米国で性的被害に遭って働けなくなった女性に対し、クラウドファンディングのプラットフォーム「シーズ(Seeds)」が、ブロックチェーンでプライバシーを守りつつ寄付を集めるという手法で自立支援を行いました。「#Me Too」運動の新たな展開として注目されます。

ブロックチェーンを使った寄付システム「シーズ」

2018年9月、米国で性的攻撃を受けたトラウマから数カ月間にわたり働くことができなくなった女性が、ブロックチェーンを使ったクラウドファンディングのプラットフォーム「シーズ(Seeds)」を使って支援を求め、500ドルの寄付を受けることができました。

「シーズ」はイーサリアムネットワークを基盤とするクラウドファンディングのシステムで、さまざまなアプリにそのフロントエンドツールが組み込まれており、それらのアプリのユーザーたちから支援を必要とする人々に寄付ができるようになっています。

このプラットフォームの創設者で最高経営責任者(CEO)のレイチェル・クック(Rachel Cook)という女性は、制度化された金融システムが男性への過大評価と女性への過小評価という家父長制の構造で成り立っており、そのために現在の後期資本主義は機能不全に陥っているというのが持論。こうした金融システムに挑戦するために「シーズ」を立ち上げたとしています。

従来のクラウドファンディングのプラットフォーム、たとえば「キックスターター(Kickstarter)」や「ゴーファンドミー(GoFundMe)」の場合には、寄付を募る人は申請の際に身分証明書や銀行口座をプラットフォームに提示する必要があり、これらのプラットフォームのスタッフらに身元や性的被害の事実を知られてしまう危険性がありました。

しかし、この被害女性は「シーズ」のプラットフォームを使うことで、クックCEO以外には自分の身元を明かすことなく、寄付を集めることができました。

「シーズ」で「支援要請」を投稿するにはトークンが必要ですが、この女性の場合はクックCEOからギフトとしてトークンを受け取り、これを使って支援を要請しました。この支援要請は、めい想アプリの「オーラ(Aura)」など、「シーズ」のフロントエンドツールが組み込まれている30のアプリにポップアップ画面で表示され、それらのユーザーたちがトークンで寄付を行いました。

通常は、寄付された資金は各アプリ開発者、「シーズ」、そして支援要請を行った最終受取人の間で分配され、「シーズ」の取り分となる手数料は10%とされています。しかし、この女性の支援要請に関しては、クックCEOはすべての手数料を放棄しました。目標の資金を集めるのに要した日数は3週間でした。クックCEOは、「シーズ」のシステムが2017年10月に稼働開始して以来、最短で資金調達に成功した事例だとしています。

「#Me Too」運動に仮想通貨を

この被害女性とたまたま直接会って「#Me Too」運動について語り合ったというクックCEOは、職場で性的な嫌がらせや攻撃を経験した人々が、仕事を失うことに耐えられず、被害を名乗り出たり職場を離れたりするのを恐れることがありがちだと指摘しています。

同CEOは「逆境を耐え抜いた人たちは、他人にお金の支援を求めることについて、なかなか自分を納得させられないでいる」と述べた上、「『#Me Too』運動について私が分かった次の論理的な展開は、仮想通貨のシステムがいかにこのような必要を満たすことができるかについて、私たちが語らなくてはならないということだ」と付け加えています。

性的被害者の支援要請をより簡単に

自らも性的被害を克服した経験を持つクックCEOは、性的な攻撃を受けて法的費用やメンタルヘルス面の費用の援助を必要としている仮想通貨の初心者が、匿名の支援要請をもっと簡単にできるようにすることを目指しています。同氏は「私たちは、こうした手法が利用できること、不愉快な思いをせずに利用できることを、人々に知ってもらわなくてはならない」と述べています。

今回の被害女性は、「シーズ」を利用して寄付をトークンで受け取った後、このトークンを「シーズ」のポータルサイトを通じて法定通貨に換金しています。お金をペイパルで受け取る際には身分証明書類の提出が必要ですが、ペイパルでの現金受け取り手続きと彼女が「シーズ」で行った支援要請を結びつけるような情報は公開されていません。

クックCEOは、将来的には、性的被害者たちが寄付されたトークンを現金化する際、第三者に個人情報を開示しなくても、クック氏に要請するだけでできるようにしたいと表明しています。

「シーズ」は発足以来、自然災害に遭った人々や途上国の起業家など、世界各地からの数十件の支援要請を扱ってきました。しかし、トラウマに関連した事例は、これまで1件だけでした。

クック氏は、今回のような支援を、仮想通貨に対して用心深い性的被害者に対して広げようとしています。ブロックチェーン上のトークンを使った寄付であれば、従来のクラウドファンディングより迅速に支払いができる上、プラットフォームの機関に提示される個人情報も少なくて済むからです。クック氏は「仮想通貨によって、崩壊した中央集権的な権力構造を超越したシステムの構築が可能になる」と強調しています。

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