米国のニュースサイト「ポプラ(Popula)」は2018年12月から、すべての記事をブロックチェーン上に蓄積していくことを発表しました。刊行された記事がブロックチェーン上に保管されるのは米国でも初めての試みで、同サイトでは、記事を消滅や改ざんの危険から守り、半永久的にネット上に残すことで、報道の自由を守ることにつながると強調しています。

第1号はビル・コスビーの判決記事

ポプラ」は、ジャーナリストたちが自首運営しているニュース報道サイトで、広告を100%排除した上、読者からの寄付だけによって成り立っています。独立系ニュースサイトのプラットフォームである「シビル(Civil)」の上で運営されています。

「ポプラ」のエディター、マリア・バスティロス(Maria Bustillos)氏は2018年12月17日、同サイト上で、自分の執筆記事のうちの1本をイーサリアムおよびIPFSネットワークの上にアーカイブしたと発表しました。同氏は「私たちの知る限り、これは米国の刊行元によりイーサリアムのブロックチェーンに直接にアーカイブされた、まさしく初めての記事である」としています。

アーカイブ化第1号となった記事は、著名なコメディアンのビル・コスビー(Bill Cosby)が性的暴行の罪で懲役3~10年の実刑判決を受けたことを伝える記事です。コスビーの事件は、著名人のスキャンダルとして世間から騒がれる一方、被告がアフリカ系であることから、一連の騒ぎには人種的偏見も絡んでいるのではないかとの指摘も出て、コメディアンのウッディ・アレン(Woody Allen)の養子虐待疑惑の時の報道ぶりと比較されたりもしました。

この記事の一部は、コスビー被告に対する裁判を伝える一連の記事の中のひとつとして、2017年6月9日、「死と税金(Deth and Taxex)」というニュースサイトに掲載されましたが、その数カ月後、サイトの経営元の事業再編により、ネット上から削除されてしまいました。しかし、2018年9月に同被告に対する判決が出たのを受け、「ポプラ」上に再掲載。これが今回、ブロックチェーン上に半永久的に記録されることになったものです。

バスティロス氏は、「イーサリアムのブロックチェーンとIPFSが存続する限り、この記事は報道の自由に対する敵対者たちの手の届かないところで残り続けるだろう」とした上、今後、「ポプラ」の他の記事についても、ブロックチェーン上へのアーカイブ作業を行っていく方針を表明しています。

ブロックチェーンを報道の自由に活用

バスティロス氏は、自分が過去に書いてきた多くの裁判記事が、掲載サイトの事業再編に伴ってインターネット上から消滅してしまった経験を挙げた上、ブロックチェーン上にニュース記事を保存するという目標は、自分がビットコインについて執筆を始めた2012~13年ごろから追求し続けてきたと強調。その上で、「その頃も、ブロックチェーン技術の重要な恩恵は非中央集権化であると思っていた。この技術は言論と報道の自由を守るために利用できるのは明らかだ」と述べています。

バスティロス氏はさらに、過去において多くのさまざまなライブラリーやアーカイブが事故により、あるいは故意によって破壊されてきたと指摘。「人類史上初めての、攻撃や変更や改ざんを完璧に防止できる記録を構築することができる。人々がこの発展に真価を見いだすなら、これは大きな転換点となるだろう」と述べています。

今回アーカイブされた記事は、ブロックチェーンを使ったジャーナリズムのスタートアップ企業「シビル(Civil)とその技術者たちの支援を得て蓄積されました。実際にこの記事を蓄積する処理は「メタマスク」を利用して実行され、想定されていたよりもはるかに簡単であることが分かりました。バスティロス氏は、この記事のアーカイブ作業に30分もかからなかったと述べています。

サイト掲載の90日後にブロックチェーンに登録

今後は、「ポプラ」に掲載されたすべての記事がブロックチェーン上に蓄積されることになっています。通常は、「ポプラ」上での掲載から約90日後にブロックチェーンに記録される予定です。

バスティロス氏は、記事の全テキストをイーサリアム上に蓄積することと、IPFSネットワーク上にデジタル署名を暗号化して蓄積することの違いを強調しています。「デジタル署名は重要ではあるが、誰もが参加でき、誰もがダウンロードすることのできる、幅広く分散された公開型ブロックチェーンへの完全なフルテキストのアーカイブがなければ、作業は依然として脆弱なものとなってしまう」と彼女は説明し、「しかし、私たちがやっているように、いったんフルテキストを実際のブロックチェーンのアーカイブに書き込んでしまえば、それは消去することも改ざんすることもできなくなる」として、その意義を強調しています。

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