「クジラ(whale)」と呼ばれるビットコイン(BTC)の大口保有者たちは、一般的な仮想通貨保有者とは異質な取引傾向を持っており、市場を安定化させる有益な存在となっている可能性が高いことが、調査会社チェイナリシス(Chainalysis)の調査分析報告から分かりました。投資家の間ではこれまで、「クジラ」が市場で巨大な支配力を持っていると考えられていましたが、実際は必ずしもそうではないことを証明する内容となっています。

計100万BTCを持つ32の「クジラ」を分析

チェイナリシスの調査結果によると、「クジラ」の過半数はほとんどビットコインの売買を行っておらず、市場にはあまり影響力を及ぼしていない一方、取引に参加している「クジラ」たちも価格下落時にビットコインを買い支える傾向があり、市場の安定化要因となっていることが分かりました。また、これらの大口保有者は、売買が市場に影響を及ぼしにくい相対取引(OTC)のプラットフォームを利用する傾向があることも判明しました。

調査では、最大級のビットコイン保有量を持つ32のウォレットについて分析。これらのウォレットの総保有量は2018年8月現在で約100万BTC(約63億ドル)ありますが、いずれも仮想通貨取引所には置かれていません。

特性ごとに4グループに分類

チェイナリシスは、これらの32の大口保有者のウォレットを、それぞれの特性に基づいて、「トレーダー」「マイナー」「鍵をなくしたクジラ」「犯罪者」の4グループに分類しています。

これらのうち、第1のグループ「トレーダー」のウォレットは9つあり、総資産保有量は33万2000BTC(約20億ドル)で、「クジラ」全体の3分の1のシェアを占めています。この「トレーダー」たちの多くは、ビットコイン取引が市場で盛んに行われるようになった2017年からビットコインを保有しています。

第2のグループ「マイナー」は、「トレーダー」より前から仮想通貨市場に参加していました。このグループのウォレットは15あり、ビットコインの総保有量は33万2000BTC(約20億ドル)で、「トレーダー」にほぼ匹敵しています。この「マイナー」は2016年から17年にかけて市場に参入しており、おそらく極めて富裕であるとみられています。

第3のグループ「鍵をなくしたクジラ」は、ビットコインを極めて初期の段階から保有しているグループです。総保有量は約21万2000BTC(約13億ドル)に上っていますが、2011年以降、これらのグループのアカウントでは取引が行われていません。これは、秘密鍵を紛失してウォレットにアクセスできなくなったためとされています。

最後の第4のグループは「犯罪者」。このグループには3つのウォレットがあり、総保有量は12万5000BTC(約7億9000万ドル)です。これらのウォレットのうち2つは「シルクロード(Silk Road)」という違法な物品を取引するダークネット市場につながっており、もう1つはマネーロンダリングへの関与が疑われています。

「クジラ」の3分の2は市場で売り買いせず

注目されるのは、「クジラ」全体の中で、活発に売り買いをしているのは、3分の1を占める「トレーダー」グループだけだったということです。

残り3分の2のシェアを持つ他のグループでは、ウォレットにアクセスできなくなっている「鍵をなくしたクジラ」はもちろん、「マイナー」「犯罪者」の両グループもほとんど取引ををしていませんでした。

「トレーダー」が価格下落時に買い支え

「トレーダー」のグループは、2017年12月にビットコイン価格が最高値から急反落に転じた際や、価格低迷が続く2018年に入ってからのほとんどの時期に、売りに走るどころか、逆にビットコインを購入していました。また、2016年から17年にかけての間も、大量の売りは行っていませんでした。

このことから、「トレーダー」のグループはビットコインを価格下落時にもおおむね買い支えており、一部で懸念されていたような価格崩壊の引き金になるどころか、逆に市場を下支えし、安定化させる働きをしていたことが分かりました。

仮想通貨の投資家たちはこれまで長いこと、「クジラ」と呼ばれる少数の大口保有者が仮想通貨価格に圧倒的な支配力を及ぼし得る状況を恐れていました。2018年9月にビットコイン価格が急落した際には、「クジラ」たちが大量の仮想通貨を売りに出すとの観測がネット上で拡散したことが価格下落の引き金になったとも伝えられています。

今回のチェイナリシスの調査報告は、そうした懸念を打ち消すもので、仮想通貨の投資家にとってはひとつの安心材料になりそうです。

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