マイニングマシン製造の世界最大手である中国のビットメイン社(Bitmain Technology Ltd.)の共同創設者ジハン・ウー(Jihan Wu)氏が取締役を退任し、今後は同社の経営に参加しないことが、現地メディアの報道で分かりました。

取締役から「監督者」に降格

2018年11月12日の中国メディア「三言財経」の報道によると、ビットメイン社が先週実施した取締役会の人事刷新で、ウー氏は取締役の地位を失い、「監督者」に降格されました。これにより同氏は同社の経営にタッチできなくなります。ウー氏退陣の理由は明らかにされていません。

ビットメイン社の弁護士は「監督者への地位変更により取締役会での投票権はなくなるため、権限は縮小し、この企業の経営方針決定には参加できなくなる」と述べています。

なお、ウー氏は2018年10月時点でビットメイン社の株式の20.25%を保有していますが、上級取締役のKetuan Zhen氏はそれをはるかに上回る36%を保有しています。今回の取締役退任で、ビットメイン社でのウー氏の影響力が大幅に低下することは避けられないようです。

最新型「Antminer S15」は発売直後に売り切れ

ビットメインは2013年に設立された企業で、同社製のマイニング専用マシン「Antminer」シリーズは世界で7割以上のシェアを誇っています。同社は最新型の「Antminer S15」を11月8日に発売したばかりですが、すぐに売り切れとなっています。

今回の取締役会の人事刷新は、この最新型マイニングマシンの発売とほぼ同時期に行われたとみられています。

IPO控え経営刷新か

ビットメイン社は2018年中に香港証券取引所で新規株式公開(IPO)を行うことを計画しています。株式が上場されれば株主に必要な企業情報が公開されるため、この新規上場を控えて経営体質を大きく変えようとしているとみられ、今回のウー氏の退陣もその一環である可能性があります。

同社をめぐっては、これまでさまざまな疑惑が指摘されてきました。2017年4月には、Antminerに外部からネット経由で遠隔操作できるバックドアが仕込まれていることが判明。ビットメイン側は、これはユーザー自身が遠隔操作でAntminerの動作を終了させるための機能だと説明しましたが、こうした機能を公にしていなかった点が批判の的となりました。

また、新開発の技術を使った製品を発売する前に、自社でその技術を独占してセルフマイニングを行っているという「シークレットマイニング」疑惑も浮上。同社はこれに対し、2018年7月、「製品出荷およびマイニングの実施についての私たちの透明性に関する方針」と題する文書を発表。シークレットマイニングを否定し、今後も一切行わないと宣言した上、定期的にセルフマイニングのデータを公表するとしています。

BCHのハードフォークにも影響か

ジハン・ウー氏がビットメイン社の経営権を失ったことは、11月15日(日本時間同16日)に迫っている仮想通貨ビットコインキャッシュ(BCH)のハードフォーク(これまでと互換性のないアップデート)にも何らかの影響を及ぼす可能性があります。

BCHのハードフォークの内容をめぐっては、「ビットコインABC」と「ビットコインSV」の両陣営が対立。このままではBCHは2つの仮想通貨に分裂しかねない情勢となっています。
ビットメインはこれまで、大口投資家のロジャー・バー(Roger Ver)氏らとともに「ビットコインABC」側を支持してきました。

ビットメイン社が香港証券取引所に提出したIPOの目論見書によると、同社はビットコインキャッシュを流通量の約6%に当たる約100万BCH保有しているとされています。もともと、2017年8月にビットコイン(BTC)から分裂してBCHが誕生したのも、ビットメイン社を中心とする中国系マイニングプールの主導によるものでした。

しかし、11月13日時点で、オーストラリア人のクレイグ・ライト(Craig Wright)氏が主導する「ビットコインSV(サトシ・ビジョン)」陣営はBCHのマイニングパワーの約76%を獲得し、優勢な状況にあります。BCHが2つのネットワークに分裂した場合、ライト氏はこのマイニングパワーを使って「ビットコインABC」のネットワークを破壊することを宣言しています。

ジハン・ウー氏はライト氏の主張について、「ばかげている。この人物は偽サトシであることは疑いない」と非難していました。そのウー氏が経営から退き、BCHをめぐる対立で「ビットコインABC」陣営が圧倒的に不利な情勢となっている中で、ビットメイン社が今後どう対応するか注目されます。

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