2018年9月にハッキングによる仮想通貨の巨額流出事件があった仮想通貨取引所Zaifの運営元、テックビューロ(本社・大阪市、朝山貴生最高経営責任者)が、仮想通貨交換業を廃業し、解散することが決まりました。仮想通貨取引所の事業はフィスコグループのフィスコ仮想通貨取引所に譲渡することになり、両社は2018年10月10日、事業譲渡の正式契約を締結しました。

フィスコ側の「リスク回避」でスキーム変更

テックビューロは事件を公表した9月20日時点では、盗難に遭った顧客資産約45億円分を補てんするため、フィスコグループから50億円の金融支援を受けるとともに過半数の取締役と監査役を受け入れ、同グループの傘下に入って再建を図る方針を表明していました。

しかし、当初は正式合意のめどとされていた9月中には合意ができず、交渉は難航していたもようです。

再建スキームの変更が生じた要因について、テックビューロは10月10日の発表で、「支援者側のリスク回避」「顧客保護のための迅速な実行の要請」などと説明しています。このことから、支援を予定していたフィスコ側がテックビューロの資産や経営状況を精査する中でリスク面の懸念を抱き、事業継続に難色を示したことがうかがえます。

事業譲渡の効力が発生するためには、法令に基づき、テックビューロの株主総会での特別決議による承認を得る必要があり、株主間契約に基づき、同社の大株主2名による事前承認も要求されます。

このため、今後のスケジュールとしては、10月19日にテックビューロの株主総会が開かれ、事業譲渡について承認を得た後、10月22日に公告し、それから30日後の11月22日に事業譲渡が実行される予定です。事業譲渡手続きの完了後、テックビューロは仮想通貨交換業の登録を廃止した上で解散するとしています。

Zaif利用者の契約関係はフィスコ側が承継

両社の事業譲渡契約には、Zaifの顧客との利用契約も承継対象として含まれています。このため、Zaifのユーザーは一定の条件の下で、フィスコ仮想通貨取引所のユーザーとなります。

今回の事業譲渡契約は、(1)顧客のテックビューロに対する預託した仮想通貨の返還を求める権利(2)消失しなかった残存する仮想通貨-についても、テックビューロからフィスコ仮想通貨取引所に引き継がれる内容となっています。フィスコ側は既に消失した顧客資産を補償するための財源の調達を終えており、事業譲渡が実行されれば顧客資産は保護される見通しです。

承継には顧客の同意が必要

ただし、事業譲渡によりテックビューロと顧客の間の契約関係がフィスコ仮想通貨取引所に承継されるためには、個別の顧客による承諾が必要となっています。このため、両社は改めて顧客に対して事業譲渡を告知し、承諾手続きについても案内するとしています。

承継に承諾した顧客との契約関係はフィスコ仮想通貨取引所に承継される一方、承諾しなかった顧客との契約関係はテックビューロとの間に残ることになります。しかし、テックビューロには顧客資産補償の原資がなく、会社清算の手続きに入るため、被害の補償を求める顧客は事実上、フィスコ仮想取引所との契約関係に同意する以外に選択の余地はないことになります。

BTCなどの入出金再開は11月22日以降

不正流出した3種類の仮想通貨のうち、ビットコイン(BTC)およびビットコインキャッシュ(BCH)については、消失した数量の仮想通貨の調達をフィスコ側が既に完了しているとのことです。

Zaifでは両仮想通貨の入出金を停止していますが、再開予定については事業譲渡の実行日である11月22日以降になるとしつつも、具体的な再開日はまだ明らかにされていません。

モナコインは4割を法定通貨で補償

一方、消失した仮想通貨のうちモナコイン(MONA)については、市場流通量が少なく消失分すべてを調達するのが困難であることを理由に、各顧客資産の消失分のうち約6割をモナコインで返還し、残り約4割は価値相当額の法定通貨の円で補償するとしています。補償金額は1MONA=144.548円で、このレートは10月9日午前9時時点のビットフライヤーとビットバンクの両仮想通貨取引所でのレートの中間値とされています。

テックビューロはまた、モナコインについてはZaifでの取引を10月10日に中止しています。取引再開は11月22日にフィスコへの事業が譲渡された後、取引所運営が再開されてからになるとしています。

被害に遭った顧客に対するモナコインの補償時期についても、同様にフィスコ仮想通貨取引所による運営が開始された後になるとしており、具体的な日付は示していません。

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