テザー社は2018年10月25日、同社が発行する仮想通貨テザー(USDT)のうち5億USDTを「破壊」したと発表しました。同社はその理由を明らかにしていませんが、最近のテザーの信用不安に関連した動きとみられています。テザーの流通量は多いときで約29億USDTありましたが、現在は19億2000万USDTに減っています。

「テザー・トレジャリー」保管の5億USDTを「破壊」

今回「破壊」された5億USDTのテザーは、テザー社の管理する「テザー・トレジャリー」と呼ばれるウォレットに保管され、流通市場からは既に引き揚げられていたものです。このウォレットには過去数週間で莫大な量のテザーが流入しており、とりわけ、テザーの価格が下落した10月中旬から、この動きが加速していました。

仮想通貨テザーは、発行元のテザー社が1USDT=1ドルの対ドル固定価格を保証しているステーブルコインですが、10月15日にはこの価格水準から大幅に下落し、一時は1USDT=0.8ドル台にまで落ち込みました。その後やや持ち直しましたが、10月27日時点でも0.97ドル台と、依然として1USDT=1ドルの水準には回復していません。

このような価格下落は、発行元のテザー社の準備金をめぐる疑惑が再燃していることや、テザー社と経営陣が同じで関係の深い仮想通貨取引所ビットフィネックス(Bitfinex)の経営危機のうわさなどが原因と見られています。

仮想通貨テザーの価値の裏付けとされているのは、準備金の存在です。発行元のテザー社は、1USDTにつき1ドルの準備金を担保として保有していると表明しています。しかし、まだその準備金の保有を証明する決定的な証拠を公開していません。

また、過去にテザーが発行された直後にビットコインが値上がりしているとして、仮想通貨取引所ビットフィネックスでテザーを使ったビットコインの価格操作が行われている疑いがあると指摘する調査報告も出ていました。

さらに、最近では、ビットフィネックスが債務支払い不能の状態に陥っているとのうわさも流れていました。これに対しビットフィネックス社は2018年10月7日、「ビットフィネックスは支払い不能状態ではなく、絶えず続いているメディアの記事によってもこれは変わることがない」「法定通貨と仮想通貨の両方とも引き出しは正常に機能している」との声明を発表しましたが、その後、法定通貨の入金を停止したことが報じられ、引き出しにもなかなか応じられないとの苦情が相次いでいました。

テザーの市場流通量が3割減

価格下落前日の10月14日から同23日にかけては、ビットフィネックスのウォレットから「テザー・トレジャリー」に6億8000万USDTが移され、流通しなくなりました。これにより、最も多いときで約29億USDTだったテザーの市場流通量は、現在約19億2000万USDTと、3割以上も減っています。

一方で、9月初め以降、ビットフィネックスのコールドウォレットのビットコイン保有量は約10万BTC減少しています。これについては、ビットフィネックスがテザーを市場から引き揚げるためにビットコインを売却しているためではないか、あるいは、テザーを下支えして対ドル連動価格を取り戻すためだとか、ビットフィネックスがテザーのビジネスから完全に撤退しようとしているのではないかなど、さまざまな憶測が出ていました。

テザー社はこれ以上の「破壊」は否定

ビットフィネックスのスポークスマンであるカスパー・ラズムッセン(Kasper Rasmussen)氏は、ビットフィネックスとテザー社の両社が1USDT=1ドルでのテザーの買い戻しを保証していると強調した上、今回のテザーの破壊については「対ドル連動の防衛のため行われたものではない」と述べ、テザー社が意図的にテザーの流通量を縮小しているものでもないとしています。

ラムズムッセン氏は、仮想通貨テザーは「その流通量がビットフィネックスあるいはテザー社の運営するのに必要な量を超えた際には」買い戻されることになっていると指摘し、破壊されたテザーのほとんどがビットフィネックスから移転されたものである理由については、「ビットフィネックスがテザー社の主要な顧客の一つであるためだ」としています。

一方、テザー社は10月25日の発表で、「テザー・トレジャリー」のアカウントに保管されている仮想通貨テザーのすべてを破壊するわけではなく、同アカウントには約4億6600万USDTが「将来のUSDTの発行のための準備として」残されているとしています。

テザー社はまた、仮想通貨テザーのビットフィネックスから「テザー・トレジャリー」への移転については、ホワイトペーパーに記載されている「買い戻し」であるとしていますが、今回の「破壊」の理由については明らかにしていません。

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