コロンビアの麻薬密売組織「メデジン・カルテル」の首領パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)=1993年殺害=の実兄が、米ドルと連動する仮想通貨「エスコバル(ESCOBAR)」を発行、2019年1月9日からプレセールを行っています。米国のトランプ政権を打倒するための資金調達が目的とのことです。

「トランプ弾劾基金」の資金調達でICO

エスコバル」はERC-20規格に準拠したイーサリアムベースの仮想通貨で、米ドルにペッグしたステーブルコインになるとのことです。

このプロジェクトの設立者はコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの兄のロベルト・エスコバル(Roberto Escobar)氏です。同氏は、国際的なクラウドファンディングサイト「ゴーファンドミー(GoFundMe)」での資金調達を阻止された後で、新たに独自のウェブサイト(escobartrump.org)を開設しました。

このサイトでは、仮想通貨エスコバルの発行に至った経緯について、「このトークンは『トランプ弾劾基金(the Impeach Trump Fund)』のための資金調達のツールとして生まれることになった」と説明。最初はこの基金のキャンペーンを「ゴーファンドミー」で行ったものの、運営側に妨害されたため、検閲や規制のないイニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)に切り替えたとしています。

同プロジェクトでは2019年1月9日から仮想通貨エスコバル2億枚のプレセールを実施しています。プレセールは5月10日まで行われる予定です。

ホワイトペーパーや公式サイトによると、エスコバル氏は10億エスコバルを発行したいとしており、2019年6月までに、この仮想通貨エスコバルはステーブルコインとして、中米ベリーズにある企業を通じて米ドルと交換可能になるとのことです。

「ゴーファンドミー」で1000万ドルの資金調達

エスコバル社(Escobar Inc.)最高経営責任者(CEO)のオロフ・グスタフソン(Olof Gustafsson)氏がザ・ネクスト・ウェブ(The Next Web)に語ったところによると、当初は「ゴーファンドミー」での「さよならトランプ(ByeByeTrump)」と題したキャンペーンを通じて5000万ドルの資金を調達する計画でした。しかし、このキャンペーンを通じた資金調達額が開始からちょうど10時間で1000万ドルに達した時点で、プラットフォーム運営側からキャンペーンをブロックされてしまったとのことです。

同氏は「それから24時間以内に、再び私たちがいかなる者からも検閲されることのないよう、ステーブルコインである仮想通貨『エスコバル』の発行計画を立ち上げた。私たちは、米トランプ政権またはトランプ大統領自身が私たちのキャンペーンを閉鎖させたと確信している」と語っています。

エスコバル社は、「ゴーファンドミー」で1000万ドルの資金が集まったことを示す証拠として、同プラットフォームのキャンペーンページのスクリーンショットを公開しています。

「メデジン・カルテル」とは

ロベルト・エスコバル氏は、自分が弟のパブロと並ぶコロンビアの麻薬密売組織「メデジン・カルテル」の創設者の一人で、会計責任者だったことを明かしています。

「メデジン・カルテル」は1980年代を中心に要人暗殺や爆破テロなどの犯罪行為を繰り返し、最盛期には世界のコカイン市場の8割を支配、特に米国向け麻薬密輸で年間数億ドルの収益を得ていたと見積もられています。首領のパブロ・エスコバルは自宅に私設動物園や飛行場、私設軍隊まで所有し、世界第7位の大富豪として米経済誌「フォーブズ」に取り上げられたこともあります。

1980年代後半にはメデジン・カルテルと米軍特殊部隊やコロンビア政府軍、対立組織カリ・カルテルとの抗争が激化。パブロ・エスコバルは1991年、身柄を米国に引き渡さないことを条件に、自らの逮捕についてコロンビア政府と合意し、専用の豪華設備を備えた刑務所に収監されましたが、92年7月に脱走。93年12月、潜伏先を治安部隊に急襲され、一斉射撃を受けて殺害されました。

パブロ・エスコバルは麻薬密輸や数々の凶悪犯罪で悪名高い一方、地元メデジンでは貧困層に対する慈善活動を行うなどして一定の支持を得ており、今でも一部では英雄視する向きもあります。「ゴーファンドミー」でのキャンペーン開始からわずか10時間で1000万ドルの資金を調達したことをみても、今でもこうした人気は根強いようです。

以前にも仮想通貨を発行

エスコバル社は以前に「ダイエットビットコイン(dietbitcoin)」と呼ばれる別の仮想通貨をリリースしましたが、この仮想通貨は失敗に終わったとみられています。

「ダイエットビットコイン」の販売用のウェブサイトは現在、グーグル社のインターネットブラウザー「グーグル・クローム」によって、「訪問者にとってセキュリティーリスクがある」と分類されています。

今回発行された仮想通貨「エスコバル」も投資対象としてはリスキーではあるものの、「メデジン・カルテル」の残党による反米活動を目的としたユニークなICOという点では世界から注目を集めそうです。

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