世界のビットコイン開発者が集まって技術的課題の解決策を提案し合う国際会議「スケーリングビットコイン・ワークショップ(Scaling Bitcoin Workshop)」が、2018年10月6、7の両日、東京で開催されました。さまざまな発表の中で注目を集めたのは、ビットコインの従来の仕様を維持しながら大規模な改良が簡単にできるという「フォワード・ブロックス(Forward blocks)」の提案です。

「スケーリングビットコイン」とは

スケーリングビットコイン・ワークショップ」は、仮想通貨ビットコイン(BTC)のスケーラビリティー問題の解決策を話し合うため2015年に始まり、これまでにモントリオール、香港、ミラノ、米国のスタンフォードで開かれてきました。第5回となる今回は「Kaizen(改善)」をテーマに東京・港区の慶應義塾大三田キャンパスで開かれました。日本で開催されたのは初めてです。

スケーラビリティー問題とは、ビットコインのブロックチェーンで1ブロックのサイズが1MBに制限されているために、取引規模の拡大に伴って、取引処理の遅れや取引手数料の高騰を招いている問題のことです。

2017年にはこの問題への対処方法をめぐり、ブロックサイズを大きくするか、それともサイズは変更せずに「セグウィット(SegWit)」という技術を実装するかで開発陣が対立。結局、同年8月には、ビットコインは誕生以来初めて分裂し、セグウィット実装に反対する側は、ブロックサイズを8MBに拡大したビットコインキャッシュ(BCH)という仮想通貨を新たに立ち上げています。

新技術「フォワード・ブロックス」

第5回「スケーリングビットコイン・ワークショップ」では、多くの開発者、技術者によるビットコイン改良のためのさまざまな提案が発表されました。中でも注目を集めたのは「フォワード・ブロックス」と題する新提案で、ビットコインのこれまでの仕様との互換性を維持しながら、スケーラビリティー問題への対処をはじめとする大規模な変更が簡単にできるようになるというものです。

発表したのは、「ビットコイン・コア(Bitcoin Core)」と呼ばれる開発者の一人で、ブロックストリーム(Blockstream)社共同創立者のマーク・フリーデンバック(Mark Friedenbach)氏。同氏は以前は米航空宇宙局(NASA)で宇宙研究のためのアプリの開発に携わっていましたが、ビットコインの開発に専念するため、NASAを退職したという人物です。

フリーデンバック氏の発表した「フォワード・ブロックス」と題する提案は、ビットコインの従来のブロックチェーンだけでなく、よりブロックサイズの大きい「フォワード・ブロックチェーン」を追加して稼働させるというものです。

これにより、ビットコインを最大3584倍スケールアップすることができ、スケーラビリティー問題だけでなく、コンセンサスアルゴリズムである「プルーフ・オブ・ワーク(POW)」が抱える問題なども、「ハードフォーク」と呼ばれる従来との互換性をなくす仕様変更ではなく、「ソフトフォーク」によって解決できるとしています。ネットワークへの参加者も、端末のシステムをアップグレードしなくても、変更後のネットワークにこれまで通りアクセスできるとのことです。

「フォワード・ブロックス」はまた、将来のプロトコル拡張を考慮に入れた分散型台帳のフレームワークをもたらすとされています。

ビットコイン開発陣の間ではこれまで、スケーラビリティー問題に対処するにはハードフォークが不可避との認識でほぼ一致しており、どのような内容のハードフォークをいつ行うべきかが議論の中心となっていました。それだけに、従来との互換性を維持したままスケールアップをはじめとする大規模な変更を可能にするという今回の「フォワード・ブロックス」の提案は、画期的なものと言えます。

開発者の間では賛否両論

この「フォワード・ブロックス」の提案について、ビットコイン・コアの一人であるカリジョハン・アルム(Kari-Johan Alm)氏は、これが実際に使われるかどうかはまだ不透明だとしつつも、課題解決の「突破口」になると支持しています。

他方で批判的な声も挙がっています。「シノビモンキー(Shinobimonkey)」と名乗っている古くからのビットコイン開発者は「フォワード・ブロックス」を「アップグレードという名のネットワーク攻撃だ」と切り捨てた上、「スケーリングビットコイン」の会議についても「このイベントは、はらわたをえぐり出され、あざ笑われ、バスタブに沈められる必要がある」とツイートしています。

「スケーリングビットコイン」の発表内容は、以下の公式サイトで参照できます。
https://scalingbitcoin.org/

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