2018年1月のハッキング事件を受け、大半のサービスを停止していた日本の大手仮想通貨取引所コインチェック(本社・東京都渋谷区、勝屋敏彦社長)が、10月30日から新規口座開設や一部仮想通貨購入・取引のサービスを再開したと、同日発表しました。

1月のハッキング事件で大半のサービス停止

コインチェック株式会社は、2018年1月26日に発生した不正アクセスによる仮想通貨NEMの580億円相当の流出事件の後、金融庁から業務改善命令を受け、顧客資産保護と不正送金の原因究明のため、大半のサービスを停止していました。今回の新規口座開設などのサービス再開は、事件から約9カ月ぶりとなります。

同社が10月30日から再開したサービスは以下の通りです。

  1. 新規口座開設
  2. ビットコイン(BTC)、イーサリアムクラシック(ETC)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)の入金
  3. イーサリアムクラシック、ライトコイン、ビットコインキャッシュの取引

ただし、新規口座開設は対象が日本国内居住の顧客に限定されています。

また、入金・取引の再開に際して、すべての顧客は入金の際は入金アドレスの再発行手続きをする必要があり、旧入金アドレスに送金された場合、残高への反映や仮想通貨の返還はできないとされています。

今回再開されたサービスのほか、コインチェックで現在可能な取引は、以下の通りとなります。

  • 仮想通貨の出金、売却(全取扱仮想通貨対象)
  • 日本円の入金、出金
  • レバレッジ取引における決済、証拠金の入金 (ただし、新規の取引は引き続き停止中)
  • 貸し仮想通貨サービス(全取扱仮想通貨対象)

コインチェックではまた、現在停止中の以下のサービスについても、安全性の確認を行い、準備が整い次第、順次再開していくとしています。

  • 仮想通貨の入金、購入(ETH、XEM、LSK、XRP、FCT)
  • レバレッジ新規建取引
  • アフィリエイト
  • 日本円コンビニ入金
  • 日本円クイック入金(Pay-easy)
  • Coincheck Payment
  • Coincheckでんき

仮想通貨交換業登録の見通しは示さず

日本では2017年4月に施行された改正資金決済法により、仮想通貨交換業を行うには金融庁への登録が義務づけられています。2018年にコインチェックがハッキングに遭った時点では、同社はまだ登録が承認されておらず、暫定的に営業が認められる「みなし仮想通貨交換業者」でした。

同社は現在も金融庁から登録の承認が得られておらず、依然として「みなし業者」のままです。今回の一部サービス再開発表に当たっても、登録の見通しについては触れられていません。

ただ、同社は、今回の一部サービス再開の発表で、以下のように業務改善策を進めてきたと強調しています。

  1. 新たな経営体制のもとでのリスク管理態勢の強化
    2018年4月16日付でマネックスグループ株式会社の傘下となり、同日付で代表取締役に着任した勝屋敏彦氏(兼マネックスグループ株式会社常務執行役)らの新経営陣により、監督と執行の分離を進め、新たな経営体制をスタートしている。十分な顧客保護態勢を整えるべく、組織・人員の増強も同時に行っており、新しい部門・部署の設置と同時に、社員数を2018年1月に比較して約2倍の250名程度まで増員した(2018年9月末時点)。
  2. ビジネス部門における取り組み
    ・取扱仮想通貨の選定基準見直し…顧客保護やAML/CFT(マネーロンダリング防止・テロ資金供与対策)の観点から、取り扱い仮想通貨選定基準の見直しを行い、2018年6月には取り扱いが不適切と判断した4通貨(REP・DASH・ZEC・XMR)を廃止した。取り扱い仮想通貨選定基準の重要性に鑑み、新規取り扱い仮想通貨の技術的特徴などをリサーチし、リスク評価や選定をする専任部署を新設した。今後は、社内で設定した選定基準に従い、顧客が安心して取引できる新規取り扱い仮想通貨の選定を行っていく。
    ・システムセキュリティー態勢の強化…金融系システムセキュリティー対応、サイバー攻撃や情報漏えい等のサイバーセキュリティー対応に知見のある外部専門家の協力のもと、インターネットを通じた標的型攻撃による被害を避けるため、ネットワーク分離を強化するなどシステムの再構築を行い、全通貨に関するコールドウォレット化も完了した。また、システムセキュリティー態勢を全体的に統括するサイバーセキュリティ推進部を設置すると同時に、インシデント発生時の対応強化を目的として、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を構築し、稼働している。役員、部室長、社員は、インシデントが発生した際に、利用者をはじめとしたステークホルダーへの影響を最小限にとどめるため、全員が継続的にBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)に取り組んでいる。
  3. リスク管理・コンプライアンス部門における取り組み
    ・リスク委員会の設置…全社のリスクを把握し、各部門のアクションプランを策定・モニタリングするリスク委員会を新設。同委員会は、取締役会と連携することで、リスク管理態勢の強化に努める。
    ・AML/CFT、疑わしい取引に対する監視強化…カスタマーサポート部門を人員・拠点ともに拡充し、口座開設時の本人確認厳格化や、重点管理対象顧客の基準を設け、疑わしい取引を継続的に監視・報告していく体制、そして十分な顧客サポートを行える体制を整備した。
    ・仮想通貨インサイダー取引に関する社内ルールの策定…役員および従業員は、仮想通貨交換業に従事する者として、仮想通貨の市場の公正性、透明性を図るとともに利用者の信頼を維持、向上させるために、業務上取得する仮想通貨インサイダー情報(その価格に著しい影響を及ぼす可能性のある情報であって、公開されていない情報)を利用して、不公正な取引をしないことを社内規程にて定め、コンプライアンス強化に努める。
  4. 内部管理・内部監査部門における取り組み
    業務推進や利益拡大といった業績面にとらわれず、法令等順守や適正な業務運営を確保するため、内部管理部門および内部監査部門の人員体制の増強・権限強化などの取り組みを行った。

コインチェックのサービス再開の影響

日本の仮想通貨取引所では、コインチェックのほか、2018年6月には金融庁の業務改善命令を受けた最大手のビットフライヤーが、そして同年9月にはハッキング事件のあったZaifが、それぞれ新規口座開設の受け付けを停止しており、大手3社で新規取引ができなくなる異常事態が続いていました。

こうした中で、大手の一角であるコインチェックが新規口座開設の受付と一部仮想通貨取引を再開したことは、低迷を続ける日本の仮想通貨市場に転機をもたらし得る明るいニュースといえそうです。

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