欧州連合(EU)加盟国のうちマルタやフランスを中心とする南欧地域の7カ国が2018年12月4日、ブロックチェーン技術の活用を共同で推進していくという共同宣言を出しました。これらの7カ国は「地中海7(Mediterranean seven)」と呼ばれています。

ブロックチェーンの多様な活用へ共同作業

地中海7」に参加しているのは、フランス、イタリア、スペイン、マルタ、キプロス、ポルトガル、スペインの7カ国です。これらの国々は12月4日にベルギーの首都ブリュッセルで開かれたEU運輸省会議に際して会合を開き、政府の市民サービスへの分散型台帳技術の活用を推進していくことを宣言しました。

同グループは今後数カ月間にわたり、ブロックチェーン技術を、教育、交通、モビリティー、運送、不動産登記、顧客管理、法人登記、ヘルスケアの各部門への導入に向けて共同で作業を進めていく予定です。

共同宣言ではブロックチェーン技術について、「これは電子政府サービスの強化だけにとどまらず、透明性の増大や、行政上の負担の削減、関税徴収の改善、および公的情報に対するアクセスの改善をもたらし得る」としており、市民だけでなく政府側にとっての利点もあると強調。ブロックチェーンが欧州諸国の経済の効率性を高める「ゲームチェンジャー」にもなり得ると指摘しています。

仮想通貨先進国のマルタが主導

「地中海7」の中心となっているマルタは、取引量世界最大の仮想通貨取引所バイナンス(Binance)が現在本拠地を置いている国であり、デジタル資産やブロックチェーンへのアプローチでは前向きで開かれた考え方を取ってきました。

同国は柔軟で実用的な規制の枠組みを取ることによって、過去11カ月間に主要な仮想通貨関連事業が他国から流入し、集積する地域となっています。

そのようなマルタが「地中海7」に主導的に関わっていることは、欧州の仮想通貨産業全体にポジティブな影響をもたらす可能性もあります。仮想通貨に積極的な政策をとっているマルタに、「地中海7」他の6カ国も追随する動きとみることができるからです。

マルタのイノベーション担当大臣のシルビオ・シェンブリ(Silvio Schembri)氏は、同国が「ブロックチェーン・アイランド」になっていく上で極めて重要な役割を果たしています。同氏は「マルタはあらゆるブロックチェーン技術についての法的整備が整った環境を提供する世界最初の国である。私たちは仮想通貨だけに関心があるわけではない」と述べた上、マルタでは学生たちにブロックチェーンを使った在学・卒業証明書を受け取れるサービスを提供している例などを挙げています。

EUはこれまで、域内全体としてブロックチェーン技術や仮想通貨の発展に向けた法的枠組みの整備は行ってこなかった一方、域内各国の規制当局に対し、価値が不安定な仮想通貨の取引の急激な台頭により金融の安定性が損なわれるリスクがあると警告していました。

欧州の仮想通貨産業発展につながる可能性も

仮想通貨とブロックチェーンは、一方がなければ他方が成り立たない関係にあります。ブロックチェーンは仮想通貨の基盤技術である一方、公開型のブロックチェーンのプロトコルは、それを稼働させるインセンティブシステムとして仮想通貨を使っています。ブロックチェーンのネットワークが仮想通貨なしで稼働できるのは、その構造が中央集権化されている場合のみに限られます。

こうしたことから、「地中海7」がブロックチェーン技術の潜在的可能性に注目し、それを欧州経済のさまざまな分野へと取り入れ始めたことにより、これらの国々で同時に仮想通貨産業も発展していくことが考えられます。その結果として、欧州の国々はデジタル資産に関するより実用的な法的枠組みを導入していく可能性があります。

既にフランスは2018年9月にイニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)に関する法的枠組みを整備しており、欧州地域でのICOのハブとして世界中から投資家を呼び寄せることを目指しています。

日本や米国に後れを取っていた欧州

欧州地域は、マルタとスイスを別にすれば、仮想通貨産業ではこれまで何年もの間、米国や日本、韓国、シンガポールなどに後れを取ってきました。世界の仮想通貨取引量のほとんどは、米国、日本、韓国の3カ国に集中しています。また、2017年には多くのブロックチェーン関連産業が日本やシンガポールに移転しています。

このように、欧州の仮想通貨産業がアジアや米国の市場と比べて弱体となっていた中で、今後、「地中海7」の各国が仮想通貨のスタートアップ企業に対して好ましい環境を整備するようになれば、欧州での仮想通貨やブロックチェーンのエコシステムの発展につながる可能性があります。

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