2018年10月15日の仮想通貨市場では、ビットコイン(BTC)をはじめとする多くの主要仮想通貨の価格が上昇する中で、テザー(USDT)の価格が急落して一時は1USDT=0.90ドルを割り込み、米ドルと等価のステーブルコインとは言い難い状況となりました。発行元のテザー社めぐる疑惑の再燃や、同社と関係の深い仮想通貨取引所ビットフィネックス(BitFinex)の取引銀行に関する信用不安が原因と見られています。

テザーからの乗り換えでビットコイン価格急騰

ビットコインをはじめとする仮想通貨のほとんどは価格変動が激しい中にあって、テザーは価値の安定した米ドル連動のステーブルコインの代表格とも言える存在で、発行元であるテザー社は公式サイトで「1USDTは常に1米ドルと等価である」と保証しています。しかし、10月15日の市場では、一時1USDT=0.90ドルを割り込むまで下落。その後やや持ち直しましたが、発行元の保証とはかけ離れた状況となりました。

テザーを売って他のドル連動ステーブルコインやビットコインを買う動きも目立ち、ビットコイン価格はアジアの市場で一時1BTC=7800ドルの水準にまで上昇しました。

バイナンスではテザーの引き出しが一時不能に

こうした中、大手仮想通貨取引所バイナンスでは10月15日午前、2度にわたりテザーの引き出しができなくなりました。

仮想通貨情報が集まるメッセンジャーアプリ「テレグラム」にあるバイナンスの公式チャンネルでは、引き出し停止の理由は「テザーのネットワークの過密」によるものと説明されています。

これより前に、バイナンスがテザーの上場を廃止するとのうわさも出ていましたが、バイナンスの最高経営責任者cz氏は、このうわさを否定しています。なお、バイナンスはテザーを7億6850万USDT保有する最大の保有者で、テザー社の保有量4億8670万USDTを大きく上回っています。

価格下落の直前にテザーの流通量が急減

一方で、発行元のテザー社が価格急落の直前に2度にわたりテザーの流通量を計3億USDT減らしていたことも分かり、さまざまな憶測を呼んでいます。

テザー社はビットフィネックスから、10月9日に1億USDT、価格急落の前日の10月14日には2億USDTの送金を受けていました。これにより、最も多いときで約29億USDTだったテザーの流通量は、現在約25億USDTに減っています。

テザー社の疑惑

こうした価格下落の原因と見られているのが、発行元テザー社をめぐる疑惑の再燃と、ビットフィネックスの経営不振のうわさです。

テザーの価値の裏付けとされているのは、準備金の存在です。発行元のテザー社は、1USDTにつき1ドルの準備金を担保として保有していると表明しています。しかし、まだその準備金の保有を証明する決定的な証拠を公開していません。

また、テザー社と仮想通貨取引所ビットフィネックスとの関係についても疑惑が出ています。両社は同じ経営陣によって運営されており、ビットフィネックスでテザーを使ったビットコインの価格操作が行われているとする調査報告なども出ていました。

さらに、最近では、ビットフィネックスが債務支払い不能の状態に陥っているとのうわさも流れていました。

ビットフィネックス社は2018年10月7日に声明を発表、「ビットフィネックスは支払い不能状態ではなく、絶えず続いているメディアの記事によってもこれは変わることがない」と強調し、「法定通貨と仮想通貨の両方とも引き出しは正常に機能している。認証を受けたビットフィネックスのユーザーは自由にユーロ、日本円、ポンド、米ドルを引き出すことができる」と保証しています。ただ、引き出しに時間がかかることは認め、「私たちは引き続き、法定通貨の預金および引き出しに関連する待ち時間を最小化するために最大限のことをする」としています。

米通信社ブルームバーグは、米商品先物取引委員会(CFTC)が2017年12月にビットフィネックス、テザー両社に召喚状を送ったと報じていました。この報道に対し、両社は2018年1月、「(当局からの)そうした要請についてはコメントしないのが私たちの方針である」とする声明を発表しています。

取引量は全仮想通貨の中で第2位

仮想通貨テザーの時価総額は全仮想通貨の中で9位ですが、取引量はビットコインに次ぐ第2位となっており、仮想通貨市場ではステーブルコインの代表格として大きな役割を担っています。

今後、もし当局がテザー社について何らかの違法行為の証拠を発見したり、準備金の不足が露呈するなどの事態になれば、テザーはすぐに価値がなくなる恐れもあります。ただ、今回のテザーの信用危機が今後も続くかどうかがはっきりするまでには、まだ時間を要しそうです。

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