北朝鮮が詐欺的な仮想通貨プロジェクトに関与している可能性があるとする調査報告が、米情報セキュリティー会社レコーデッド・フューチャー(Recorded Future)から公表されました。同報告は、北朝鮮が経済制裁の影響を回避するために仮想通貨を活用していると指摘しています。

仮想通貨発行の可能性が新たに判明

2018年10月25日に公表されたレコーデッド・フューチャーの最新の調査報告では、北朝鮮が昨年に続きビットコインとモネロのマイニングを行っているとされています。調査対象期間である2018年3月から8月までの採掘量は前年同期と変わらず、ハッシュレートなどは特定できていませんが、数台程度のマイニングマシンを使った小規模なものとみられています。

今回の調査報告で昨年に比べて劇的な変化があったのは、北朝鮮が仮想通貨の発行に関与している可能性があることが浮上した点です。

詐欺コインの疑いが強い「ホールド」

調査報告によると、北朝鮮が関与している可能性のある詐欺的な仮想通貨のひとつは、「ホールド(HOLD)」と呼ばれるものです。

「ホールド」は、以前は「インターステラ(Interstellar)」「ステラ(Stellar)」という名称で知られていたものです。最初のうちは利益を生み出していたため、多くの投資家から資金を集めることに成功。いくつかの仮想通貨取引所で上場と上場廃止を繰り返した後、2018年には名称が「フーズ(HUZU)」に変更されていますが、投資家たちはこの仮想通貨を売却できない状態となっています。

「マリーン・チェーン」はシンガポール海運関係者が協力

北朝鮮が関与している疑いがあるもう一つの仮想通貨プロジェクトは「マリーン・チェーン(Marine Chain)」と呼ばれるものです。マリーン・チェーンは、海洋船舶をトークン化した、資産の裏付けのある仮想通貨プロジェクトという触れ込みで資金を集めました。

調査報告によると、マリーン・チェーンのIPアドレスは3回変わっていますが、2018年4月9日以降のIPアドレスは、仮想通貨ニュースサイト「オールクリプトトーク(allcryptotalk)」と同じものです。このサイトの記事更新は2015年6月で止まり、「バイナリー・ティルト(Binary Tilt)」というバイナリーオプション取引会社に使われていました。バイナリー・ティルトをめぐっては数万~数十万ドルの被害を受けたとの訴えが相次ぎ、カナダのオンタリオ州政府は同社を詐欺業者と断定しています。

マリーン・チェーンの運営元であるマリーン・チェーン・プラットフォーム社の顧問として、ヒョンモン・チョイ(HyoMong Choi)という人物の名前が記載されています。チョイ氏は、朝鮮(Korea)の仮想通貨投資家、イニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)アドバイザー、エンジェル投資家で、シンガポール国立大学に通っていたと自称しています。チョイ氏のフェイスブックページのプロフィル写真は韓国企業の従業員の写真を盗用したものでした。

マリーン・チェーンの最高経営責任者(CEO)とされているキャプテン・ジョナサン・フーン・カー・ケオン(Captain Johathan Foong Kah Keong)という人物は、シンガポールで何十年にもわたり海運業界で活動してきたと自称しており、これまでに数々のイベントでの講演で、マリーン・チェーンの創設者であると公言しています。

キャプテン・フーンは、少なくとも2013年以降、北朝鮮に協力しているシンガポールの複数の企業と関係しており、北朝鮮船舶が制裁を逃れて航行・入港できるように他国の船籍に偽装させる活動に関与していることが分かっています。

北朝鮮はコインチェックへのハッキングにも関与か

一方、サイバーセキュリティー団体「グループーIB」が10月19日に公表した調査報告によると、北朝鮮のハッカーグループ「ラザルス(Lazarus)」が日本のコインチェックを含む仮想通貨取引所へのハッキングにより、5億7100万ドル相当の仮想通貨を盗み出したとされています。

同報告によると、2017年1月以降の仮想通貨取引所に対するハッキング攻撃は14件発生しており、このうち犯行グループが判明している5件はすべて「ラザルス」によるものでした。その中には2018年1月に日本の仮想通貨取引所コインチェックが580億円相当の仮想通貨を盗まれた事件も含まれています。

14件のハッキングによる仮想通貨取引所からの不正流出額は総額8億8200万ドル相当に上っていますが、うち「ラザルス」の犯行と特定されたものは5億7100万ドル相当と半分以上を占めています。その攻撃手法は、マルウェアを仕込んだメールを仮想通貨取引所の従業員に送りつけてローカルネットワークに侵入するという伝統的なやり方が中心になっています。

グループーIBの報告では、仮想通貨取引所に対するハッキング攻撃の件数は今後も増加すると予測しており、それは仮想通貨取引所のハッキングに対する防御が金融機関に比べて甘いことを犯行グループが知ったためだと指摘しています。

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