東京海上日動火災保険株式会社(北沢利文社長)と株式会社NTTデータ(本間洋社長)は、外航貨物海上保険における保険金請求へのブロックチェーン技術適用に向けた実証実験を完了し、さまざまな好結果が得られたと発表しました。両社ではこのブロックチェーンを使った保険金請求システムを2019年度中に一部実用化することを目指しています。

実証実験の背景

外航貨物海上保険における保険金請求では、保険証券が貨物とともに流通するため、必ずしも契約した保険会社が保険金支払い業務を行うわけではなく、特に海外では輸入者が現地で事故通知から保険金の受領まで行えるよう、保険会社が提携する海外クレーム代理店が保険金支払いの手続きを行っています。

海外で貨物事故が発生し、これらの海外クレーム代理店が保険金支払い手続きを行う際には、紙やPDFファイル等の形で存在している事故報告書や貨物の損傷写真、インボイス(商業送り状)等の貿易関連書類ならびに保険証券を収集したり、保険会社へ補償内容をメール等で確認したりする必要があります。また、海外クレーム代理店と鑑定会社との間で、事故の内容等に関して情報共有することも必要となります。

このため、海外クレーム代理店が、世界中に点在する貿易関連書類と最新の保険証券の収集、関係者との情報共有をいかに迅速かつ正確に実施できるかが、迅速な保険金支払い手続きを実現する上での課題となっていました。

ブロックチェーンはデータの耐改ざん性を確保した状態でネットワーク参加者間での情報共有が可能な分散ネットワーク技術であり、東京海上日動とNTTデータの両社は2017年11月から、外航貨物海上保険における保険金請求プロセスへのブロックチェーン技術適用に向けた共同実証実験を行っていました。

このような実証実験は日本国内で初めてであり、国際的にも先駆的な取り組みです。

実証実験の概要

この実証実験は、2017年11月から18年8月にかけて実施。保険金支払い手続きの際に必要となる保険証券や事故報告書、貨物の損傷写真、インボイス、B/L(船荷証券)などのデータを電子化してブロックチェーン上に流通させることで、欧州、米州、アジアにある計8拠点(ドイツ、オランダ、米国、チリ、中国、台湾、韓国、タイ)の海外クレーム代理店ならびに鑑定会社へ速やかに共有されて、保険金の支払いプロセスに利用できるかどうか、また、書類ミスの低減や支払い対応の迅速化につながるかどうかについて検証しました。

技術面では、貨物の損傷写真やサーベイレポート(鑑定結果の報告書)などの大容量データを、ブロックチェーン上で円滑に参加者間で共有できることが確認できています。

また、適切なアクセス性能や業務効率性の観点からの検証も行いました。

検証結果

この実証実験の結果、荷主や保険会社、海外クレーム代理店、鑑定会社などの各当事者にとって、ブロックチェーンを手続きに活用することで、業務量削減や保険金支払いの迅速化など、さまざまな効果が期待できることが確認されました。

まず、被保険者(荷主等)にとっては、保険金の請求に必要な書類の用意や、提出にかかる業務の削減に結びつくことが分かりました。また、これまで最大1カ月以上かかっていた保険金支払いまでの期間を1週間程度にまで短縮することができ、支払いが迅速化されることが確認できました。

一方、保険会社にとっては、海外クレーム代理店への情報共有業務を削減できることが実証されました。

海外クレーム代理店にとっては、保険金請求に必要な書類の案内や取り付けにかかる業務を減らすことができる上、保険会社に保険契約内容を確認する業務についても、時差により確認作業が遅れるなどの影響を極小化できることで業務量を削減できることが分かりました。さらに鑑定会社への情報を連携する業務も削減できるほか、保険情報を含む必要情報を即時に入手できることにより、保険金支払いを迅速化できることも分かりました。

鑑定会社にとっては、早期の書類取り付けにより鑑定作業を迅速化できることや、保険契約内容を即時に入手できることにより、鑑定作業の品質向上も望めることが判明しました。

2019年度中に一部実用化へ

このように、今回の実証実験の結果、外航貨物海上保険の保険金請求プロセスへのブロックチェーン技術を適用することの有効性が確認できました。

この結果を受け、東京海上日動とNTTデータの両社は、実証実験を通して得られた課題への対応について継続して検討した上、2019年度中に一部を実用化することを目指して取り組んでいくとしています。

なお、両社は今回の実証実験に先立ち、2016年12月から17年3月にかけて、外航貨物海上保険の保険証券のブロックチェーンによるデータ化の実証実験を行い、その有用性を確認できたとしています。

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