日本の仮想通貨交換業者とその利用者である投資家との間で起きたトラブルの解決に、東京の3つの弁護士会が運営する「金融ADR」の制度が利用できるようになりました。これは中立な立場の弁護士が紛争当事者の間に入り、和解に向けた話し合いを進める仕組みで、裁判に比べて迅速に解決を図ることができます。

協会が東京3弁護士会と協定締結

日本仮想通貨交換業協会の2018年11月30日の発表によると、同協会は裁判外紛争解決手続き(ADR)について、東京の3弁護士会(東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会)と協定を締結しました。

これにより、11月21日から、同協会の会員企業との間でトラブルが生じた場合に、3つの弁護士会がそれぞれ運営する東京弁護士会紛争解決センター、第一東京弁護士会仲裁センター、第二東京弁護士会紛争仲裁センターの「金融ADR」制度を利用できるようになりました。

ADRとは

ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、裁判外紛争解決手続きとも呼ばれ、紛争の両当事者の間に中立・公正な立場の専門家などが入って、和解に向けた話し合いを進める仕組みです。ADRの実施機関としては、消費者と事業者の間に起きた紛争全般を対象とする国民生活センターがあるほか、民間でも銀行や損害保険や生命保険の業界団体、全国各地の弁護士会などがあります。

今回、仮想通貨のトラブルに関して利用できるようになった「金融ADR」は、東京の3弁護士会がそれぞれ、信用金庫や労働金庫、信用組合、農協などの金融機関の業界団体と協定を結んで実施しているもので、金融分野に詳しい弁護士が中立・公正なあっせん人となって当事者同士の話し合いを進めるものです。

「金融ADR」はこれまでは、金融商品やサービス、貸し付け取引に関する利用者(顧客)と金融機関の間の紛争がその対象でしたが、今後はそれらの金融トラブルに加え、仮想通貨取引に関する紛争も、この制度を使って解決を図れるようになりました。

同協会の説明によると、仮想通貨トラブルについてこの「金融ADR」を利用できるのは、(1)会員による説明では納得できない場合(2)苦情の処理によらずに金融ADRによる解決を求める場合(3)苦情の申し出から3カ月以上にわたり苦情の解決が図られていない場合-のいずれかの場合とされています。

業者側にはADRへの参加義務

仮想通貨のトラブルに関して「金融ADR」を利用したい場合は、3弁護士会それぞれの紛争解決センターや仲裁センター、または日本仮想通貨交換業協会に申し立てを行います。なお、実施機関は東京の弁護士会ですが、全国どこからでも申し立てを行うことができます。

申し立てがあった場合、相手方となる仮想通貨交換業者側は、その紛争が既に訴訟になっているなどの合理的理由がない限り、「金融ADR」の手続きに参加することが、同協会の規則で義務づけられています。

話し合いの期日は原則として東京・霞が関の弁護士会館で開かれます。遠方に住んでいる人は、近隣の弁護士会などからテレビ会議システムを使って参加できる場合もあります。この期日の中では、公正・中立な立場の弁護士2名ないし3名があっせん人となって、双方の話を聞いたり、必要に応じて資料の提出を求めたり、和解案を提示したりして、解決へ向けた話し合いを進めます。

和解が成立した場合、両当事者の間で和解書が交わされます。裁判所の和解調書や確定判決には差し押さえなどの強制執行ができる債務名義としての効力がありますが、ADRの和解書はあくまで私文書(和解契約書)にすぎず、そのような強制力はありません。

解決すれば手数料を徴収

「金融ADR」利用に当たっての費用については、申し立てと話し合い期日開催の手数料については無料(同協会が負担)です。ただし、和解が成立した場合には、解決金額に応じて成立手数料がかかります。国民生活センターなどの公的機関や業界団体が実施するADRが無料なのとは、この点が大きく違っています。

手数料率は解決金額が300万円以下の場合はその8%、300万円を超え1500万円以下の場合は3%、1500万円を超え3000万円以下の場合は2%、3000万円を超え5000万円以下の場合は1%、5000万円を超え1億円以下の場合は0.7%、1億円を超え10億円以下の場合は0.5%、10億円を超える場合は0.3%です。

成立手数料の両当事者の間での負担割合は、当事者間の話し合いで決められます。

日本の業者を利用する投資家の安心材料に

仮想通貨業界の自主規制団体である日本仮想通貨交換業協会は、既に苦情処理の制度を設けています。それによると、会員企業に関して利用者から苦情の申し出があった場合には、その会員企業に迅速・適切な対応や協会への結果報告を義務づけている上、協会も調査を行うなどして迅速な解決を務めることとされています。

こうした苦情処理制度に加えて、今回の「金融ADR」導入により、仮想通貨トラブルに関して中立な第三者の仲介で迅速な解決を目指せる手段ができました。これは、日本国内の仮想通貨交換業者を利用する投資家にとっての安心材料にもつながりそうです。

友だち追加