の広告業界では電通に次いで第2位のシェアを持つ大手代理店ですが、このところブロックチェーン技術の活用に向け、さまざまな取り組みを積極的に進めようとしています。

2018年6月には岡山県西粟倉村が日本初の自治体による地方創生ICOの実施を発表しましたが、博報堂はこのプロジェクトにも参加しています。

西粟倉村は人口約1500人、村の面積の約95%を森林が占める林業中心の村です。「平成の大合併」で周囲の自治体の大半が合併を受け入れる中、自立の道を選択し、林業の六次産業化や移住起業支援事業など、独自の地域活性化施策に取り組んできました。こうした中で、持続可能な地域づくりを推進していくための財源確保の手段として、トークンの発行で仮想通貨を集める ICO による資金調達を、日本の自治体として初めて導入する計画です。

ICOで発行されるトークンは「Nishi Awakura Coin(NAC)」と命名。NACの保有者は、同村で事業を立ち上げようとするローカルベンチャーへの投票権が付与され、地域づくりに参加することができます。

プロジェクトの一環として、同村では民間事業者で構成する一般社団法人西粟倉村トークンエコノミー協会を設立。今後は仮想通貨について規定する改正資金決済法や、仮想通貨交換業者で構成する日本仮想通貨交換業協会が制定を目指しているICOに関する自主規制ルールに沿って運営や資金調達を進めていく予定で、2021年度をめどにNACを発行することを目指しています。

これまで日本では仮想通貨の投機的側面ばかりに注目が集まっていましたが、大手広告代理店がこの分野に本格参入したことで、ビジネスから地方創生まで、さまざまな領域で仮想通貨・ブロックチェーン技術が活用されていくことが期待できそうです。

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