仮想通貨テザー(USDT)が発行量に見合った準備金を保有していないのではないかとされる疑惑について、米通信社ブルームバーグは2018年12月18日、発行元テザー社(Tether Ltd.)の銀行口座の明細書を検証した結果、疑惑を裏付ける証拠は見つからなかったと報じました。

テザー社の準備金疑惑とは

テザー社は公式サイトで、仮想通貨テザーが1USDT=1ドルのステーブルコインであることを保証し、発行する仮想通貨テザー1UDSTにつき1米ドルの準備金を蓄えていると宣言していますが、この準備金が本当は存在しないのではという疑惑が以前からささやかれてきました。

テザー社をめぐる疑惑は、ブルームバーグが2018年1月に、米商品先物取引委員会(CFTC)が準備金をめぐる疑惑を調査するため、テザー社とビットフィネックスに対する召喚状を出したと報じたことで拡大。テザーには透明性が欠けているとたびたび批判され、2018年10月にはテザーの価値は一時1USDT=0.8ドル台にまで下がり、ステーブルコインとは言えない状態となりました。グーグルで「Is Tether a scam?(テザーは詐欺?)」と検索すると、何千件もの検索結果が出てきます。

もし仮想通貨テザーの発行量に見合った準備金が存在しないとすれば、それは仮想通貨市場に大きな打撃を及ぼす問題となります。仮想通貨テザーの時価総額は全仮想通貨の中で6位を占めている上、仮想通貨取引所で行われるビットコイン(BTC)取引の少なくとも30%にはテザーが使われていると推計されているからです。

また仮想通貨テザーは、法定通貨の米ドルとは違って、世界中のどこへでも在来の金融機関や政府の関与なしに移動できることから、仮想通貨市場において銀行のような役割も担っています。

4つの時期の銀行口座明細書を検証

今回、ブルームバーグは、仮想通貨テザーの発行量を担保できる額の準備金が本当に存在するかどうかを調べるため、関係者から入手した4つの異なる時期のテザー社の銀行口座明細書を検証。その結果は疑惑を完全に払拭するものではありませんでしたが、これまでにテザー社が公表していた資料より詳細な事実関係が明らかになりました。

たとえば、ひとつの明細書では、プエルトリコにあるノーブル銀行(Noble Bank)のテザー社の口座に2018年1月31日時点で22億ドルが預金されていることが示されています。コインマーケットキャップのデータによれば、同日時点のテザーの市場流通量は21億9500万USDTでした。この数字は2017年9月と10月の時点でも一致していました。

テザー社の2017年9月のノーブル銀行の口座残高は、銀行の明細書によれば、9月1日時点では0ドルだったのが、同月末には3億9200万ドルになっています。同月、テザー社はモントリオール銀行に、テザー社とビットフィネックスの法務部長であるスチュアート・ヘグナー(Stuart Hoegner)氏の名義で6090万ドルを保有していました。これらの総額は4億5290万ドルとなります。

最新の銀行明細書は2018年7月のもので、7月1日時点では残高は19億ドルだったのが、同月末には2億1000万ドルに減っています。この残高の急減は、テザー社がバハマ諸島のデルテック銀行(Deltec Bank &Trust Ltd.)に資金を移動した後に起こっています。

テザー社とビットフィネックスの資金移動も記録

テザー社の銀行口座明細書には、同社と仮想通貨取引所ビットフィネックス(Bitfinex)の間の資金移動についても記載されています。両社は同じ経営陣によって運営されており、密接な関係にあります。

2017年初めにテザー社は台湾の複数の銀行との取引関係を失ったのを機に、一般顧客の間の仮想通貨テザーの直接売買を取りやめました。これにより、ユーザーが発行元との間でテザーを売買できる場は仮想通貨取引所ビットフィネックスだけとなりました。

ビットコインの高騰に伴って仮想通貨テザーの需要も高まり、その時価総額は2017年初め時点では約1000万ドルだったのが、同年末には13億ドルとなっています。これにより莫大な額の資金がテザー社とビットフィネックスの間の移動に必要となり、そこではノーブル銀行が重要な役割を果たしています。

ブロックチェーン上の記録によると、7月6日にビットフィネックスは仮想通貨テザー1億USDTをテザー社に送金しています。ノーブル銀行の明細書によると、同じ日にテザー社はビットフィネックスに1億ドルを支払っています。両社の間では、7月20日にも5000万ドルが5000万USDTと、7月24日にも1億ドルが1億USDTと引き替えられていました。

テザー社は11月1日、デルテック銀行の口座に18億ドルを保有していると発表しました。ノーブル銀行の明細書によれば、7月12日から20日にかけて巨額の現金の引き出しが行われており、その総額は13億7000万ドルに上っています。

価格操作疑惑は未解消のまま

今回検証された銀行口座の明細書は、それらの準備金の出所や、現時点で準備金が存在するかどうかまでを示すものではありません。

さらに、テザー社には準備金疑惑に加え、同社が仮想通貨テザーをビットコインの価格操作に使っているのではないかとの疑惑も浮上しています。ブルームバーグの2018年11月の報道によると、米司法省は2017年にビットコイン価格が急騰した一因がテザーを使った価格操作にあったかどうかについて捜査中とされています。

こうした疑惑は残るにせよ、今回のブルームバーグの報道は、過去の複数の時点で仮想通貨テザーの発行量に見合った準備金が存在していたことを示すもので、テザー社や仮想通貨テザーの利用者にとっては明るいニュースと言えそうです。

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