台湾の大手ITメーカー、エイスース(ASUS)は、同社製グラフィックカード(GPU)が他の用途に使われていない時間帯を利用して自動的に仮想通貨のマイニングができるソフトウェアの提供開始を発表しました。同社製品ユーザーのゲーマーたちは、ゲームを遊び終えて寝ている間にお金を稼げるようになります。

クアンタムクラウド社が採掘ソフトを提供

GPU(Graphics Processing Unit)とも呼ばれるグラフィックカードは、本来は3Dグラフィックなどの高度な画像描写に必要な計算処理を行うためのプロセッサーで、パソコンに装着して使われます。ゲーム用に使われるのが一般的ですが、最近ではその演算処理能力を生かして、仮想通貨のマイニングにも使われています。

エイスース社の2018年11月29日の発表によると、同社はこのほど仮想通貨マイニングアプリ供給のスタートアップ企業クアンタムクラウド(Quantumcloud)と提携。これにより、クアンタムクラウド社がASUS製グラフィックカードで使える仮想通貨マイニングのソフトウェアをユーザーに提供します。ユーザーは、このソフトウェアを各自のパソコンにインストールしておけば、パソコンに装着されたグラフィックカードがアイドリング状態になったときに、ソフトウェアがそれを検知して自動的にマイニングを行います。

このソフトウェアは、ゲーマーたちが保有するパソコンのグラフィックカードのパワーを集めてクラウドベースのマイニングを行うものです。これにより発生した利益は、グラフィックカードの所有者が提供するパワーの量に応じて分配されることになります。

マイニングプールへのアカウント登録は不要

マイニングによる収入は、ペイパル(PayPal)または中国の交流サイトであるウィーチャット(WeChat)を通じて支払われます。ユーザーがそれらのサービスのアカウントを持っていれば、マイニング用に新たなアカウント登録をする必要はありません。

エイスースは、アプリ上での各ユーザーたちの金融データのプライバシーが、欧州連合(EU)の「EU一般データ保護規則(GDPR)」に基づいて保護されると強調。「ユーザーのデータを保護するという誓約の一環として、クアンタムクラウドはGDPRを順守し、ユーザーに専用のログインアカウントの作成を要求することはない」としています。

ただし、クアンタムクラウド社は、同社のソフトウェアのユーザーたちが利益を上げられるかどうかまでは保証していません。同社の発表では「マイニングの収益率はその仮想通貨の市場の状況に基づいて変わる可能性があり、いかなる場合でも、クアンタムクラウドによって保証されたり、あるいは影響されたりすることはあり得ない」とされています。

莫大な数のGPUユーザーが採掘に新規参入か

エイスース社は莫大な量のハイエンドのグラフィックカードを供給しており、世界中に多数のユーザーがいます。これらのユーザーがクアンタムクラウド社のソフトウェアをインストールしてクラウドマイニングに参入すれば、大きなマイニングパワーとなることが見込まれます。

今回の新規サービスにより、エイスース社としては同社製グラフィックカードに新たな付加価値を与えて製品の魅力を高めることができる一方、クアンタムクラウド社側にとっても、エイスース社の莫大な数の製品ユーザーを取り込めるという利点があります。

ビットコインなどの採掘は困難

ただし、ビットコイン(BTC)をはじめとする一部の仮想通貨のマイニングでは、マイニングのディフィカルティーが高くなっているため、グラフィックカードでは効率的に採掘することができないのが現状です。ビットコインなどでは最近は、マイニング専用に設計された「ASIC」と呼ばれるチップを搭載したマシンによる採掘が主流となっています。

これに対し、主要な仮想通貨の中でもイーサリアム(ETH)などでは、個人や中小規模のマイナーたちが参入しやすいグラフィックカードで採掘ができるように、ASICマシンによる採掘を難しくするアルゴリズムが採用されています。これは、高性能なASICマシンを多数備えた一部の大規模マイニング事業者によるネットワークの中央集権化を阻止するためです。

GPUのマイニング需要は低下

もっとも、現在は仮想通貨の価格低迷とマイニングのディフィカルティーの高さにより、マイナーたちにとっては厳しい状況が続いています。最近の報道によると、ここ数週間のうちに数十万人単位がマイニングから撤退したと推計されています。2018年11月には、中国の大手マイニングマシンメーカー、カナーン・クリエイティブ(Canaan Creative)が、一時的にマイニングマシンの価格を1台あたり200ドルへと大幅値下げすることを発表しています。

とりわけ、グラフィックカードのマイニング用途での需要は低下しつつあるようです。米国に本拠を置く大手グラフィックカードメーカーのエヌビディア(Nvidia)が2018年8月に発表した財務状況報告書によれば、同社製グラフィックカードの売り上げは「大幅な落ち込み」を示しており、その主因は仮想通貨マイニング需要の低下とされています。

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