再生可能エネルギーの活用システムを供給するベンチャー企業、みんな電力株式会社(本社・東京都世田谷区、大石英司代表取締役)は2018年12月5日、ブロックチェーンを使った世界初の電力トレーサビリティーシステムの商用化をスタートさせると発表しました。今使っている電気がどの発電設備から供給されたものかを30分単位で確認できるシステムで、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使う発電事業者と利用者が直接取引することも可能となります。

9月からの先行利用試験が成功裏に完了

発表によると、同社は電気の利用者が電源を指定して直接取引することのできる独自のブロックチェーンP2P電力取引システム「ENECTION2.0」を開発。2018年9月から、同社と契約する発電事業者4社と需要家4社の参加により先行利用試験を実施しました。

この先行利用試験では、風力や太陽光、バイオマス、水力といった再生可能エネルギーによる発電施設8カ所と、東京の新宿マルイ本館、ビームスジャパンなどの需要家の施設6カ所の間を、あらかじめ指定した順位でマッチングさせ、30分単位で、どの電源と需要がどれだけひも付けられた(約定した)かを示すことに成功しました。

例えば、新宿マルイ本館施設では、青森県の風力発電設備や新潟県にある小水力発電設備などを電力供給元として指定した結果、2018年9月度の供給量のうち71%が指定先の再エネ電源から約定したものとなりました。

約定結果は公開型ブロックチェーン上に記録されるため、どの電源からどれだけ電気を買ったかの証明ができます。この結果をもとに、同社では世界で初めての電力トレーサビリティーシステムの商用化をスタートさせることになりました。

電力の生産者と需要家の直接取引も可能

このシステムはオープンなプラットフォームです。これを使えば、電力の生産者と需要家が直接取引して電力を購入することも可能となります。

みんな電力では、このシステムを再エネ電力取引のプラットフォームとして、再エネ電源と需要家をつなぐサービスを順次リリースしていく予定です。

「ENECTパワープール」を開設

同社はまた、このプラットフォームを利用して再エネ電源をプールし、需要家とつなぐ「ENECTパワープール」を開設します。これは、企業や自治体などが、希望する電源を指定して電力を購入することができるシステムです。

この「ENECTパワープール」には、既に大手発電事業者などを中心に、2018年度末までに約300MWの再エネ電源が参加することが決まっています。再生可能エネルギー利用を希望する企業は多いことから、同社では引き続き同システムに参加する発電事業者を募集しています。

30分単位の電力トレーサビリティーを安価に実現

電力のトレーサビリティーについては、欧米など再生可能エネルギー利用が普及している国の多くで「発電源証明(REC)」と呼ばれる仕組みが導入されています。これは、再エネ電源ごとの発電量を「発電源証明」として認証し、需要家に発行する仕組みで、欧州の「欧州エネルギー照明システム(EECS)」、米国の「電源ソリューションセンター(CRS)」などがあります。

ただ、この「発電源証明」は、年間単位で各電源の発電量を証明するものにすぎません。証明費用も年間25万円程度で、大規模再エネ電源や大企業需要家向けを想定したシステムでした。

これに対し、みんな電力が開発したシステムでは、ブロックチェーンの活用により、30分単位の精度で電力供給源を追跡できます。費用も約定あたり5円以下と低コストで、大企業だけでなく個人や小規模なユーザーも利用できるシステムとなっています。

「2019年問題」への対応にも活路

日本では再生可能エネルギーをめぐって、「2019年問題」と呼ばれる課題が迫っています。日本には再生可能エネルギーを使う設備で発電された電気を一定期間、電力会社に高値で買い取らせる「固定価格買取制度(FIT)」がありますが、2019年には、この制度による買い取りの期限を迎える電源設備(卒FIT電源)が53万件に上ると見込まれ、このままではこれらの設備の運営が立ちゆかなくなる恐れがあります。

卒FIT電源に再エネ電力としての付加価値を与えて利用を継続させるためには、各電源の発電量を把握し、その利用の証明をする必要があります。経済産業省でも2018年10月から、非化石証書に電源のトラッキングを付与する検討を始めています。このような卒FIT電源向けの非化石証書の発行・利用プロセスに、みんな電力のプラットフォームを活用すれば、低コストで実施することも可能となります。

国内外では、事業運営をすべて再生可能エネルギーでまかなうという国際イニシアチブ「RE100」への関心が高まっており、日本でもRE100を宣言する企業が増えています。こうした中で、仮想通貨とともに登場したブロックチェーン技術を使った電力トレーサビリティーシステムは世界的にも注目を集めそうです。

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