海外で出回っている日本茶の産地偽装を防止するため、シンガポールに本拠を置く中国系の非営利団体、VeChain(ヴィチェーン)財団は2018年12月、日本の富士山まる茂茶園(静岡県富士市)と業務提携し、ブロックチェーンを使ってお茶の製造元や流通経路を確認できるシステムの試験運用を始めました。

お茶のパッケージにNFCチップ搭載

VeChain財団の発表によると、今回の提携に基づき、富士山まる茂茶園の商品の管理にVeChainのブロックチェーンとIoT(モノのインターネット)を活用。商品のパッケージにNFCチップを埋め込むとともに、VeChainでは、それぞれのお茶の商品パッケージごとに、お茶の製造ラインを保証する個別のIDを割り当てます。

これによって、消費者はお茶のパッケージからチップの情報をスマートフォンで読み取ることで、商品が本物であるかどうかを確認できるようになります。

最初は試験的に、富士山まる茂茶園の記念限定商品100パックにVeChainのNFCチップを埋め込んで出荷します。この試験運用の結果が出た後で、双方はより大規模な業務提携契約を結ぶ予定です。

さらに、このNFCチップを読み取ることで、商品の顧客は、富士山まる茂茶園の歴史を紹介するビデオ動画など、製品に関するより詳しい情報を閲覧したり、VeChainのメインネットであるVeChainThor上で発行・保存されている証明書を確認したりすることもできます。

富士山まる茂茶園は、約90年の歴史を持つマル茂本多製茶の販売管理会社として2015年6月に設立され、主にネットやイベントなどを通じた販売を行っています。現社長の五代目本多茂兵衛氏は世界緑茶コンテスト2013で最高金賞を受賞、日本茶インストラクターなどの資格を持っているほか、静岡県100銘茶協議会の理事も務めており、海外での日本のお茶文化の普及に向けた活動を続けています。

VeChain財団は、今回の富士山まる茂茶園との業務提携に当たり、「VeChainは先端技術を使ったソリューションを、この最も歴史のある産業の一つにもたらしている。ブロックチェーン技術と伝統文化の結合により、VeChainは伝統産業における信頼性の保証と、伝統文化の世界に向けての発信を支援していく」としています。

VeChainとは

VeChainは中国で開発されたブロックチェーンのプラットフォームで、2017年8月にスタートした当初はイーサリアムのERC-20規格に準拠していましたが、2018年6月にはメインネットを独自ブロックチェーンのVeChainThorに移行しています。

VeChainのエコシステムの運営には仮想通貨VETが使われ、そのサービスを利用するにはVETが必要となります。VETはバイナンス(Binance)をはじめとする海外の仮想通貨取引所で取引されていますが、日本国内の取引所では今のところ取り扱いはありません。

スマートコントラクトをトレーサビリティーに活用

VeChainの最大の特徴は、改ざんができないというブロックチェーンの特徴を活用して、さまざまな商品の生産・流通経路を追跡できるプラットフォームとなっている点です。

VeChainにはスマートコントラクトが実装されており、さまざまな商品に暗号化されたチップを埋め込むことで、ブロックチェーン上のスマートコントラクトを通して、それらの商品の生産・輸送経路をリアルタイムで追跡・管理できるようになっています。

このためVeChainは、食品などの農産物の産地偽装防止のほか、高級ブランド品が偽物でないことの証明などにも活用され始めています。

既にVeChainでは、ワインをはじめとする酒類や、高級ブランド品、自動車、農産物、コールドチェーンなどの専用トレーサビリティー・プラットフォームを開発。これらの分野の商品の生産地や輸送経路などをブロックチェーンに記録、確認できるソリューションを提供しています。

自動車の場合、それぞれの車両ごとにIDを割り当て、整備や修理の履歴、走行距離などがブロックチェーンを記録することで、たとえ車両の所有者が変わったとしても、メーカー側は各車両の状況を常に追跡できるようになっています。

また農産物では、それらが農薬を使わない有機農法で作られたものであるといった証明ができるだけでなく、栽培時の気象・土壌の状況などもIoTセンサーやモバイル端末でリアルタイムにモニターされ、生産者の農業計画にも役立つサービスとなっています。

こうした分野だけでなく、VeChain財団は2017年3月には、英国の会計監査会社PWCの中国とシンガポールの現地法人と業務提携しています。

また2018年9月には、同財団は上海に本拠を置く中国の大手保険会社、人民保険集団(PICC)と業務提携。人民保険集団はVeChainのブロックチェーンを活用して保険の透明性の向上や手数料削減、保険金詐欺防止などに向けて取り組んでいます。

さらに、中国では、たばこの産地偽装防止にVeChainを活用しようとする動きも出ています。

中国当局は仮想通貨産業に対しては厳しい規制を行っていますが、同国でも横行している農産物の産地偽装や偽ブランド商品への対策として、VeChainの活用は今後広がっていきそうです。

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