2018年1月に巨額の仮想通貨不正流出事件を起こしたコインチェックについて、金融庁が年内にも仮想通貨交換業者としての登録を認める方針であることが分かりました。こうした動きに対し、与党・自民党内からは反対の声が挙がっているようです。

580億円相当の仮想通貨が流出

仮想通貨取引所コインチェックでは2018年1月、何者かのハッキングにより仮想通貨NEM約580億円相当が不正流出する事件が発生しました。事件を受けて行われた金融庁の調査で、同社には顧客からの預かり資産である仮想通貨をハッキングの危険のあるホットウォレットに保管しているなど、管理運営面の落ち度が見つかり、金融庁は同社に対し、2度にわたり業務改善命令を出しています。

コインチェックは事件後、新規口座開設の受け付けや仮想通貨取引など業務の大半を中止していましたが、その後、4月にはネット証券大手のマネックスグループの傘下に入り、新経営陣の下で業務見直しを行ってきました。そして2018年10月30日には新規口座開設や一部仮想通貨購入・取引のサービス再開を発表しています。

新規登録承認は事件後まだなし

コインチェックは日本の仮想通貨取引所の中では大手の一角とされながら、ハッキング事件当時も現在も、仮想通貨交換業者としての登録を受けていません。

日本では2017年4月の改正資金決済法施行により、仮想通貨交換業を営むには金融庁への登録が必要となりましたが、同法施行以前から仮想通貨交換業を営んでいた業者に対しては、まだ登録承認を受けていなくても「みなし仮想通貨交換業者」として一定期間は事業の継続を認める経過措置が取られています。

コインチェックも事件当時から「みなし業者」として営業を行っていました。コインチェック事件後、金融庁の仮想通貨交換業登録に関する審査は厳格化しており、事件のあった2018年1月以降は、まだ1件も新規登録が認められていません。コインチェックも含め、登録審査中の事業者は200社以上に上っているとみられており、審査は長期化しています。

金融庁が登録承認へ

コインチェック社は、10月に業務再開を発表した際に、以下のようにリスク管理や顧客保護、コンプライアンス面などで十分な取り組みを実施してきたと報告しています。

  1. 新たな経営体制のもとでのリスク管理態勢の強化
    2018年4月16日付でマネックスグループ株式会社の傘下となり、同日付で代表取締役に着任した勝屋敏彦氏(兼マネックスグループ株式会社常務執行役)らの新経営陣により、監督と執行の分離を進め、新たな経営体制をスタートしている。十分な顧客保護態勢を整えるべく、組織・人員の増強も同時に行っており、新しい部門・部署の設置と同時に、社員数を2018年1月に比較して約2倍の250名程度まで増員した(2018年9月末時点)。
  2. ビジネス部門における取り組み
    顧客保護やAML/CFT(マネーロンダリング防止・テロ資金供与対策)の観点から、取り扱い仮想通貨選定基準の見直しを行い、2018年6月には取り扱いが不適切と判断した4通貨(REP・DASH・ZEC・XMR)を廃止したほか、新規取り扱い仮想通貨の技術的特徴などをリサーチし、リスク評価や選定をする専任部署を新設した。また、金融系システムセキュリティー対応、サイバー攻撃や情報漏えい等のサイバーセキュリティー対応に知見のある外部専門家の協力のもと、インターネットを通じた標的型攻撃による被害を避けるため、ネットワーク分離を強化するなどシステムの再構築を行い、全通貨に関するコールドウォレット化も完了した。
  3. リスク管理・コンプライアンス部門における取り組み
    全社のリスクを把握し、各部門のアクションプランを策定・モニタリングするリスク委員会を新設した。また、AML/CFT、疑わしい取引に対する監視強化のため、カスタマーサポート部門を人員・拠点ともに拡充し、口座開設時の本人確認厳格化や、重点管理対象顧客の基準を設けた。さらに、仮想通貨インサイダー取引に関する社内ルールを策定した。
  4. 内部管理・内部監査部門における取り組み
    業務推進や利益拡大といった業績面にとらわれず、法令等順守や適正な業務運営を確保するため、内部管理部門および内部監査部門の人員体制の増強・権限強化などの取り組みを行った。

コインチェックの登録承認に自民党内から異論

こうした取り組みを評価して、金融庁はコインチェックの仮想通貨交換業者としての登録申請について、審査の結果、同社の経営体制やセキュリティー対策などに改善がみられたとして、2018年中にも承認する見通しとなりました。

しかし、多数の業者が仮想通貨交換業登録を待っている状況の中で、巨額の不正流出事件を起こしたコインチェック社自身が事件後初の登録業者となることに対しては、与党・自民党内から異論が出ています。

自民党のフィンテック議連の秋元司幹事長は、TBSの報道で、「新規事業者は“年内は難しい”という中で、認めるという話が出てきたことは、いかがなものかと思わざるを得ない」と述べて、金融庁のコインチェックに対する登録承認方針に異を唱えています。
また、仮想通貨をはじめとする金融取引について議論する同党議員連盟の幹部は、コインチェック事件が仮想通貨全体の信用を失墜させる原因となったことを強調し、「一連の動きと金融庁の話は、世の中が納得する形なのか問わないといけない」と述べ、巨額の流出事件を起こしたコインチェックだけが登録される状況について苦言を呈しているとのことです。

コインチェックはまだ仮想通貨交換業者として承認されていない「みなし業者」でありながら、10月からは新規口座開設の受け付けを再開して顧客の拡大に乗り出しており、こうした立場をわきまえない同社の姿勢も、与党内からの反発を招く要因になっているとみられます。

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