東北・三陸地方の若手漁師らで構成する一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(本部・宮城県石巻市、阿部勝太代表理事)は、日本の漁業・水産業を革新的な産業に変えて未来に残すことを目的に、トークンの発行により事業資金を調達するイニシャル・コイン・オファリング(ICO)の検討に入ったことを発表しました。ブロックチェーン技術を使って、水産物の価値や漁業者の技能が適正に評価される新しいエコシステムを構築するとしています。

水産業の課題解決にブロックチェーン活用

フィッシャーマン・ジャパンは、三陸の若手漁師らを中心に2014年7月設立。漁業のイメージを「カッコよくて、稼げて、革新的な『新3K』」に変え、2024年までに、三陸に多様な能力をもつ新しい職種「フィッシャーマン」を1000人増やすことや、水産物の新しい流通プラットフォームを構築して100億円規模の新産業を創出することを目標に掲げています。現在、漁業体験や後継者育成の場を提供する「TRITON PROJECT」をはじめ、水産関係の求人サイト「FISHERMAN JOB」、情報発信の場としての直営飲食店などの事業を行っています。

ICOの計画に至った背景として、同団体は、かつて世界一と呼ばれた日本の水産業が現在多くの課題を抱えている点を指摘しています。

1984年のピーク時に1282万トンだった日本の漁業生産量は、ここ30年で半分以下の500万トンを下回り、自給率も低下、漁師や水産加工会社の状況も下降の一途をたどっています。一方、世界では、漁業生産量は30年で約2倍になり、漁業・水産業は成長産業となっています。資源管理により、一度枯渇しかけた水産資源を増やし、漁業・水産業を復活させた国もあれば、流通改革により世界中に高品質な水産物を輸出する国も増えています。

同団体は、日本の漁業・水産業を再び輝く産業にし、未来につなげるためには、生産者である漁師、消費者、それをつなぐ小売・飲食店がすべてが一丸となって課題に向き合い、海の資源管理や人材育成、流通の仕組みの見直しなどを行っていかなければならないと説明。これらを成し遂げるため、ブロックチェーン上でトークンを発行し、その対価として投資家から仮想通貨を得る資金調達手法であるICOの仕組みを活用し、水産物流通の新しい経済圏(エコシステム)の創造を目指していくとしています。

また、現状の日本の水産物流通は、需給による相場変動や法定通貨による為替に左右され、必ずしも水産物の絶対的価値や海への配慮、漁師の匠の技にはひも付いていないと指摘。仮想通貨を活用して作り出す新しいエコシステムが、生産者や水産業者、小売・飲食店、そして消費者が、適正な価値と価格に基づいて取引を行うことができる流通の形であり、消費者と共に創りあげる水産業の新しい「ソーシャルコミュニティ-」になると強調しています。

漁業者育成や流通プラットフォーム構築

フィッシャーマン・ジャパンは、ICOの実施により、ブロックチェーン技術を使って、以下のような3つの事業を推進していく計画です。

  1. 海の担い手育成事業
    フィッシャーマン・ジャパンが宮城県石巻市を中心に実績をつくりあげてきた「水産業の未来をつくるための担い手創出事業(TRITON PROJECT)」を加速させます。同時に消費者がトークンを利用して、担い手や生産者や水産事業者を応援できる仕組みを創ります。具体的には、親方漁師と漁師希望者のマッチングや、新規就業者の育成プログラム、「海の経営塾」、持続可能な漁業のための調査・研究や資源管理活動を行います。
  2. 消費者に「伝える」メディアとしての飲食事業
    海の課題やそれに立ち向かう人たちのストーリーを伝えるメディアとして、飲食店を展開し、漁師と消費者の橋渡し役となる料理人の育成を行います。ICOで発行するトークンをこの飲食店での決済などに使えるようにすることも検討しています。
  3. 持続可能な水産業のための流通プラットフォーム事業
    持続可能な水産業を実現するため、テクノロジーを駆使し、資源管理と適正な価値と価格に基づいた流通、消費が行われるプラットフォームを構築します。具体的には、オンラインマーケットや、人工知能(AI)による品質評価システム、ブロックチェーン技術によるトレーサビリティーシステム(生産・流通経路の追跡システム)を構築していきます。

地方創生型ICOとしても推進

フィッシャーマン・ジャパンのICOプロジェクトは、単に日本の水産業刷新のためのプロジェクトとしてだけでなく、一般財団法人日本地方創生ICO支援機構(福岡県飯塚市)などとも連携して、東日本大震災からの復興や東北・三陸の地方創生を目指す「地方創生型ICO」としても進められる予定です。

なお、日本国内でのICOについては、法整備が確定した後で、それに従って実施するとしています。

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