東京大学の大学院工学系研究科にブロックチェーンに関する寄付講座が2018年11月から開設されました。三井住友フィナンシャルグループなどの企業からの寄付とイーサリアム財団の支援を受けてのもので、産学連携により、人材発掘・開発や技術開発、社会実装を軸として、新たなブロックチェーンビジネスモデルの創出や、その基盤となる技術開発に取り組むとされています。

突出した才能を持つ学生を支援

東大の発表によると、開設された寄付講座の名称は「ブロックチェーンイノベーション寄付講座」で、担当教員は東大大学院工学系研究科の茂木源人准教授(技術経営戦略学専攻)です。設置期間は2018年11月1日から2021年10月31日までの3年間で、東大本郷キャンパス3号館で講義が行われます。

この講座では、フィンテックを含むブロックチェーンに関する集中講義を行うとともに、ブロックチェーンを活用したビジネスモデルコンテストを主催するなどし、学内外から広く、ブロックチェーン技術に興味があり、情報数理系に突出した才能を持つ学生を支援していくとされています。

本郷キャンパスに最高の開発環境を整備

その上で、本郷キャンパス内の拠点に、人的環境を含む最高の開発環境を整備し、収益性があり、企業・ユーザー・社会の三者がwin-win-winの関係になるようなビジネスモデルの開発を目指しています。

一方で、クローズドネットワークにおいてブロックチェーン技術の改良および実証実験にも取り組み、これらのビジネスモデルに最適なブロックチェーン技術を開発することも予定されています。

起業目指す学生に学習の場を提供

同講座では、起業を目指す学生を対象に、参画企業のブロックチェーン技術と起業・経営ノウハウを学習できる場を提供するとともに、基盤となるブロックチェーン技術の研究開発を行い、ビジネスと親和性の高い汎用パブリックチェーンの開発を目指すとしています。

具体的には、以下のような目標を掲げています。

    1. 人材発掘・開発
      集中講義や各種イベントを通して情報数理的能力が高く起業意欲のある学生を発掘し、寄付講座による支援プロジェクトにより、学生の技術スキルと起業ポテンシャルの向上を図ります。
    2. 技術開発
      ブロックチェーン技術は仮想通貨をはじめとして今までにない情報通信技術(ICT)サービスを創出する可能性がありますが、どのような応用事例が適しているのか、どのような社会変革が実現されるのかの全貌はまだ不明瞭であり、これらを明らかにしていくことも本講座における研究課題となっています。このため、アプリケーションレイヤーのみならず、プロトコルレイヤーの理解が必要不可欠で、さまざまな応用事例の研究開発を行います。
    3. 社会実装
      ブロックチェーン技術に基づくビジネスモデルを具体的に社会実装する際に制約となるブロックチェーン技術そのものの問題点を明らかにし、その問題点を解決するための研究を行います。

イーサリアム財団も支援

この講座には、寄付者である株式会社グッドラックスリー、株式会社ジェイ・エス・エス、株式会社ジッパー、株式会社ホットリンク、株式会社マネーフォワード、株式会社三井住友フィナンシャルグループの各社が参画しています。各社からの寄付額は総額9000万円に上ります。

また、支援団体としてイーサリアム財団も名を連ねています。

世界各国で研究開発の動きが盛んに

仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンについては、仮想通貨だけでなく、ヘルスケアや銀行サービス、サプライチェーン管理、娯楽産業など、さまざまな産業分野で活用できる可能性を秘めた技術として、世界各国で研究開発投資の動きも盛んになっています。
2018年6月には、仮想通貨リップル(XRP)の発行元である米リップル社が、世界の17の大学に5000万ドルを寄付して、「大学ブロックチェーン研究イニシアティブ」と呼ばれるパートナーシップを始動させています。リップル社はこの寄付を仮想通貨ではなく米ドルで行っています。

同社はこの時の声明で、国際間決済の高速化をはじめとする分散型台帳技術の広範な可能性についての認識が広まってきたことに伴い、ブロックチェーン技術への関心が高まっていると指摘。「世界の学生や教授陣が、より強固で価値のあるブロックチェーンおよび決済のエコシステムの構築にあたって、重要な貢献者として台頭しつつある」と、ブロックチェーン技術の研究開発における大学の役割に着目しています。

今回、東大で企業各社からの寄付による「ブロックチェーンイノベーション寄付講座」が発足したことは、産学連携による先端的なブロックチェーン技術の研究開発が日本でも本格的に始動した事例として注目されます。

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