米証券取引委員会(SEC)は2018年11月16日、イニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)を無登録で行った2つの事業者に対する罰金などの処分が確定したと発表しました。SECは以前から、ほとんどの仮想通貨は有価証券として規制対象になるとの見解を表明していましたが、無登録でICOを行ったとして事業者を処分したのは今回が初めてです。

両社とも投資家への資金返還を確約

SECの発表によると、2つの事業者はいずれも、被害者となるICOへの投資家たちに資金を返金することや、それぞれのトークンを有価証券として登録すること、SECに対して経過報告書を提出すること、罰金を支払うことに同意しているとのことです。

処罰を受けたのは、キャリアEQ社(CarrierEQ Inc.)とパラゴン・コイン社(Paragon Coin Inc.)。両社は2017年、SECが、ICOは有価証券販売に該当し得ると警告して以降にICOを実施しました。

キャリアEQ社は米ボストンに本拠を置くスタートアップ企業で、モバイルアプリ上でユーザーがトークンを獲得したりそれらを情報と引き替えることのできる「エアフォックス(Airfox)」のエコシステムを開発する費用として、ICOにより約1500万ドル相当のデジタル資産を調達しました。

一方、パラゴン社はオンライン企業で、大麻産業へのブロックチェーン技術の導入や大麻の合法化推進といった事業計画のために、ICOにより約1200万ドル相当のデジタル資産を調達しました。

両社とも連邦証券法に基づくICOの登録をしておらず、登録免除の要件も満たしていなかったとのことです。

無登録ICO取り締まりのモデルケースに

SECの執行部門の共同責任者であるステファニー・アバキアン(Stephanie Avakian)氏は「私たちは、ICOを通じて有価証券を発行する企業には、有価証券の登録に関する現行の法令や規則を順守することが要求されることをはっきりとさせた」と述べた上、「今回の事例は、同様の行為を検討している者に対し、デジタル資産関連の連邦証券法違反を私たちが引き続き監視していくことを伝えるものだ」としています。

同部門の共同責任者スティーブン・ペイキン(Steven Peikin)氏も、「これらのICOで有価証券を購入した投資家たちに払い戻しを受ける機会を提供するとともに、発行者たちにトークンをSECに登録させることによって、今回の命令は、既にICOによりトークンを発行済みで、連邦証券法を順守しようとしている企業にとって、ひとつのモデルを示すものとなる」と述べています。

SECによる仮想通貨規制が本格化

SECはこれまで、仮想通貨のうち、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)以外のものは有価証券に該当し、現行の証券法に基づく規制対象になるとの見解を示していました。今回の摘発事例で、SECがいよいよ仮想通貨の規制に本腰を入れ始めたとみることができます。

SECは今回のケースよりも前に、詐欺案件以外の無登録ICOをめぐる初の案件としてマンチー社(Munchee Inc.)の事案を手がけていますが、このときは同社に対して罰金を課しておらず、また投資家への返金を命じてもいませんでした。同社はトークンを配布する前にICOを停止し、すぐに投資家に対して資金を返還しています。

今回の命令では、SECはキャリアEQ、パラゴンの両社に対し、それぞれ25万ドルの罰金を科すとともに、ICOでトークンを購入した投資家に資金を返還することを確約させている点が注目されます。両社はそれぞれのトークンを証券取引法に従って有価証券として登録するとともに、SECに対し、少なくとも1年間にわたり経過報告書を提出することになっています。両社は調査で明らかになった事実関係に同意も否定もすることなく、これらの命令に同意したとのことです。

ICOによる資金調達額は2018年に入ってからだけでも90億ドル以上に上っていると推計されています。これらのICOプロジェクトの多くは、将来の製品や技術的なプラットフォームを約束した上で行われていますが、中には何の裏付けもないICOもあり、詐欺事件も多発しています。

SECのジェイ・クレイトン(Jay Clayton)委員長は2018年6月、仮想通貨を定義するに際して現行法を改める考えはないと表明し、現行法の枠組みの中で仮想通貨を規制対象とする方針を示しました。同委員長はまた、「それが有価証券であれば、私たちはそれを規制する」と述べ、「私たちは長い間機能してきた有価証券の伝統的な定義に何ら違反することを行おうとしていない」と強調しています。

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