イーサリアム財団(The Ethereum Foundation)が、イーサリアムの「プルーフ・オブ・ステーク(POS)」への移行に対応したASIC(特定用途向け集積回路)マシンの開発を計画していることが、2018年11月1日に公表されました。これは、イーサリアムの最終大型アップデート「セレニティー(Serenity)」で導入される新たなブロックチェーン「ビーコン・チェーン(beacon chain)」での取引承認作業に使用されるもので、開発はオープンソース方式で行われる予定です。

ファイルコインと共同開発

イーサリアム財団は、イーサリアムの考案者ビタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏によって開発資金調達のため2014年にスイスで設立され、イーサリアム・プラットフォームの普及促進や開発基盤作りの活動を行っている非営利団体です。

同財団の研究者であるジャスティン・ドレーク(Justin Drake)氏は11月1日、チェコのプラハで開催中の開発者会議「Devcon 4」で、イーサリアムへの導入が予定されている新技術「ビーコン・チェーン(beacon chain)」に対応した特定用途向け集積回路(ASIC)の開発構想を明らかにしました。開発はブロックチェーン用データストレージネットワーク開発会社のファイルコイン(Filecoin)と共同で行うとしています。

「検証可能な遅延機能(VDF)」に使用

イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムは、最後の大型アップデート「セレニティー」で、従来の「プルーフ・オブ・ワーク(POW)」から、「プルーフ・オブ・ステーク(POS)」へ完全移行することになっています。

ブテリン氏が「Devcon 4」で公表した最新のロードマップによると、「ビーコン・チェーン」は、この「セレニティー」の第一段階で導入される、POSに基づく新しいブロックチェーンで、従来のイーサリアム・ネットワークと平行して稼働します。そこでは取引承認の作業は、従来のマイナーたちに代わって、イーサリアムの大量保有者の中から抽選で選ばれる「バリデーター」と呼ばれる人たちが行うことになります。

イーサリアム財団が開発する「ビーコン・チェーン」用のASICマシンは、「検証可能な遅延機能(Verifiable Delay Function,VDF)」と呼ばれているイーサリアムのPOSの機能の中で、「バリデーター」たちの入れ替えを支援するために使われます。この作業は、「バリデーター」たちの中で一部の個人や組織が結集して、システム運営を支配できるだけのパワーを獲得してしまうような事態を阻止することを目的としています。POS移行後のイーサリアム・ネットワークの中央集権化を防ぐための機能と言えます。

なお、「ASIC」という言葉は、仮想通貨の世界ではマイニング専用マシンのことを指して使われることが多いのですが、本来は「特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit)」の略語で、マイニングマシンだけを意味するものではなく、特定の用途のために設計されたハードウェア全般を指す言葉です。イーサリアム財団が開発する「ビーコン・チェーン」用のASICマシンも、仮想通貨のマイニングとは異なった特定の用途に使われる専用マシンということになります。

プロジェクト費用は2000万~3000万ドル

ドレーク氏によると、このASIC開発プロジェクトには、2000万~3000万ドルの費用がかかると見込まれています。その内訳は、研究開発費が1500万~2500万ドル、製造が見込まれる5000台分のASICマシンの製作費用が500万ドルとされています。

これらのプロジェクト費用のうち、研究開発費については、イーサリアム財団とファイルコインが50%ずつ負担することになっています。ファイルコインは2017年に実施したイニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)で、約2億5700万ドルの資金を調達しています。
■開発プロジェクトはオープンソースで
ドレーク氏によれば、他のブロックチェーン企業にもこのASIC開発プロジェクトへの門戸が開かれており、他の企業も参加することによって、イーサリアム財団とファイルコインの全体的な関与の度合いが減っていく可能性もあるとのことです。

ドレーク氏は、このプロジェクトの計画設計と実施はオープンソース方式で行われることになるだろうとの見通しを示した上、「オープンソース方式のASIC開発はこれまで現実には行われてこなかった。したがって、これは私にとって極めてエキサイティングなことだ」と述べています。

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