取引量世界最大手の仮想通貨取引所バイナンス(Binance)が2018年4月に不正アクセスを受け、マイニングマシン製造世界最大手である中国のビットメイン社(Bitmain Technology Ltd.)が保有する仮想通貨ビットコイン(BTC)550万ドル相当が流出していたことが、ビットメインが米国の裁判所に提出した訴状から明らかになりました。

ビットメインの口座つかいMANAの価格を操作

中国の北京に本拠を置くビットメイン社は2018年11月7日、バイナンスへの不正アクセスにより同取引所のオンラインウォレットに預けていたビットコイン550万ドル相当が氏名不詳の何者かに盗まれたとして、犯人を相手取り、被害回復などを求めて米シアトルにあるワシントン州西部地区連邦地裁に訴訟を起こしました。

訴状によると、ビットメイン社はバイナンスが管理・運営するデジタル資産用のオンラインウォレット上に仮想通貨ビットコインを保有していますが、2018年2月22日ごろ、何者かがこのウォレットに不正アクセスし、ビットメイン社保有のビットコインを使って仮想通貨マナコイン(MANA)を購入して価格をつり上げたり、ビットメインのウォレットの内外の他のデジタル資産の取引を行ったりする形で、価格操作を巧みに行い、ビットコインを盗み出したとされています。

犯人はバイナンス上のビットメイン社のウォレットから、ビットコインを使ってMANAをはじめとする仮想通貨の買い注文を出し、それらの仮想通貨の価格を当時の市場レートをはるかに上回る水準にまで引き上げました。MANAについてはその市場規模が小さいことから、この買い注文によって価格はさらにつり上がりました。犯人はまた、ビットメイン社のビットコインを使って仮想通貨イーサリアム(ETH)の買い注文を出し、それからビットメイン社保有のイーサリアムを使ってMANAを買う注文も出しました。

この犯人はバイナンス上に別のウォレットも保有しており、このウォレットを使って、MANAの価格がつり上がった段階でMANAを売ってビットコインを購入する注文を出しました。バイナンスの自動取引システムによって、高値でのMANAの売り注文と買い注文が合致して取引が成立しました。

このようにして犯人は巧みに価格操作を行うことで、ビットメイン社保有のビットコインを自分のウォレットに移し、莫大な利益を得ました。一方で犯人のウォレットからビットメイン社のウォレットに移ったMANAの市場価値は、同社が当時保有していたビットコインに比べてはるかに低いものでした。

犯人は米仮想通貨取引所ビットレックスの口座も利用

この詐欺行為の一環として、犯人はこれに先立ち、米シアトルに本拠を置く仮想通貨取引所ビットレックス(Bittrex)上のウォレットから229万9964MANAをバイナンスのウォレットに移していました。この移転の時点でMANAの対米ドル価格は1MANA=0.094586ドルでした。ビットマイン社のウォレットへの不正アクセスと市場価格操作を通じて、犯人はMANAをビットメイン社のウォレットに、1MANA=0.1997~0.33953ドルのレンジへと人為的につり上げた価格で売却または移転することが可能となりました。この価格水準は、MANAのそれまでの市場価格を70~192%上回るものでした。

犯人はさらに、MANAが値下がりしたのを見計らって、今度はビットメイン社のウォレットからMANAの売り注文を出すと同時に、自分のウォレットで買い注文を出しています。ここでもバイナンスの自動取引システムにより売買が成立し、犯人は莫大な利益を獲得、ビットメイン社はさらに損失を出しています。

この不正アクセスによる売買を行った後、犯人はバイナンス上の自分のウォレットからビットコインをビットレックス上のウォレットに移転させています。

失われたビットコインは617BTC

4月22日に不正アクセスと不正取引が行われる以前、ビットメイン社のウォレットにはビットコイン約890BTCが保管されていました。

不正取引があった後、ビットメイン社のウォレットのビットコイン保有量は265BTCに減っており、約617BTCが消失したことになります。同日時点でのビットコインの対ドル価格は1BTC=約8935ドルで、被害額は約551万ドルとなります。

この裁判は、不正アクセスを受けたのが取引量世界最大の仮想通貨取引所バイナンス、被害者が世界最大手のマイニングマシンメーカーであるビットメイン社だったという点で関心を集めそうです。

もっとも、なぜビットメイン社がバイナンスのセキュリティーの不備を追及せずに、正体不明の不正侵入者を相手取って実益のなさそうな訴訟を起こしたのかなどは明らかにされていません。ビットメインもバイナンスも中国企業なのに米国の裁判所に訴えたのは、中国当局が仮想通貨取引を禁止していることと関連しているとみられます。ビットメイン社からはこの裁判について今のところ公式な説明は出ていません。

友だち追加