仮想通貨イーサリアム(ETH)の次期大型アップグレード「コンスタンティノープル(Constantinople)」のテストネットによる試験運用が2018年10月14日に始まりました。順調に行けば約1カ月程度のテスト期間を経て、11月にはメインネットで稼働開始する見通しでしたが、テスト初日に取引が記録されなくなるトラブルが発生しており、正式なアップグレードがいつ実施されるかは予断を許しません。

「コンスタンティノープル」とは

今回の大型アップグレード「コンスタンティノープル」では、これまでのシステムと互換性のない5つのイーサリアム改善提案(EIP)が採用され、既にシステム変更のコーディングを完了しています。

採用されたEIPのうちの4つは、情報処理方式効率の向上(EIP145)、大規模コード実行の最適化(EIP1052)、スマートコントラクトのデータストレージ価格構造の公正化(EIP1283)、スケーラビリティー問題解決に向けたコード編集(EIP1014)という内容で、エンドユーザーにはあまり影響を与えない軽微な技術的改善策です。残り1つのEIPは、イーサリアムのマイニング報酬を減額するという「EIP1234」で、その採用の是非について開発陣やマイニングコミュニティーの間で論議を呼んでいました。

「ディフィカルティー・ボム」を1年延期

「EIP1234」は、マイニング報酬を引き下げる一方、「ディフィカルティー・ボム」として知られる、マイニング難度を高める機能の発動を1年間遅らせる内容となっています。

イーサリアムでは現在、コンセンサスアルゴリズムに「プルーフ・オブ・ワーク(POW)」という仕組みを使っていますが、最終的には「プルーフ・オブ・ステーク(POS)」に移行することになっています。

POWは、取引を記録するブロックを生成するためには複雑な計算が必要で、最も早く計算をこなした者にマイニング報酬が与えられるシステムです。これに対し、POSは、ETHを多く保有している者が報酬を得られるシステムで、これは、仮想通貨を多く保有している者ほど、その仮想通貨のシステムに害をなす不正行為はしないだろうとの考え方に基づいています。POWでは世界中で多数のコンピューターを使ってマイニングが行われ、多大な電力を消費するのに比べ、POSはより環境負荷が低いとされています。

イーサリアムのシステムは、POWからPOSへの移行に向け、一定の期間がたつとPOWに基づくマイニングが困難になる「ディフィカルティー・ボム」という時限爆弾のような機能を内蔵しています。しかし、POSへ移行する「キャスパー(Casper)」と呼ばれるアップグレードの実施が当初の予定よりも遅れ、当面は引き続きPOWのシステムを使う必要があるため、時限爆弾の発動を1年間遅らせることになったものです。

マイニング報酬を3ETHから2ETHに引き下げ

ただ、マイニング用のコンピューターの計算能力が向上しているため、難度を上げない場合はマイニングの速度も速くなり、その事業者が得られる報酬も今後多くなっていくことが予想されます。そこで対策として、1ブロック生成あたりのマイニング報酬額を従来の3ETHから2ETHに引き下げることになりました。

イーサリアムのマイニングコミュニティーからは、このマイニング報酬引き下げについて、中央集権化をもたらしかねないとして反対する声が上がっていました。

ビットメインのイーサリアム用ASICへの懸念

こうした反対論の背景には、マイニングマシン製造最大手である中国のビットメイン(Bitmain)社がイーサリアム採掘専用のASICマシンを開発しており、近く発売される見通しとなっていることへの懸念があります。

イーサリアムではこれまで、マイニングにASICが使えないよう対策が取られていました。ところが、ビットメインがそれを乗り越えてイーサリアム対応の高性能ASICマシンを発売すれば、それらの高価な機器を導入した大手事業者がイーサリアムのマイニングに参入してくることが予想されます。そうなれば、パソコンにグラフィックボードを装着してマイニングを行ってきた個人のマイナーたちが排除され、一部事業者によるマイニングの独占が起こりかねないとの懸念が広がっているのです。

テスト初日にブロック生成不能のトラブル

「コンスタンティノープル」へのアップグレードは当初、10月8日に実施される見通しと発表されていました。しかし、「ロプステン(Ropsten)」というテストネットでの試験運用が始まったのは10月14日で、開発陣は、メインネットでの正式始動の予定日はまだ決まっていないとしています。

昨年実施された前回アップグレード「ビザンティウム(Byzantium)」では、「ロプステン」での試験運用開始からメインネットでのアップグレード実施までに約1カ月間を要しています。このため、今回の「コンスタンティノープル」のメインネットでのアップグレード実施も11月以降となる見通しです。

しかも、「ロプステン」での試験運用が始まった10月14日には、ブロックが生成されなくなるトラブルが発生しています。開発陣はマイナーの欠乏によるものだと説明していますが、より詳しい原因究明と対策のために正式アップグレードがさらに遅れることもありそうです。

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