金融庁の有識者会議「仮想通貨交換業等に関する研究会」(座長・神田秀樹学習院大大学院教授)は、2018年12月14日の会合で最終報告書をまとめました。仮想通貨交換業者の取り扱い仮想通貨を事前届け出制にすることや、みなし業者の業務拡大を禁止することを求める内容で、「仮想通貨」の呼称についても「暗号資産」に変更すべきだとしています。同庁はこれらの内容を踏まえ、2019年の通常国会に資金決済法と金融商品取引法の改正案を提出する方針です。

業者に預かり資産の信託義務

報告書では、仮想通貨交換業者が顧客から預かっている仮想通貨について、不正アクセスによる流出リスクに対応する観点から、業者に対し、

  1. 預かり資産を流出させた場合の弁済方針の策定・公表
  2. ホットウォレットで保管している預かり資産相当額以上の純資産額および弁済原資の保持

・・・を義務づけるべきとしています。

また、仮想通貨交換業者が倒産した場合に備え、顧客からの法定通貨および仮想通貨の預かり資産を隔離保全する観点から、業者に対し、顧客を受益者とする信託義務を課すことが望ましいとしています。

ただ、現状では、仮想通貨についてはすべての信託は困難なことを踏まえ、顧客が取引を行うに際して業者の財務の健全性を確認できるよう、業者に貸借対照表や損益計算書などを開示させるべきだと指摘。さらに、業者破綻時に預かり資産が顧客に円滑に返還されるよう、預かり資産の返還請求権を優先弁済の対象とすることも提案しています。

協会未加入業者の登録拒否

報告書ではまた、仮想通貨交換業者による積極的な広告などにより、値上がり益を期待した投機的取引が助長されていると指摘。こうした状況を踏まえ、顧客のリスク誤認や投機的取引の助長を抑止する観点から、業者に対し、

  • 誇大広告、虚偽告知、断定的判断の提供、不招請勧誘
  • 顧客の知識などに照らして不適当と認められる勧誘
  • 投機的取引を助長する広告・勧誘

・・・を禁止すべきとしています。

さらに、業者に対して、自主規制団体である日本仮想通貨交換業協会への加入を促す観点から、協会に加入せず、協会の自主規制に準ずる内容の社内規則も作成していない業者については、仮想通貨交換業者としての登録を拒否したり、取り消したりすべきだとしています。

取り扱い通貨の事前届け出制

報告書では、仮想通貨の中には移転記録が公開されず、マネーロンダリングなどに利用される恐れが高いものなどもあると指摘。こうした問題のある仮想通貨を仮想通貨交換業者に取り扱わせないための措置を講じる必要があるとしています。

ただ、問題がある仮想通貨をあらかじめ法令などで特定するのは困難なことから、行政当局と協会が連携して機動的に対応すべきだとしています。具体的には、現状では行政当局に対する事後届け出となっている取り扱い仮想通貨の変更について、事前届け出の対象へと変更するよう求めています。

有価証券同様の不正行為禁止

さらに報告書では、仮想通貨の不公正な現物取引を防止するため、金融商品取引法ですべての有価証券の取引に適用されている不正行為の禁止、風説の流布等の禁止と同様の規制を課すことに加え、有価証券取引における相場操縦に相当する行為も禁止することを提案しています。

ただ、インサイダー取引規制については、

  • 多くの仮想通貨には発行者が存在せず、存在する場合でも世界各国に点在している可能性もあり、該当者の特定が困難な場合がある
  • 仮想通貨の変動要因について確立した見解がない中で、インサイダー取引規制を課す際に必要な「顧客の取引判断に著しい影響を及ぼす未公表の重要事実」をあらかじめ特定するのは困難な面がある

・・・という理由から、禁止行為を明確に定めることは難しいとしています。

デリバティブ取引への規制導入

仮想通貨のデリバティブ取引は、国内の仮想通貨取引全体の8割を占めている一方、金融庁に多数の相談が寄せられており、また、多くの主要国が仮想通貨デリバティブ取引を金融規制の対象としている中で、現在の日本では規制対象とされていません。

報告書では、仮想通貨デリバティブ取引について、原資産である仮想通貨の有用性についての評価が定まっていないことや、現状ではもっぱら投機を助長していると指摘されている点を挙げ、「積極的な社会的意義を見いだし難い」としています。

ただ、既に国内で多くの仮想通貨デリバティブ取引が行われている現状を踏まえ、これを禁止するのではなく、一定の規制を設けて利用者保護や適正な取引の確保を図るべきだとしています。

具体的には、証拠金倍率について、仮想通貨の価格変動は法定通貨より大きいことを踏まえた適切な上限を設定すべきだと指摘。さらに資力や知識が不十分な個人に害悪が及ばないよう、業者に対し、最低証拠金(取引開始基準)の設定や、資力などの点で不適格な顧客との取引を制限する措置などを義務づけるべきだとしています。

みなし業者の業務拡大を禁止

2017年4月の改正資金決済法施行に際し、施行前から業務を行っていた業者に対しては、仮想通貨交換業者としての登録を受けていなくても「みなし業者」として一定期間は業務を継続できる経過措置がとられています。

しかし、報告書では、みなし業者が経過措置の期間中に積極的な広告を行って事業を急拡大させたとか、多くの顧客がみなし業者であることを認識していないといった指摘があるとしています。その上で、こうした状況を踏まえ、みなし業者に対し、業務内容や取り扱い仮想通貨の追加、新規顧客の獲得を禁止するとともに、ウェブサイトなどに、まだ金融庁の登録を受けておらず、登録拒否処分を受ければ廃業するという旨を記載させるべきだとしています。

「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更

現在公式に使われている「仮想通貨」という呼称について、報告書では、「crypto-asset」の訳語である「暗号資産」に変更するよう提案しています。

これは、2018年11月30日から開催されたG20ブエノスアイレス・サミットをはじめ、最近の国際的な議論の場では「crypto-asset」の表現が使われるようになっていることや、「仮想通貨」の呼称は誤解を生みやすいとの指摘があることを理由としています。

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