仮想通貨ビットコイン(BTC)を身代金として要求する誘拐事件が世界各地で相次いでいます。仮想通貨はその性質上、比較的足がつきにくい上、現金などと違って端末の操作だけで簡単に巨額の資産を奪うことができ、輸送の手間もかからないことから、誘拐犯にとっては格好の狙い目となっているようです。

南アで身代金5万9000ドル相当のBTC奪われる

2018年11月には南アフリカでビットコインのトレーダーが拉致され、全身に拷問を受けた末、ビットコイン5万9000ドル相当を奪われる事件がありました。

現地メディアの報道によると、被害者のアンドリュー(Andrew)というトレーダーの男性は、フェイスブックを通じて一人のアフリカ系の男から仮想通貨についてプレゼンテーションの依頼を受け、11月16日午後1時ごろ、メドーランズ・ゾーン・ファイブ(Meadowlands Zone Five)地区にある住宅を訪れました。本人の話では、その場には4人の男と2人の女がいましたが、背後から近づいてきた何者かに、顔に布を押しつけられて薬のようなものをかがされ、意識を失いました。

意識を取り戻したとき、彼は別の住宅の中におり、女2人と男3人の計5人に取り囲まれていました。犯人たちからビットコインのウォレットのパスワードと銀行口座を教えないと殺すと脅され、裸にされた上、熱したアイロンを体のあちこちに押しつけられたり、殴打されたりするなどの拷問を受けました。

拷問に耐えきれず、結局、彼は80万ランド(約5万9000ドル)相当のビットコインを自分のウォレットから犯行グループの提示したウォレットのアドレスに送金させられたほか、自分の銀行口座の預金から10万ランド(約7200ドル)を犯行グループの口座に振り込みました。さらに持っていた現金3000ランドと2台のノートパソコン、2台のアイフォーンも奪われ、目隠しをされた上で路上で解放されました。

アンドリュー氏は両手、両足、胴体など全身にやけどを負い、病院の集中治療室に運び込まれましたが、その後は快方に向かっているとのことです。

スーパー経営者も誘拐

同国の都市ケープタウンでも、スーパーマーケットのチェーン「フードワールド(Foodworld)」を経営する65歳の実業家、リヤカト・パーカー(Liyaqat Parker)氏が誘拐され、身代金としてビットコインを要求される事件が起こっています。

同氏は出勤途中で5人の男たちから銃口を突きつけられて拉致され、2カ月以上にわたり監禁された上、家族が犯人に身代金として50BTCを支払った直後の2018年9月に無事解放されています。

ウクライナでは取引所アナリストが被害に

2017年12月には、ウクライナの首都キエフで、仮想通貨取引所「EXPO」のアナリスト、パベル・ラーナー(Pavel Lerner)氏が誘拐され、身代金として100万ドル相当のビットコインを要求されています。

南アの2つの誘拐事件とは違い、ラーナー氏が解放されたときの状況はよく分かっていません。ビットコインの身代金は実際に支払われたもようですが、支払ったのがラーナー氏本人か、それとも彼の家族あるいは会社の従業員なのかは明らかにされていません。

仮想通貨取引所EXMOはウクライナの大手取引所で、事件当時は約90万人のユーザーがいました。

トルコでも実業家誘拐、450BTC奪われる

トルコのイスタンブール郊外でも2017年11月、ビットコインを身代金として要求する誘拐事件が発生しています。

犯行グループは被害者である実業家の車の後をつけ、被害者に銃を突きつけて車に押し込んで拉致し、約8時間にわたり監禁、暴行の上、ビットコインと銀行オンライン取引のパスワードを要求。450BTC(当時の価格で約300万ドル相当)を奪っています。

被害者は解放された後、警察に駆け込み、犯行グループの5人が逮捕されています。首謀者は裁判で懲役30年の判決を受けた一方、一味のうちの一人は脱獄したもようだとも伝えられています。

同国のサイバー犯罪捜査当局はブロックチェーン上で盗まれたビットコインの行方を追跡しましたが、被害額を取り戻せたかどうかは明らかになっていません。

犯行グループは、被害者がレストランでごちそうを食べている姿などぜいたくな生活ぶりを交流サイト(SNS)でひけらかしているのを見て、犯行に及びました。たとえ仮想通貨でもうかったとしても、不特定多数の人に見られるSNSにはそのことを明かさない方が賢明なようです。

インドでは仮想通貨の販売者を誘拐

さらに、インド北部のパンジャブ州では2017年5月、仮想通貨トレーダーが誘拐され、ビットコインを身代金として要求される事件が発生しています。

犯行グループの6人はパンジャブ州内の仮想通貨の販売者たちを標的にして仮想通貨の購入に関心があると持ちかけ、被害者と面会して拉致した上、身代金としてビットコイン20BTCを要求。6日後に被害者を解放しています。被害者の家族が身代金のビットコインを支払ったかどうかは、逮捕時の報道では明らかにされていません。

首謀者の男は銀行の従業員を務めるかたわら、株式投資も行っていました。2016年に投資としてビットコインを購入したものの、その後600万ルピー(約92万5000ドル)近くの借金を負うことになり、だまされて仮想通貨を買わされたと訴えていました。

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