米国の首都ワシントンで2018年9月、仮想通貨業界のロビイング団体「ブロックチェーン協会(Blockchain Association)」が結成されました。米国では各種業界の利益に沿った政策の実現を議会や政府に働きかけるロビー活動が盛んに行われていますが、仮想通貨業界による本格的なロビイング団体の設立は初めてです。

大手取引所コインベースなどが参加

ブロックチェーン協会の創設に加わったのは、大手仮想通貨取引所を運営するコインベース(Coinbase)社やサークル(Circle)社のほか、仮想通貨ファイルコイン(FIL)を創設したスタートアップ企業プロトコル・ラブズ(Protocol Labs)、投資ファンドのデジタル・カレンシー・グループ(Digital Currency Group)やポリチェーン・キャピタル(Polychain Capital)などです。

ブロックチェーン協会はオリンピア・J・スノー(Olympia J.Snowe)上院議員(共和党、メイン州選出)の側近スタッフだったクリスティン・スミス(Kristin Smith)氏をロビイストとして迎え入れ、同氏の主導により既にロビー活動を始めています。スミス氏は「私はこの分野での基本教育の仕事に多大な時間を費やしてきた。仮想通貨をめぐる問題に専心して取り組めることに奮い立っている」と意気込んでいます。

ブロックチェーン協会が設立された背景には、最近の仮想通貨市場の拡大に伴い、詐欺事件などの消費者被害への対策や、仮想通貨をどのような枠組みで規制するかといった立法課題が山積しており、議会や政府に対して業界側の意見を伝える仕組みが必要とされていたことがあります。

ブロックチェーン協会は、首都ワシントンでの仮想通貨業界のロビイング団体として、適正な規制の枠組みの中で業務を行いたいと考えている業界の中心的企業の声を立法活動に反映させることを目的としています。

さしあたって最優先に取り組むべき課題は、米国の税法の下で仮想通貨がどのように扱われるべきかについてや、マネーロンダリング対策(AML)と本人確認手続き(KYC)に関する統制が仮想通貨業界にどのように適用されるべきかについて、業界側の意見を議員たちに説明し、理解を求めていくことです。

「規制をなくすのが目的ではない」

協会の会員企業の一つであるコインベース社の最高法務・リスク対策責任者、マイク・レンプレス(Mike Lempres)氏は「ブロックチェーン協会は、この分野の卓越した企業が一緒になって、規制が適正なものである場合にはそれを歓迎するという企業の声を議員たちに聞いてもらうための方策だ。私たちは長続きする法的・統制システムを作り出そうとしているのであって、そうしたシステムをなくそうとしているのではない」と話しています。

各国でも業界団体は続々と設立

仮想通貨・ブロックチェーンの業界団体は、ここ数年、オーストラリアや中国、そして日本でも続々と設立されています。

インドでは2017年、コインセキュア(Coinsecure)、ウノコイン(Unocoin)、サーチトレード(Search Trade)、ゼブペイ(Zebpay)などの仮想通貨業界の有力企業が結集して「インドブロックチェーン仮想通貨協会(Blockchain and Virtual Currency Association of India)」を設立しています。これは、同国の中央銀行であるインド準備銀行(RBI)が仮想通貨に対する禁止・規制措置を発動したことに対抗した動きでした。

英国では2018年2月、仮想通貨業界の有力企業7社によって業界団体が結成されています。この団体は仮想通貨業界の自主規制基準の策定を目的としたものでした。

日本で仮想通貨交換業者16社が集まって2018年4月に設立した日本仮想通貨交換業協会も、業界団体として仮想通貨の取り扱いに関する各種ルールを策定し、監督官庁の金融庁から自主規制団体として認定されることを目指しています。

ロビー活動に特化した団体は初

米国でも2012年9月に「ビットコイン財団(Bitcoin Foundation)」が設立され、議会や規制当局に対し、さまざまな働きかけを行っています。

ビットコイン財団は2018年に入ってからは、ニューヨーク州電力局と同州内の幾つかの自治体が仮想通貨マイニングを一時禁止した措置について、法的根拠を示すよう情報公開請求を行ったり、仮想通貨がヘイトクライム団体やテロ組織の資金源になっている疑いがあるとの一部議員の認識について、それが誤解であるとして議会に書簡を送ったりといった活動を続けています。

ただ、ビットコイン財団は、仮想通貨業界だけでなく個別の投資家や消費者側の利益も代表した組織であり、当局への誓願活動だけでなく、シンクタンクや自主ルールの策定など多様な目的を持っています。これに対し、今回設立されたブロックチェーン協会は、仮想通貨・ブロックチェーン業界の権益を代表して、その利益実現のためのロビー活動に特化した団体である点が特色です。

ワシントンを本拠とする仮想通貨シンクタンク、コイン・センター(Coin Center)のジェリー・ブリト(Jerry Brito)常任理事は、ブロックチェーン協会のような団体が登場したことは、仮想通貨産業の成熟度が増していることの証しだとした上、「こうした団体の発足をうれしく思っている。私たちは明らかにそのような団体ではないが、私たちが仮想通貨業界について問題を見つけたときには、それらの問題をこうした団体に伝えることができる」と述べています。

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