マイニングマシン製造の世界最大手、中国のビットメイン(Bitmain)社は2018年10月22日、同社の既存製品で採掘性能を飛躍的に向上させる「AsicBoost」機能を使えるようにソフトウェアをアップデートすると発表しました。「AsicBoost」は同社製品の一部にハードウェアレベルではもともと搭載されているものですが、同社はこれまで、この機能を使えないようにソフトウェアで制限していました。

「AsicBoost」とは?

「AsicBoost」機能は、仮想通貨ビットコイン(BTC)のマイニング効率を20%向上させるといわれており、ビットメイン社製マイニングマシンのうち、「BM1387」チップを搭載した製品には最初から実装されていたものです。しかし、同社はこれまで、特許権に抵触するかどうかが不明なことを理由に、同機能を使用不能にしていました。

ビットメイン社は10月22日の発表で、今回リリースする最新版のファームウェアで「AsicBoost」機能を「公然と」サポートすると宣言。テストネットでの試験運用の結果、マイニング効率が改善することを確認済みだとした上。この「AsicBoost」機能が使えるようになったことにより、マイニングマシンの計算速度が上昇する一方でエネルギー効率も改善され、ビットコイン(BTC)の採掘を効率的に行えるとしています。

「AsicBoost」を公式サポートする最新版ファームウェアは、10月21日に公開された「Antminer S9」用に続き、「Antminer」シリーズの他の製品「R4」「S9i」「S9j」「T9」「T9 +」用のものも、1週間以内に公開される予定です。

「特許権侵害はない」と表明

今回の発表で同社は、以前は「AsicBoost」機能を使用可能にすることは予定していなかったものの、法的な検討を重ねた結果、現在のところ特許権の侵害はないと判断し、同機能のサポートに踏み切ったと説明しています。

「AsicBoost」と呼ばれる技術は、2014年11月にティモ・ハンク(Timo Hanke)、セルジオ・デミアン・ラーナー(Sergio Demian Lerner)という2人の技術者により特許申請されています。

しかし、ビットメイン社は今回、「さまざまな法的見解に基づき、私たちは『AsicBoost』について特許権の侵害はないと確信している」と表明。「『AsicBoost』技術について排他的権利を持つ者はなく、すべてのマイナーたちはこの技術を使うかどうかを自分自身で選択できる」と宣言しています。

開発者から「アルゴリズムの欠陥を悪用」との批判も

「AsicBoost」をめぐっては、ソフトウェアの特許をめぐる問題以外にも、これまでさまざまな論議を呼んでいました。

ビットメイン社は当初、この機能の実装を公にしていませんでしたが、2017年4月、仮想通貨のコミュニティーで、同社が「AsicBoost」機能をマイニングマシンに密かに搭載し始めているとの情報が流れました。

「ビットコイン・コア」と呼ばれるビットコインの開発者たちは、「AsicBoost」機能はビットコインの「プルーフ・オブ・ワーク(POW)」アルゴリズムの欠陥を悪用したもので、ネットワークに害をなす恐れのある不正行為であると警告していました。

こうした批判に対し、ビットメイン社は2017年4月に発表した声明では、同社製マイニングマシンに「AsicBoost」機能が実装されていることを認めた上で、この機能を使用可能にする予定はないとしていました。

しかし今回の発表でビットメイン社は、「AsicBoost」が「ビットコインのプロトコルに対していかなる悪影響も及ぼすものではない」と断言、ビットコイン開発陣からの批判を退けています。

既存ハードウェアの競争力維持が目的

ビットメイン社は、一転して「AsicBoost」の使用解禁に踏み切った理由について、「仮想通貨のマイニング技術が急激に進化、革新、改善を続けており、これに伴いマイニングマシンのハードウェアの価値が急激に低下していく中で、『AsicBoost』を使用することにより、顧客が保有する既存マシンの性能が向上するとともに、当社製マイニングマシンが今後も業界標準であり続けることができる」と説明しています。

マイニングマシン業界はこれまでビットメインによるほぼ1社独占に近い状況でしたが、最近になって日本製をはじめとする高性能の競合機種が登場し始めており、今回の「AsicBoost」解禁は、こうしたライバルに対抗する狙いがあるとみられます。

同社はまた、この技術を使えば、環境への負荷が指摘されている仮想通貨マイニングの省エネにつながり、コストも削減できることから、ビットコインのネットワークがこれまでより強固なものになると主張しています。

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