韓国の弁護士の全国団体である大韓弁護士協会(Korean Bar Association)は2018年11月8日、同国政府や国会に対し、ブロックチェーンを基盤とした仮想通貨産業の発展を支援するとともに投資家を保護するための法的な枠組みを迅速に確立するよう求める異例の声明を発表しました。

弁護士の全国団体が異例の要請

大韓弁護士協会のキム・ヒュン(Kim Hyun)会長は11月8日、韓国国会内で記者会見し、「わたしたちは政府に対し、消極的な認識と躊躇から脱却すること、そしてブロックチェーン産業の発展を支援し、仮想通貨に関連する副作用を防ぐための法案を策定することを求める」との声明を出しました。

大韓弁護士協会は、1952年に設立された全国規模の弁護士会で、強制加入団体となっており、会員数は約8300名。弁護士法に基づき、弁護士に対する懲戒権限も与えられています。日本でいえば、日本弁護士連合会(日弁連)のような存在です。

このような公的性格を持つ弁護士団体である同協会が、仮想通貨という特定の技術的または経済的なジャンルの問題について発言し、政府に要請を行うのは極めて異例のことです。

大韓弁護士協会の声明は、韓国政府が国内の仮想通貨取引所などの仮想通貨関連産業を、同国のベンチャー企業の公認リストから除外したことを受けて出されたものとみられます。

政府は仮想通貨産業に消極的

韓国の仮想通貨取引は、世界でも最も活発な市場の一つとなっており、ビッサム(Bithumb)とアップビット(Upbit)の両仮想通貨取引所は、世界の取引所の中でも取引量がトップ10にランク入りしています。

その一方で、韓国政府は国内では、仮想通貨産業の振興について消極的だという批判を受けてきました。韓国政府は、仮想通貨規制に関するスタンスについては、現在政府と金融規制当局によって実施されている徹底的な調査研究が完了した後になると表明しています。

ICO禁止政策は見直しの動きも

韓国では2017年9月以降、イニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)が禁止されています。このため韓国のスタートアップ企業はICOを海外で実施することを余儀なくされてきました。規制当局である韓国金融委員会(FSC)は2018年10月、ICOを非合法とした決定は現在も維持されていると強調しています。

FSCがこうしたスタンスを継続している一方で、韓国の国会議員たちはICOについて、この禁止策を転換し、政府の統制下でスタートアップ企業のための新たな合法的事業資金調達手法とするため、明確なガイドラインを策定しようとする動きが出ています。2018年5月には、投資家保護策が取られていることを条件にICOを合法化するという内容の法案が議員立法で国会に提出されています。

仮想通貨取引所の銀行取引も抑止

韓国では仮想通貨取引所は銀行との提携の上で、「仮想銀行口座」と呼ばれるユニークなシステムを使っています。これは、ユーザーが韓国の法定通貨ウォンを即時に預け入れたり引き出したりすることができ、ウォンを仮想通貨取引所に安全に保有できるようになっているものです。

しかし、2018年初めから韓国政府は、仮想通貨を使ったマネーロンダリングを防ぐ見地から、各銀行に対し、仮想通貨取引所との取引を行わないよう圧力をかけています。

韓国の大手商業銀行であるNH農協銀行(Nonghyup Bank)は、複数の仮想通貨取引所との取引を継続してきましたが、2018年半ばには、同銀行もまた、ビッサムその他の大手仮想通貨取引所に対するサービスを終了するよう政府から圧力をかけられるようになっています。

こうした状況下で、法曹界から政府に対して仮想通貨産業の促進策を求める要請が出されたことは、仮想通貨取引所をはじめとする韓国の仮想通貨関連産業が直面しているさまざまな障害の克服につながるものとして注目されます。

ブロックチェーン技術については政府が積極推進策

もっとも、仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンに関しては、韓国政府は積極的な推進策を進めていく姿勢を示しています。

現地紙の11月8日の報道によると、韓国政府は、分散型台帳(DLT)やブロックチェーンの技術に関する来年度予算を、今年度の3倍の約3500万ドルに増額する方針を決めたとのことです。

同国の科学技術情報通信省は、公共部門で開発するブロックチェーンプロジェクトの件数を今年度の6件から来年度は12件に倍増させる方針です。また、ブロックチェーン関連のスタートアップ企業に対し、情報通信省が技術的支援やコンサルティングサービスなどを提供していくことも決まっています。

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