仮想通貨には中央管理者がいないため、国家の統制は及ばないと考えられてきたにもかかわらず、実際にはその価格や取引高、ユーザーは各国の規制やニュース報道に大きく影響されており、仮想通貨市場は国ごとに分断されている――。このような調査結果を、国際決済銀行(BIS)がまとめました。

各国規制や報道の市場への影響を検証

仮想通貨は国家統制の枠外にあるボーダーレスなものと思われてきたが、本当に国家の規制に服さないのか。BIS(Bank for International Settlements:国際決済銀行)が2018年9月23日発表した調査報告では、このような観点から、各国の仮想通貨に関する規制措置やそれらのニュース報道と市場データを分析し、規制や報道が仮想通貨市場に影響を与えてきたか、与えたとすればどのような影響だったかを検証しています。その結果、以下のような4つの大きな発見があったとしています。

  1. 市場は仮想通貨の法的地位に関するニュースに最も強く反応

    第一に、仮想通貨市場は、仮想通貨の法的地位に関するニュースに最も強く反応するということです。

    また、仮想通貨の金融取引への使用を全般的に禁止する措置や、市場のセキュリティーに関する法律の下での仮想通貨の取り扱いに関するニュース、仮想通貨が通貨として取り扱われないことを報じたニュースは、市場に対して強いマイナスの影響をもたらしていました。

    他方で、仮想通貨やイニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)に関する新たな法的枠組みの可能性を示すニュースは、市場の大幅な値上がりにつながっていました。

    例として挙げられているのは、2017年3月に米証券取引委員会(SEC)が、ビットコインETF(上場投資信託)を創設するための証券取引所のルール変更を求めた申請を却下した際、ビットコイン価格が急落したことです。この発表から5分の間にビットコイン価格は16%も下落しています。

  2. AML対策のニュースは市場に悪影響

    第二に、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金源対策(CFT)の方策に関するニュース、および既存金融システムの中での仮想通貨の利用制限に関するニュースは、仮想通貨市場に悪影響をもたらすということです。

    報告では一例として、2018年6月、日本の金融庁が仮想通貨交換業者6社に対し、マネーロンダリング対策(AML)を改善するよう命じた際に、ビットコイン価格は数時間のうちに急落した事例を挙げています。

  3. 当局の一般的警告は全く効果なし

    第三に、仮想通貨に関する当局の不特定で一般的な警告には、全く効果がないということ。中央銀行のデジタル通貨(CBDC)発行の可能性に関するニュースも、市場に何の影響も与えていませんでした。

  4. 仮想通貨市場は国ごとに分断されている

    最後に、仮想通貨は各国ごとに大きな価格差が生じることがあり、これは市場が国ごとに分断されている状況を示しているということです。

    市場の分断の一例として、報告書は韓国の仮想通貨市場の「キムチ・プレミアム」と呼ばれる現象を挙げています。これは、韓国でのビットコイン価格が米国での価格をいつも上回っており、時には価格差が50%以上にもなることがある現象のことです。

    同様に、中国当局による仮想通貨規制に関するニュースが、中国の仮想通貨市場の米国市場との価格差を引き起こすことがときどきあります。

仮想通貨は既存の金融システムに依存

なぜ、各国ごとの規制に関するニュースが、国境を越えて取引されている仮想通貨の価格にこのように大きく影響するかについて、報告書は、法定通貨を仮想通貨に交換する際などに、仮想通貨は既存の金融システムに依存している点に原因の一端があるとしています。

また、国際的なさや取り売買がまだ制限されている点も、各国の仮想通貨市場ごとの価格差が解消しない原因とされています。仮想通貨の投資家たちは、基本的には各国ごとの法的統制の範囲内で銀行や仮想通貨取引所の口座を保有しており、内外価格差で利ざやを稼ごうとしても簡単には国外の仮想通貨市場にアクセスできない場合があるためです。

このような要因から、仮想通貨市場の分断と分裂が生じている結果、各国の仮想通貨市場は現時点では国家の規制に束縛されていると、報告書は指摘しています。

国家による仮想通貨統制は有効

同報告は、これらの結果から、仮想通貨市場が各国ごとの規制された金融制度に依存しており、国家の統制が一定程度及ぶことが分かったと指摘。このため、現時点では、仮想通貨に対して各国が有効な規制措置を適用する余地はあると結論づけています。

そして、各国による仮想通貨の規制は、市場にとって必ずしも悪いニュースではなく、仮想通貨の法的地位が定義され、明確になるようなものであれば、市場は好感するだろうとしています。

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