2017年のビットコイン(BTC)をはじめとする仮想通貨価格の急上昇が、仮想通貨テザー(USDT)を使った市場価格操作によるものだった疑いがあるとして、米司法省が発行元のテザー社と仮想通貨取引所ビットフィネックスに対する捜査に着手していると、米通信社ブルームバーグが報じています。

連邦検察当局が数カ月前から捜査

報道では3人の消息筋の話として、米連邦検察当局は数カ月前から仮想通貨に関する広範な犯罪捜査に着手しており、最近になって、仮想通貨テザーの発行元であるテザー社(Tether Ltd.)と仮想通貨取引所ビットフィネックス(Bitfinex)が違法にビットコインなどの価格操作を行っていた疑惑に焦点を絞り込んだと伝えています。

香港に本拠を置くビットフィネックスは、テザー社と同じ経営陣によって運営されています。テザー社が仮想通貨テザーを新たに発行するときは、そのほとんどがビットフィネックスを通じて市場に流れています。

両社に対しては、2017年に米商品先物取引委員会(CFTC)が召喚状を出したとブルームバーグが報じていました。米司法省とCFTCの間では現在、それぞれの調査についての調整が行われているとのことです。

当局は今のところ、テザー社やビットフィネックスの経営陣のうち特定の誰かについて犯罪容疑で捜査しているわけではなく、最終的には違法行為はなかったと結論づける可能性もあります。米司法省とCFTCの広報担当者はこの件に関してコメントを拒否しています。

仮想通貨は2017年に投資家の関心を集め、ビットコインは同年12月には1BTC=約2万ドルの最高値にまで急騰しました。しかし、2018年に入ると仮想通貨市場は反落に転じ、ビットコイン価格は11月20日には1ドル=4200ドル台にまで落ち込みました。こうした中で米政府当局は、仮想通貨業界に対する規制はまだ不十分であり、そのために詐欺行為も横行している点を警告していました。

米司法省の調査の焦点は、2017年の仮想通貨の急激な価格上昇が純粋に実需を反映したものだったのか、それとも市場操作の影響を受けた面もあったのかという点にあります。CFTCや連邦検察当局は、市場をにせの注文であふれさせて他のトレーダーたちの売買をあおったのではないかとの疑惑に注目しています。

テザーによる価格操作を立証したとする論文も

米司法省による捜査が始まる前から、一部の学者や投資家の間では、仮想通貨テザーを使ったビットコインの価格操作の疑惑は指摘されていました。

2018年6月にテキサス大学のジョン・グリフィン(John Griffin)教授と共同執筆者のアミン・シャムズ(Amin Shams)氏が発表した研究論文では、テザーが発行されるたびにビットコインの下支えと市場操作に使われてきたことがデータ分析によって裏付けられたと主張。テザーがビットコインを重要な局面で値上がりさせるために使われており、2017年にビットコイン価格が急騰した原因の約半分は、こうした市場操作によるものであると指摘しています。

消息筋によると、グリフィン教授は、自分の発見について2018年に入ってCFTCに説明したとされています。同教授自身は、政府当局者と接触したかどうかについてコメントを拒否しています。

グリフィン、シャムズ両氏が論文を発表した後、テザー社とビットフィネックスのCEOであるJL・バンデルベルデ(JL van der Velde)氏は、疑惑を否定する声明を発表しています。同氏は声明の中で、「テザーの発行はビットフィネックスにおいてビットコインまたは他のいかなるコインやトークンの買い支えのために使われることはない」と強調していました。

テザー社の準備金めぐる疑惑も

仮想通貨テザーの名前は、その価値が米ドルに結びつけられている(tethered)とされていることに由来しています。テザー社は、1USDTの発行ごとに1ドルが担保として銀行に預託され、1USDT=1ドルの価値が保証されていると宣言しています。

しかし、投資家の中にはテザー社の主張を疑問視する向きもあり、こうした準備金をめぐる疑惑などから、テザーの価格は2018年10月15日には急落して一時は1USDT=0.8ドル台にまで落ち込み、ステーブルコインとは言えない状態となりました。

CFTCが同社に召喚状を送った目的の一つは、このような疑惑を解明するため、仮想通貨テザーが米ドルの準備金に裏打ちされているという証拠を求めることにもありました。米司法省の調査では、テザー社がどのようにして新たな仮想通貨テザーを発行しているか、そしてそれらがなぜビットフィネックスを通して市場に流入するのかという点の解明に重点が置かれています。

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