仮想通貨業界に強大な影響力を持つとされる中国の大物投資家、李笑来(リー・シャオライ)氏が突然、仮想通貨を含むすべての投資をやめることを宣言しました。その理由は明らかにしていません。

「個人としては」すべての投資から撤退

李氏は2018年9月30日、中国最大の交流サイト(SNS)である「微博(ウェイボー)」への投稿で、「本日から私、李笑来は、個人としてはいかなるプロジェクトにも(それがブロックチェーンであれ、あるいは初期段階のものであれ)投資しません」と表明しました。

続けて李氏は、「私はこれまで数え切れないほどのプロジェクトに、自分が知らないうちに関与していることにされてきており、99%がそうだと言っても過言ではありません」とした上で、「(今後は)もし『李笑来』が何らかのプロジェクトに関わっていると書かれているのを見かけたなら、ただ黙殺してください」と呼びかけています。

ブロックチェーンの将来性は楽観視

さらに李氏は、これからの身の振り方については、数年間はゆっくりと過ごし、次の人生で何をしたいかをじっくり考えるが、現時点ではまだはっきりした考えを持っていないと述べています。

その上で、「私はまだ長期的にはブロックチェーンについて楽観的です」とも付け加え、投資からの撤退が仮想通貨の将来性を悲観したことによるものではない点を強調しています。

数万BTCのビットコインを保有か

李氏は1972年、中国・吉林省生まれ。北京に本拠を置く仮想通貨・ブロックチェーンのプロジェクト専門のベンチャーキャピタル「ビットファンド(BitFund)」の共同創設者です。ビットコインを中国で最も多く保有している「クジラ」(大口保有者)の一人で、保有量は数万BTCに上るとも言われています。

2018年9月に、中国・杭州市政府が出資する杭州グランドショアズ・ファンド(Hangzhou Grandshores Fund)が中国系シンガポール企業や日本の銀行と提携して円建てステーブルコインを発行する計画が発表されましたが、李氏は同ファンドの出資者でもあります。

市場に強大な影響力を持つ李氏の突然の引退宣言は、仮想通貨業界に大きな衝撃をもたらしています。李氏の引退を惜しむ声がある一方で、李氏がこれまでにさまざまな論議を呼び起こしてきた人物である点を指摘する向きもあります。

スキャンダルや問題発言も

2018年に入って、李氏は仲間のベンチャーキャピタル事業者から、投資ファンドで集めた3万BTCを超える資金をギャンブルなどにつぎ込み、出資者に還元していないとして「仮想通貨業界の腫瘍(しゅよう)」などと強く非難されています。こうしたスキャンダルを受けて、李氏は杭州のブロックチェーン基金の役員の座を追われたと伝えられています。

さらに、2018年7月には、李氏が仮想通貨業界の中心的なスタートアップ企業やプロジェクトの経営陣多数を呼びつけ、数々の中傷発言をしていたことが、ネット上に流出した録音音声から明らかになり、業界に論議を巻き起こしました。録音内容によると、李氏は仮想通貨NEOについて「愚かで無価値」、大手仮想通貨取引所バイナンス(Binance)については「詐欺まがい」、仮想通貨TRONの創設者ジャスティン・サン(Justin Sun)氏については「詐欺師」と罵倒しています。こうした中傷発言について、バイナンスの執行役員の一人は、李氏が間違った主張をすることで、ただ注目を集めたいだけだと切り捨てています。

このように李笑来氏は、仮想通貨業界に強大な影響力を持つ一方で、敵も多い人物だったようです。そうした同業界での居心地の悪さが、李氏に仮想通貨投資からの撤退を決断させる一因となった可能性もあります。

中国当局の仮想通貨取り締まり強化も一因か

さらに、中国政府が仮想通貨やICOに対する取り締まりを強化している点も李氏の撤退宣言の背景にあることが考えられます。中国当局は2017年9月に国内でのICOによる資金調達を全面禁止。2018年1月にはマイニング事業を禁止しています。最近では海外の仮想通貨取引所への国内からのアクセスを遮断するなど、締め付けをますます強めています。

もっとも、李氏は今回の撤退宣言の中で、「個人としては」という限定付きで、今後はいかなるプロジェクトにも投資しないと述べている点から、投資ファンドなどを通じた仮想通貨プロジェクトには今後も引き続き関わっていく可能性があるとの見方も出ています。

それでも、李氏が個人で保有している巨額の仮想通貨を手放した場合、市場に大きな影響を及ぼすことも考えられます。

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