金融庁の有識者会議「仮想通貨交換業等に関する研究会」が2018年12月にまとめた最終報告書の中で、イニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)についての基本方針が示されました。ICOを一律に禁止するのではなく、その規制内容を明確化し、登録制の導入などで利用者保護や適正取引の確保を図るとしています。

一律禁止よりも規制明確化

報告書ではICOについて、

  1. グローバルに資金調達ができる
  2. 中小企業が低コストで資金調達できる

・・・といった、既存の資金調達手段にはない可能性があるとの評価もある一方で、以下のような問題点が指摘されているとしています。

  • ICOを有効に活用したとされる事例があまりみられない
  • 詐欺的な事案や事業計画がずさんな事案も多く、利用者保護が不十分
  • 株主や他の債権者等の利害関係者の権利との関係も含め、トークンを保有する者の権利内容にあいまいな点が多い
  • 多くの場合、トークンの購入者はトークンを転売できればよいと思っている一方、トークンの発行者は資金調達ができればよいと思っており、規律が働かず、モラルハザードが生じやすい

こうした問題点から、一部の国でICOを禁止する動きもみられるものの、米国など多くの主要国では、ICOのうち投資性を持つものについては、既存の証券規制の枠組みの中で規制しようとしています。

日本でも2017年10月に行政当局が利用者に対してICOのリスクについて注意喚起するとともに、事業者に対しては、ICOの仕組みによっては金融商品取引法や資金決済法の規制対象になり得る旨が示されています。

こうした状況を踏まえ、報告書では、行政のICOについての今後の基本的な方向性として、一律に禁止するよりも、規制内容を明確化した上で、利用者保護や適正な取引の確保を図っていくべきだとしています。

情報開示や第三者による審査の導入

報告書では、ICOへの具体的な規制内容として、以下のような仕組みを導入すべきだとしています。

  • 発行者と投資家との間の情報の非対称性を解消するための、継続的な情報提供(開示)の仕組み
  • 詐欺的な事案等を抑止するための、第三者が発行者の事業・財務状況についてのスクリーニングを行い得る仕組み
  • 不公正な行為の抑止を含め、トークンの流通の場における公正な取引を実現するための仕組み
  • 発行者と投資家との間の情報の非対称性の大きさ等に応じて、トークンの流通の範囲等に差を設ける仕組み

また、現行の金融商品取引法では、ICOのうちトークンが仮想通貨で購入されるものについては必ずしも規制対象とはなっていませんが、報告書では、購入の対価が仮想通貨であったとしても法定通貨で購入される場合と経済的効果に実質的な違いがないと指摘。仮想通貨で購入される場合も規制対象とすべきだとしています。

登録制や広告・勧誘規制の導入

報告書はまた、投資家が適切な投資判断を行えるためには、ICOのプロジェクトとして提示されている事業の実現可能性等が客観的に確認されることが重要だと指摘。詐欺的な事案を抑止したり、内容があいまいなトークン表示権利の発行・流通を防止したりする観点からも、第三者が発行者の事業・財務状況を審査する枠組みを構築すべきだとしています。

ICOでは発行者が自ら出資者を募集する、いわゆる自己募集の事例が多くなっています。この点について報告書では、詐欺防止などの観点から第三者による審査を経ることが最も望ましいものの、こうした自己募集を一律禁止するのではなく、ICOを行うスタートアップ企業やプロジェクトに登録制を導入した上で、広告・勧誘規制やICOの内容についての説明義務などの行為規制を課して投資家保護を図るのが適当だとしています。

非上場株式並みの流通抑止

ICOで発行されたトークンの流通については、第三者による適切な審査を経ているなどの利用者保護措置が取られていない限りは、勧誘を非上場株式と同様に制限し、一般投資家への流通を一定程度抑止することが考えられるとしています。

仮想通貨交換業者がICOで発行されたトークンを取り扱う場合には、トークンの発行者に関する情報や、発行者がトークン保有者に対して負う債務の有無や内容、発行価格の算定根拠などのほか、発行者が作成した事業計画書や事業の実現可能性、事業の進展状況などの情報も顧客に提供させるべきだとしています。

さらに報告書では、ICOには詐欺的な事案や事業計画がずさんな事案が多いと指摘されていることを踏まえ、仮想通貨交換業者に対し、ICOで発行されたトークンに関しては、特に厳正な審査を行った上で問題ないと判断したもの以外は取り扱わないように徹底させることを求めています。

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