富山市に本店を置く第二地方銀行の富山第一銀行は、2018年11月28日から、ブロックチェーンを使って独自に発行した仮想通貨によるキャッシュレス決済の実証実験を始めました。専用アプリを使った行内の売店でのキャッシュレス決済や行員同士の個人間送金といった実験を通じ、その利便性やブロックチェーンの安全性について検証します。

行内売店の決済や行員同士の送金を仮想通貨「FBC」で

同行の発表によると、実証実験は株式会社インテックと共同で実施するもので、2019年4月23日までの約5カ月間にわたり同行の本店で行われます。実験に使われる仮想通貨の名称は「First Bank Coin(FBC)」で、同通貨は1FBC=1円で日本円と連動したステーブルコインです。この通貨を使って行員らがキャッシュレス取引を体験します。

具体的には、インテックと共同開発した専用のスマートフォン用アプリ「First-B Pay」を各行員がダウンロードし、利用者登録を行った上で、アプリ内に「FBC」をチャージします。たとえば、3000円をアプリで入金すれば、3000FBCがチャージされます。

本店食堂内の販売ブースで、QRコードを各行員の端末のアプリで読み取ることによって、FBCによる決済が行われ、キャッシュレスで商品を購入できるようになります。

また、行員同士の「FBC」による個人間送金の実験も行われます。送金したい相手の行員番号を指定するか、または送金相手のスマホ端末の「First-B Pay」アプリに表示されたQRコードを読み取り、金額を設定することで、「FBC」の送金ができる仕組みとなっています。

こうした取引の情報は、ブロックチェーン上に記録・保管されます。

このようにして、実証実験を通じて富山第一銀行の行内をフィールドとした小さな経済圏を形成し、経済圏内専用の仮想通貨であるFBCを流通させることで、同行の行員がアプリによるキャッシュレス決済を体験します。

全銀協のブロックチェーンを使用

実証実験に使われる仮想通貨「First Bank Coin(FBC)」は、「全銀協ブロックチェーン連携プラットフォーム」を活用したものとなっています。

このプラットフォームは、全国の銀行の業界団体である一般社団法人全国銀行協会が整備したブロックチェーン連携プラットフォームで、その目的として、

  1. 銀行、銀行と連携・協働したフィンテク企業やIT事業者等におけるブロックチェーン技術、分散型台帳技術を活用した新たな金融サービス等を開発するための試行、実証実験の容易化
  2. 銀行界全体での知見の共有、蓄積
  3. 銀行等における実証実験コストの負担軽減

-を掲げています。

実証実験での検証内容

富山第一銀行では今回の実証実験を通じ、運営主体(管理者)、加盟店、消費者(エンドユーザー)のそれぞれの立場から、以下のような検証を行うとしています。

  • 運営主体…経済圏内のコインの流通額を正しく把握できるかどうかを、富山第一銀行デジタルイノベーション室が検証します。
  • 加盟店…食堂内の販売ブースを擬似的な加盟店として位置づけ、購入された商品と購入に使われたコインの額を正確に把握でき、「販売管理」ができるかどうかをデジタルイノベーション室が検証します。
  • 消費者…QRコード読み取りによるキャッシュレス決済の利便性と、利用者にとって使いやすい画面デザインであるかどうかについて、利用者である各行員が検証します。この実証実験を通じて各行員は実際にキャッシュレス体験をすることで、今後顧客に対してキャッシュレスの利便性を実体験として伝えていきます。

さらに、ブロックチェーン上に、大量のデータの入力や、一部のサーバーを止めるなどの負荷をかけても、取引に影響が出ないかどうかについても検証する予定です。

背景にキャッシュレス化推進の要請

富山第一銀行は、こうしたデジタル通貨の実証実験を行うに至った背景として、昨今、決済に現金を使用しないキャッシュレス取引の仕組みが多種多様に乱立している一方、現金による決済の煩雑さは、利用者、金融機関、サービス提供者の間での共通の問題認識となっていると指摘し、キャッシュレス化推進の社会的な要請が強まっている点を挙げています。

キャッシュレス化については政府もその促進を掲げており、2019年10月に予定される消費税率の引き上げに際しても、キャッシュレス決済を利用した場合の優遇策を導入することが検討されています。

同行は今回の実証実験に先立ち、2017年の「富山県ものづくり総合見本市」で、インテックと共同で仮想通貨検証実験を行っています。同行ではその検証結果を今回の実証実験に反映させ、プリペイド式の支払い手段を用いたキャッシュレス決済の可用性を検証するとしています。

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